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冒険者ギルド『旅人の足音』

前回の加筆修正です

 目の前の噴水は冒険者の街タースの中央広場ににあるオブジェクトだ。

 そこから東西南北に大きな通りが伸び、フィールドに出る大門に続いているはず。

 振り返り道の先を見てみる。

 大通りの両脇には様々な露店が出ているが門は見えない。


「そんな小さな街じゃないから見えないか」


 視線を下げるとキレイな石畳が視界に入った。

 さて、ステータスはどうなっているのだろう。

 スキルは、魔法は、どうすれば使えるのだろう?

 試してみるか。


「メニュー、ステータス、能力表示、[鑑定]」


<石畳:道を整備してある石>


 まずは、呟いてみた。

 喋った事で鑑定のみが反応したみたいだ。

 しかし、自分のステータスは確認できない。

 視線を上げ、道の先を見ようとする。


「鑑定が発動できるということは、[鷹の目]」


 視界がまるで望遠鏡を覗いたかのような感覚になり、赤い門が目に入った。


「やはり、使えた。特に疲労も無いけど今後のためにスキルの使用がどんな影響を出すかは確認していかないといけないかな?」


 さて赤い門か、ゲームと同じなら南門。

 フィールドの難易度からいうと安全を取れば東か西。

 ここはゲームであり現実。

 大きく呼吸をする。

 空を見上げる。

 肺に入る空気が、目を刺す光が、改めてそう認識させる。

 生き残るためには堅実に行かなければならないが。


「冒険者ギルドで試してみてだけどボクの予想通りだと南でも十分やっていけるはず」


 ここは現実でありゲーム。

 ゲームであるなら効率良くクリアを目指す。

 それがボクのゲームスタイルだ。

 止まっていた足を動かす。

 仮に決めた南の冒険者ギルドを目指して。

 キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていく。


「多少、ゲームの時と差異はあるけど大きな変更は無さそうだな。あとは画面越しと実際の違いか、食べ物の匂いとか住んでる人たちの活気とか感じられる」


 通り過ぎていく露店ではオジサンが何かの肉の塊を焼いていたり、オバサンが果物や野菜を売っている。

 周りの建物は石を積み上げて建てたようで中世ってこんな感じなのかなという印象を抱いた。

 後で露店を見て回るのも良さそうだな。

 しばらく歩いていると左手に今まで見えていた建物に比べてひときわ大きな建物が見えてきた。


「実際に見ると雰囲気あるな」


 羽の生えた靴の看板とジョッキの看板。

 冒険者ギルドと酒場が併設された建物。

 木製のドアを人々が行き交って入っていく。


「さてと僕も行くか」


 人の流れに合わせてドアをくぐる。

 酒とタバコの臭い。

 笑い声と怒鳴り声。

 不思議と汗も手の震えも無かった。

 入って右側が酒場のスペース、左側がギルドのスペースみたいだ。

 ギルドスペースの奥の方にはカウンターがあり、3名ほど席に着いていて剣を腰に差した人や斧を背負った人の対応をしている。

 とりあえず僕もそこに向かう。

 列の一番、短いトコロに並ぶ。


「お待たせいたしました。冒険者ギルド『旅人の足音』南門支部へようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 前の人が終わり、僕の番になると茶色いショートカットの若い女性が髪を少し垂らし書類に書き物をしながら話かけてきた。


