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煌星の聖剣

前回の加筆修正です

 カーン、カーン、カーン。

 金属を叩く甲高い音が響いている。

 炉の熱気と怒鳴り声が満ちている。


「ココがものづくり通りか」


 ボクはギルドから出て、ものづくり通りに来ていた。


「さて、コテツさんはどこにいるかな?」

「アンタ、今、コテツって言わなかったかい」


 ちょうどすれ違うトコロだった背の低い赤毛のオバサンに腕を掴まれた。


「え、あ、はい」


 少し混乱したがなんとかそう返した。


「アンタ、アイツに何の用があるんだい?」

「ギ、ギルドでオルドマンという方に話を聞いて探してました」

「オルドマン?ダレだいソイツは?」


 この人、ゼンゼン腕は離してくれないし、グイグイ来るな。


「昔、龍狩りって呼ばれていた人みたいですけど」

「アイツかい!フン、オルドマンなんてカッコつけてるつもりかい。前々から自分の名前を名乗らない気にくわないヤツだよ!まったく!」


 オルドマンさんは昔、彼女に何かしたのかな?

 かなりの嫌われようだけど。


「まあいい、アイツがコテツのことを教えるなんてねえ」


 そう言いながらボクを品定めするかのように眺めていた。


「そんなに気になるなら自分で来いよ」


 彼女はぼそりと呟いた。


「フン、アイツのことなんかどうでもいい。コテツのトコまで案内するよ。ついてきな」


 腕を離さないまま、返事もしていないボクを連れて行く。

 この人、力強いな。

 抵抗が出来ないず、そのまま細い路地に入り、右に左にと進んでいく。

 そして喧騒が遠くなり、1つの建物にたどり着いた。


「さて、ここがコテツの工房だよ」

「ありがとうございます」

「アタシはもう行くよ。コテツに会うと怒鳴ってしまいそうだからね」

「あ、はい、わかりました」

「ああ、それとコテツは寝てると思うから自由に炉も材料も使っちまいな」

「えっ?」

「フン!じゃあね」


 そう言うと彼女はボクの腕を離して来た道を帰って行った。


「・・・よろしく頼むよ」


 遠い喧騒の中に戻っていく彼女の背からそんな言葉が聞こえた気がした。

 目の前の建物を改めて見る。

 他の建物と同じような石積みの建物で特に気になるトコロは無い。

 まあ、いつまでも外にいるわけにもいかないし。

 ドアをノックする。

 ドアをノックする。

 ド、ア、を、ノ、ッ、ク、す、る。


「さて、どうしよう」


 少し、迷う。

 ここは現実でもゲーム。

 何度目かわからない自己暗示。


「しつれいします」


 RPGでは、民家侵入は当たり前。

 ノックしてさらには声がけまでしたんだから他のゲームキャラよりは親切でしょう。

 という謎の理論を振りかざし、入っていく。

 扉を開け少しすると小さな地鳴りが響いてきた。


「なんだろう?」


 地鳴りのするほうに廊下を歩いていく、半開きのドアを開けるとヒゲもじゃの赤ら顔の小さなオッサンが酒瓶を抱いて寝ていた。

 地面が揺れいるかのような錯覚を起こすほどの大いびきをして。


「この人がコテツさんかな?起きそうにもないな」


 さっきの女性にも言われたしオルドマンさんにも言われてるし、武器も欲しいし鍛治でもさせてもらおうかな。

 とりあえず鍛治場を探そう。

 コテツさんが寝てる部屋を離れ、少し探すと、軽くホコリの積もった鍛治場を発見した。

 そこには炉や金床、成形された金属や鎚、石炭のような燃料が置いてあった。


「よし、まずは火起こしかな」


 燃料に刺さっていたスコップを使って炉にある程度いれる。

 そして、右手を広げ炉に向ける。


「[フレア]」


 右手から火の玉が飛び、炉に火が灯った。

 ほの暗い部屋がほんのりと明るくなっていく。


「便利だな。魔法」


 さてと、どの金属を使うかな。


「[鑑定]」


<鉄のインゴット:成形した純度の高い鉄。加工に適している>

<銅のインゴット:成形した純度の高い銅。加工には技術が少し必要>

<銀のインゴット:成形した純度の高い銀。加工には技術が必要>


 やっぱり鉄かな?

 鈍く輝く灰色の長方形を手に掴む。

 ズシリとした重さを感じた。

 それと同時に今まで知らないはずの鍛治の知識が溢れ出る。

 いや、思い出したというほうが正しいような気がする。

 ふと意識が遠のく、体が勝手に動く。

 木製のバケツに右手を向けた。


「[ウォーター]」


 水の玉はバケツ目掛け飛んでいき、周りに僅かに水滴を跳ね中に収まった。

 鉄のインゴットをいつの間にか左手に持っていたヤットコ、大きなハサミのような物で挟み炉の中に入れる。

 灰色が徐々に赤熱していく。

 バチリと跳ねる火を見ながらタイミングを計る。

 ここだ!

