龍狩りのオルドマン
前回の加筆修正です
階段を下りた先の扉を開ける。
かなり広く開けた空間に出た。
辺りを確認すると左手の壁には木の棒が立て掛けてあり、真ん中には少し傷ついた木の柱と間を開けて土の山が見えた。
そして、右手の壁は椅子に座ってうつらうつらと舟を漕ぐ白い髪のジイサンがいる。
まずは話しかけてみるか。
「すみません」
「 」
「すみません!」
「 は!寝取らん!ワシは寝とらんぞ!」
思いっきり寝てたと思うけど。
「うん?誰じゃオヌシ?」
ジイサンは長い白いヒゲを撫でながら開いてるかわからない細目でコチラを見てきた。
「今日、冒険者登録をしたリキオと言います」
「ほう、新人冒険者か。珍しいな」
品定めをするかのように頭を動かしてボクの体の上から下まで眺めている。
「あの、アナタは?」
「ホッ!すっかり忘れておった。年は取りたくないなあ。フムフム」
腕を組み、感心したように上下に頭を振った。
答えが出ない。
「結局、アナタは?」
「ホウ、そうそう忘れておった。昔は龍狩りと呼ばれておったが今はそうじゃな、オルドマンと呼ばれている。ここ南門支部訓練所の責任者じゃ」
「龍狩り?」
「昔、取った杵柄というやつじゃ。今はケガで冒険者を引退したしがないジジィじゃよ」
そう言って右足のズボンの裾を少し上げると足首が無く代わりに木の棒の生えたカップのような物がついていた。
「それは」
「ワシは、いやワシ以外にも冒険者を引退した者たちがギルドからの要請で各支部にある訓練所で新人たちに冒険者の基礎を教えておる。オヌシもそのために来たのじゃろう?」
顔上げ、ボクをまっすぐと見つめてきた。
「いえ、違います」
「え、そうなの?」
「少し試したいことがあったのでコチラに来ました」
「あ、そう。でも、せっかくだから聞いていかない?元冒険者の話、聞きたいよね?」
確かに元冒険者の話は聞きたい。
でも、このジイサンはめんどくさそう。
情報か、時間か。
「教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「え、聞きたい?いやあどうしようかな?ほらね、情報って大事じゃん?簡単に教えるのも何か違うじゃん?」
確信した。
めんどくさい。
とりあえず腰を低くしてお願いをしてみよう。
「最低限の事で良いので教えてもらえませんか?」
「フム、この態度でもめげずに聞いてくるとは。オヌシ、めんどくさいのぅ」
「はい?」
「普通さ?新人は東か西の支部に行くでしょ。わざわざ、南の支部にいるのは少しでも新人が来ない場所と思って選んだのに。働きたくなあい」
このジイサンは何なんだ?
「まあよい、少しはアドバイスをせんと怒られるからのぅ。オヌシ、職業は?」
「ば、万能職です」
ボクが職業を告げると、ヒゲを弄りながら明後日の方向を見ながら耳をホジホジしていたジイサンは手を止め、コチラを見てきた。
「気が変わった。あちらの棒を持って来い。少し動きを見てやろう」
雰囲気がガラリと変わった。
右手で椅子の脇に立て掛けてあった杖を手に取り、椅子から立ち上がって中央の木の柱と土の山の方へ歩いていった。
置いていかれたボクは言われたとおり木の棒を取りに行き後に続いた。
「フム、まずは説明しよう」
「はい」
「武器の訓練はコチラの柱で行う」
そう言うと杖でコツコツと柱を叩く。
「そして魔法の訓練はあちらの山で行う。まず自分の思うままに動いてみろ」
そう言うと歩いて少し離れたボクの後ろで止まった。
よくわからないけど、魔法から使ってみるか。
ボクは土の山の方に向け歩き、棒を杖に見立てて構える。
「[フレア]!」
構えた杖の先から炎の玉がでで土の山にぶつかり、少し表面を焦がした。
魔法は問題なく使えるみたいだ。
無詠唱とか出来ないかな?
フレア!
特に何事も起こらなかった。
無詠唱は無理か。
他の魔法は使えるか?
「フレイムアロー!」
初級魔法は使えるが、下級魔法は使えない?
レベルか?熟練度があるのか?