「あの、冒険者の登録をしたいのですが」

「冒険者登録ですね。少々」


 そこで書き物をしていた手を止め、顔を上げた彼女は言葉とソバカスのある可愛らしい顔を笑顔のまま止め固まった。


「あの、すいません。冒険者の登録したいのですが」


 固まってしまった彼女に再度、話しかける。


「は、はい!すみません!!冒険者登録ですね!」

「はい」


 彼女はそう言うと慌てて机の下から白紙のカードを取り出した。


「こ、こちらが冒険者登録用のカードとなります。ナイフか針のような物はお持ちでしょうか?」

「いえ、持っていません」

「わかりました」


 再び机の下を探りナイフを取り出した。


「こちらのナイフを使っていただいて構いませんのでカードにアナタの血を少し付けてください」

「わかりました。お借りします」


 机のナイフを取り、左手の親指を少し傷つけカードに押し付ける。

 少し待って指をカードの上から離すと赤い指紋がゆっくりと消えていき、黒い文字が浮かび上がってきた。


「これにて冒険者登録は完了いたしました。冒険者カードのご説明は必要でしょうか?」

「お願いします」


 ナイフの柄を彼女に向け返却し、頭を下げてお願いをする。

 彼女はナイフを受け取り、机の上に置いて告げる。


「かしこまりました。まずはカードをお持ちになってご確認ください」


 そう言われたのでカードを手に取り眺める。


「カードの利用法の1つ目は身分証明です。冒険者カードには持ち主本人の氏名、職業が記載されています。アナタのカードには何と書いてありますか?」

「氏名の欄にリキオ、職業の欄に万能職と書いてあります」


 問われたので書いてあることをそのまま読み上げる。


「アナタはこのギルドに来てから名乗りましたか?」

「そういえば、名乗って無いです」


 言われてはたと気づく。

 何でこのカードにボクの名前が書いてあるんだ。

 この世界に来てから自分の名前を喋った事はないのに。


「冒険者カードは偉大なる英雄タース様が、ダンジョンで発見された秘宝より産み出されたとされています。その機能は様々ありますが、その1つが血の契約です」

「血の契約?」

「冒険者カードを利用するには所有者である登録が必要です。それが先ほど血をカードに付けていただいたものです。それを我々は血の契約と名付けました」

「はい」

「この契約により所有者の本名と職業がカードに刻まれます。名は根底、職業は生き方を示すため常に共にある血によって刻まれるのではと考えられています」

「はあ」

「まあ、嘘がつけない身分証明とだけ覚えておいてもらえれば大丈夫です」

「はい」


 とにかく細かい理論はわからないけど身分証として使えるみたいだ。

 元でいうと学生証とか免許証と同じような物だろう。


「基本機能はあと2つ」

「はい」

「おサイフとカバンとして使えます」

「え?」

「おサイフとしての機能は左下を素早く2回、指で叩いてみてください」


 トントンとカードの左下を叩くと、文字がかわり2Sと出てきた。


「多分、2Sと出てきた思います」

「はい」

「2シルバーという意味です。その少し下に四角い空欄があると思います。叩いてみてください」


 2Sと書かれた下には確かに四角い長方形の空欄があったので叩いてみた。

 G、S、Cと出てきた。


「G、S、Cと出てきたと思います。Cを選んで続けて10と打ち込んで下さい」

「はい」


 とりあえず言われたとおりCを選ぶと、電卓のような数値を打ち込めるようになったので10と打ち込み、右下に決定とあったので触る。

 わずかにカードが光り、銅色の硬貨が現れ机に落ち、チャリンと小気味よい音を鳴らした。

 カードの表示は1S90Cに変わった。


「このようにお金を取り出すことができます。またお店に専用の台があればその画面にして台に触れれば自動的にお支払いが出来ます」

「へえ」

「また、硬貨をカードに押し付けると戻せます」


 彼女はそういうと机に落ちた硬貨を僕のカードに押し付けた。

 するとカードはまた光り銅色の硬貨は消え、カードの表示は2Sに戻った。


「お金を出すのはカード所有者しか出来ませんがお金を入れるのは他の方でも出来ます」

「わかりました」

「続いてはカバンの機能です。右下を2回、叩いてみてください」

「はい」


 トントンとカードの右下を叩くと四角い正方形の空欄が5つある絵に切り替わった。


「その状態でカードでこのナイフに触れて見てください」

「はい」


 ナイフに触れるとカードはわずかに光りナイフは消え四角い空欄の1つにナイフの絵が描かれた。


「ナイフの絵が描かれたと思います。そちらを2度叩いてみてください」


 トントンとナイフの絵を叩くとカードはわずかに光り、ナイフがカードから出て机の飢えにカランカランと音を立て落ちた。


「こちらがカバンの機能となります。その他、カードの機能は功績により拡張、追加されていきますが、更新はギルド受付でないと出来ませんので増えるたびにご説明します」

「わかりました」

「以上で冒険者カードの説明は終了です。何か質問などはありますか?」

「いえ、大丈夫です」

「クエストの確認やパーティーを組むのなら右手の掲示板をご確認ください」


 彼女がそういって手で示した方には鎧を着た人やローブを纏った人が品定めをするかのように木製の板を眺めていた。


「わかりました。訓練するところはありますか?」

「そちらは左手の階段を下った所が訓練室となっております」

「ありがとうございました」

「いえ、またのご利用をお待ちしております」


 僕が頭を下げると彼女も頭を下げ、見送ってくれた。

 さて、これだけゲーム的な要素があるなら戦闘はどのようになるのか。

 階段は下っていくのに、気分は上っていくのを確かに感じた。

変更点

・ゲームマスター排除

・ステータス排除

・冒険者カード追加


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