 赤く染まった鉄を取り出し、右手の鎚を振りかぶり叩く。

 覚えていたのはそこまでだった。


「ふう」


 あふれた汗を拭う。

 いくつかの鉄のインゴットは無くなり、代わりにカットラス、メイス、ハンマーが出来上がっていた。

 僅かに湾曲した刃を持つ剣、カットラスを持ち上げ、火に掲げ眺める。

 刀身にきらりと光が走る。


「おう小僧、満足か」


 不意に聞こえてきた声にビクッと反応する。

 恐る恐る振り向くと先ほどまで寝ていたはずのコテツさんが立っていた。


「たく、夢中になって俺の居ることに気づかねえとはな」


 ガシガシと頭を掻きながら近づいてくる。


「フン、おおかたアンナの差し金だろうが。小僧、テメェは何でココにいる?」


 腕を組み、睨みつけるようにボクにそう言い放った。


「ギルドにいたオルドマンさん、龍狩りと呼ばれていた人から言われてきました」

「龍狩りだと!」


 組んでいた腕を外して目を丸くして驚いた。


「ハハ、そうか龍狩りか。わかった、わかったよ。アイツが吹っ切れたなら俺も吹っ切らんとな。アイツは元気だったか?」

「はい、元気でした」

「そうか」


 そう言うと彼は天井を少し見つめ、部屋の片隅に置いてあった椅子を持ってきて座った。


「少し俺の話を聞いてくれないか?」

「話ですか?」

「面白い話じゃねぇが、少し話したくなった」

「ボクで良ければ聞かせてください」


 彼はヒゲを梳くように撫で、一拍おいて話しを始めた。


「オレには夢がある。タースが使っていた煌星の聖剣を超える武器を造ることだ」

「煌星の聖剣ですか?」

「ああ、絶望を切り裂き、希望を輝かせる伝説の剣と言われている。まあ実在しないという話だがな」

「実在しない?」

「ああ、タースの秘宝は多く実在し証明されている。しかし、伝わっているタースの秘宝で発見されていないのは2つのみ。それが煌星の聖剣と願い星だ」


 彼はゆっくりとまぶたを閉じた。


「龍狩りと約束したのはそういうことだ。ヤツが願い星を見つけられれば煌星の聖剣もあるという可能性が高くなる。実在すればいずれはオレの武器と比較する事が出来る」

「そうすればアナタの武器が優れていると?」

「いや、わからん」

「わからない?」

「武器が強いだけでは意味がない。武器を担う者が悪ければ武器はその性能を使い切れない。だからオレは龍狩りという男に夢を託した」


 まぶたを開けコチラをまっすぐにこちらをみた。


「ある日、アイツは右足を失い戻ってきた。オレはソイツを見て最初に何と言ったと思う?」

「何と言ったのですか?」

「テメェ、そんなナリで俺の武器を担えのか、何勝手な事をしてんだってな。最低だろ?親友だって思ってたヤツに掛けた最初の言葉がそれだった。ヤツの申し訳無さそうな顔が今でも忘れられねぇ」


 両腕で顔を覆い俯いた。


「彼は言ってましたよ。アナタに発破をかけてほしいと」

「テメェの口からヤツの事が出てきた時にそうだろうと思ったさ。なあ、俺はまだ鍛治をしていいのか?親友すらも道具のように扱った俺がそんな事をしていいのか?」

「さあ、ボクにはわかりませんよ。決めるのはアナタでしょう?」


 さらに深く頭を下げた。


「けっ、何を俺は逃げようとしてんだ。テメェの鍛治を見てまた自分が打ちたくなって、そのいいわけを自分じゃねぇ誰かに求めて」


 勢いよく顔を上げ、バーンと両手で頬を叩いた。


「目ェ覚めた。俺はまた鍛治をやる。他のダレの為じゃなく自分のために」

「はい」

「あの日の自分が羨むような鍛冶屋になるさ」


 彼の目に轟々と燃える炎が見えた。


「さて小僧、テメェの名は?」

「リキオといいます」

「そうか、リキオ。今日からテメェは俺のライバルだ。テメェのために武器は打たねえ。だが、この工房は自由に使ってくれて構わない」

「え?」

「テメェはこれから経験を積めば鍛冶屋として十分やっていける。その武器を見ればわかる。やるなら目指せよ、1番を」


 豪快な笑いとともにそう告げられた。

 誰かに認められた。

 久しくなかったなあ、そんなの。

 ぼんやりと彼の笑顔を見る。

 その向こうに見える揺らめくボクの影は少し大きくなった気がした。

変更点

・グーリ森林の削除

・ゲーム時代の暗殺者ジョブ獲得イベント削除

・爆発を扱うプレイヤーとの邂逅を消去

・隠しエリアの消去

・アイテムの作成消去

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