「なあ、オヌシは詠唱破棄を修めておるのか?」
「詠唱破棄ですか?」
「フム。魔法使いの知人から聞いた事がある。下級以上の魔法を使うには魔法名だけでなく詠唱が必要になる。詠唱破棄は魔法の仕組みを理解し構築が出来るようになり使える技能だそうじゃ」
「詠唱」
「フレイムアローは火属性の下級魔法じゃったはず。それを詠唱せずに発動させようとしておったからそうかと思ったが、様子をみると違うようじゃな」
「今のボクに何が出来るかを確認するために使おうとしました。アナタは詠唱について御存知でしょうか?」
白いヒゲを撫でながら上を見ている。
ゆっくりと視線をボクに戻した。
「ワシは魔法は使えんから良くは知らんが、いわく詠唱とは魔法との対話で出てくると聞いたことがあるのぅ。試してみたらどうだ」
魔法と対話ってどうするんだ。
良くわからないけどせっかく教えてもらえたのだから、挑戦をしてみよう。
目を閉じてみる。
自分の体内を探すようにイメージをする。
なにか、なにか、無いか。
探す、探す、探す。
何かを見つけた。
言葉が浮かんでくる。
「[決して砕けぬ、我が爪牙。アンブレイク]」
手に持った棒に薄い緑の光が纏った。
アンブレイク、支援術の1つで武器の損耗を一定時間抑える効果がある魔法。
フレイムアローではなかったが要点は分かったので魔法の確認は終了する。
次は武器の使い方だ。
木の柱へ向かう。
棒を正眼に構える。
「ふう、はっ!」
短く息を吐き、右上から左下に斬るように柱を叩く。
バシッという心地よい音と手に僅かな痺れを感じた。
体は思うように動く。
スキルは?
再び正眼に構え直す。
「[スラッシュ]!」
先ほどと同じように右上から左下に斬るように柱を叩いた。
バンッという先ほどよりも力強く大きな音が響いた。
手に痺れは感じない。
再び正眼に構え直す。
「[スマッシュ]!」
繰り返し右上から左下に斬るように柱を叩いた。
ドンッという少し重い音と柱が僅かに揺れたように感じた。
「ふう」
浅く息を吐き、構えを解く。
予想通りだ。
コレなら南のフィールドでもやっていけるだろう。
「終わりか?」
「はい、確認したいことは出来たので」
「少し話をしないか?」
「はい」
「それでは向こうで話そう」
そう言うと最初に話をしていた場所へ歩いていった。
ボクも木の棒を元の場所に戻し、後を追った。
「座るか?」
「いえ、大丈夫です」
先ほどは勧めれなかった椅子を勧めれた。
ボクはこの後、武器や道具用意したかったからすぐ動けるように断った。
「フム、そうか」
納得して彼は椅子に腰を落とした。
「ワシには夢があった。その遥か昔、この地に落ちたとされる願い星に祈る夢が」
「願い星?」
「何でも願いを叶えてくれるという伝説の石じゃ。眉唾物じゃがワシにはそれに頼るほかはなかった」
「どんな夢なのですか」
「亡くなった家族を蘇らせたい。そんな良くある話じゃよ」
顔を俯かせて、何でもないかのように呟いた。
「オヌシに1つ頼み事をしたい」
「頼み事ですか?」
「家族を蘇らせたいという話ではない。ワシの協力者であったドワーフに発破をかけてほしい」
顔を上げ、まっすぐとボクを見る。
「それだけですか?願い星を持ってきてとかではなくて?」
「何でも願い叶える物をこのオイボレのために持ってきてくれなどと厚顔無恥な頼みなど出来ぬよ」
ハハ、と乾いた笑いを浮かべていた。
願い星か。
元の世界に戻るのに使えそうだ。
しかし、この人の家族は。
「悩むな、ワシは諦めた。自身のために願いを叶えよ」
「けど」
「ワシは考えたのじゃ。死者を生き返らせる事の意味を。分かってくれ」
「・・・わかりました」
「頼みたいドワーフのことだがワシがかつて約束を破ってしまった男じゃ」
「約束?」
「そう、願い星をあると証明するという約束を」
寂しげに笑いながらそう告げた。
「なぜそんな約束を?」
「酒の席の売り言葉に買い言葉。勢いというやつじゃ。だがそれが若かったワシらの大きな原動力だった。ドラゴンすら狩れるようになったワシは願い星に最も近い冒険者といわれていた」
「何があったのですか?」
「この右足を失う事件が起こった。そうしてワシは願い星を諦め、ヤツと別れた」
右足をポンポンと叩き言う。
「ヤツは今、酒に溺れ炉に火をくべず堕落した生活を送っていると聞く。ワシのせいじゃ」
「アナタのせい?」
「まあ、それは良い。ヤツは単純じゃ。オヌシが奴の前で鍛治をすればかつての熱量が戻ることだろう」
「なぜ、ボクが鍛治を出来ると思うのですか?」
「万能職、それはあらゆることの出来る職業。騙りかと思ったがオヌシは魔法使いや僧侶の術に剣士や戦士の技を使った。もう説明はいらんじゃろ」
なるほど、ココもゲームと同じで職業は基本的に1つなのだろう。
だからボクが複数の職業の術や技を使ったから確定したのか。
「ええ、わかりました」
「ありがとう。ソヤツの名はコテツという。ここより西のものづくり通りに工房を建てておる。よろしく頼む」
そう言い彼は白い頭を下げた。
「わかりました」
ボクははっきりとそう告げ歩き出した。
目的が定まらずとりあえずで歩いていた。
願い星というはっきりとした大きな目標でき、コテツさんに会うという近々の目的が決まりひとまず進んでいるという実感がわいてきた。
変更点
・買い物イベント削除
・グーリ森林の削除
・仮のゲームクリア目的を決定




