俺の夢が叶うまで
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小さいころの夢?
そうだなぁ・・・
『女の子になること』、かな??
中学生というのは子供だ。
自分たちはもう大人の仲間入りをしているとか思っているのだろう。あえて言おう、ガキであると。
女の子になりたい、という考えは小さいころからあった。
その頃はなぜそう思うのかは分からなかったのだが、漠然とそう思っていた。
しかし、小学生のころはまだ夢だったそれが中学生になると悩みに変わった。
理由は単純明快。周りに馬鹿にされるからだ。
小学校高学年にもなると女々しいやつはからかいの対象になる。
だから、俺は中学生になってから隠し続けてきた。
別に生まれつき考え方が女だったわけではなく、俗に言う『オカマ』というものでもない。
隠すこと自体は簡単だったし、男として本来の生活するのも特に何の問題もなかった。
しかし、隠したからといってその考えが薄れることはなかった。
どんどん思いは膨らみ、ついには実行するまでに至ったのだ。
え?そもそもなんで女の子になりたいかって?
うーん・・・それは俺の家庭に少し関係があるんだ。
今はまだ、それを話すときじゃないかな。
高校デビュー、世間的にはそう言うのだろうか。
高校への入学を機に、これまでの人間関係を全て捨て去り新たな人生をスタートする。
文字通り俺は高校生になることをきっかけに、新たな人生をスタートさせることにした。
女として、という普通はありえないオプションが付属しているのだが。
もちろん、誰かに言われたわけじゃない。
強制されたわけでも、助言されたわけでもない。
自分がそうしたいからそうする、それだけだった。
もちろん、男が女として学校に入学するなんて無理な話だろう。
確かに俺は、男なのになぜか肌がきれいで毛が薄く、スタイルもよかった。
女装すればまず男だと思われないだろうという自負もしていた。
しかし、だからといってはいそうですかと女になることはできない。
はずだった。
高校入試の面接の日、俺はなにを思ったかそのことを面接官に話していた。
その面接官が校長だと知らずに。
面接が終わると正気に戻り、確実に落ちたと思い枕を濡らしたが、後日送られてきた検査結果は予想外の合格。
書類が入った封筒には、『女の子として、うちの学校へおいで。』という校長手書きのメッセージが添えられていた。
あのお爺さん確かに優しかったけど・・・解せぬ。
とりあえず、特例として認めてもらったのだ。
問題を起こさずに、静かに女の子として過ごすことにしよう。
これからの3年間が
誰にもバレることなく平和に、
女の子として生活することができますように。
俺はただただそれを願うのだった。