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始まり

前回の加筆修正になります

 気がつくと前後上下左右が真っ白な空間に居た。


「ここは?」


 ポツリと呟いた言葉はどこまでも呑み込まれていくようだった。

 ふとその時、女性のような機械音声が聞こえてきた。


「日頃より弊社の製品を御遊戯していただきありがとうございます」


 姿は見えないが声はどこからともなく聞こえてくる。


「お客様におかれましては様々な疑問、質問があるとは思いますが少しの間、お耳を傾けていただくようにお願いいたします」


 先まで部屋に居たよな?ここは?あなたはダレ?

 様々な疑問や質問が浮かんだがグッと呑み込んだ。

 その方が話が早く進みそうだから。


「まずはこの空間の説明をさせていただきます。こちらはメイキングルーム。正式サービスとなった弊社製品をプレイするお客様自身を再設定していただく場となっております」


 女性の声がそう告げると僕の目の前に鏡が現れた。


「お客様の前に現れた鏡はお姿を確認していただく為の物です。現在は自身の姿に変化は生じていないと思いますが、ご確認をお願いします」


 確かに鏡には顔中に吹き出物が出ている肥え太った醜い丸い男が映っていた。


「さてここからお客様各位には容姿を含め自身の再設定を行っていただきたいのですが、その前に1つ注意事項がございます」


 少し間を開けて声が続く。


「正式サービスの仕様上、利用出来るアカウントは1つとなります。アカウントが1つのお客様はその情報を元に再設定を行っていただきますが、複数アカウントをお持ちのお客様は1つ選択をしていただきます」


 鏡の中の自分が固まった。


「鏡を壊し、新たな自分を造り上げるか、鏡の中の自分と共に歩むか。抽象的な表現で申し訳ございませんが選択の説明は以上です」


 醜い男がいる。

 幼い頃から虐げられ、拒絶され、否定された男だ。

 変わりたいと思ったこともある。

 変わらなきゃと思ったこともある。

 強く握りしめた拳が震える。

 ただ鏡を壊す。

 たったそれだけでその男は変われる。

 誰かの叫びが聞こえる。

 いつか聞いた否定の、拒絶の、嫌悪の叫び。

 いつまでも体の中から響いてくる叫び。

 もう決まっていた何を選ぶかは。

 固く握りしめた拳を鏡に向ける。

 ゆっくりと鏡に近づけていく。


「一緒に行こう」


 拳を開いて鏡の自分と握手を交わした。

 もう答えはあの日に決まっていた。

 例え何があろうとボクはボクを裏切らないと。

 鏡は消えた。


「再設定が完了いたしました。正式サービス移行に伴っての変更点をお伝えいたします。ご利用出来るアカウントは1つ。ゲーム世界の再構築をいたしましたので正式サービス以前とイベント等が変更になっております」


 女性の声が遠のいていく。


「そして大きな変更点になりますが正式サービスからゲームではなく現実になります。それではゲームを開始いたします」


 遙か遠くから声が聞こえる。

 白い空間も遠のいていく。

 気がつくと目の前には噴水。

 周りからは先ほどまで聞こえなかった街のざわめき。

 ふと視線を上に向ける。

 突き抜けるような青い空がそこにあった。


「いつだったかな青い空を見たのは」


 ぼそりと呟く。

 現実でもゲームであるならボクは上手く生きれるかもしれない。

 久しぶりのおだやかな風の中でリアルを感じた。


 冒険の街、タース。

 リキオの物語はここから始まる。

前回からの変更点

・ゲームの始め方の変更

・次話と結合

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