リイラ初めてのお買い物の巻 4
東通りまで少し遠いんだけど、レオンとリイラは手を繋いで行ったのね。
リイラのお家は街のほぼ真ん中で便利だから、引っ越すのが惜しいんだって。
「今日はぼくはリイラの騎士なのだ。姫君を守るのは騎士の務めなのだからとても名誉な事なのだ」
『へぇ~騎士さんも大変だねぇ』
おとうに怒られるから、皇子様って呼んでいたけど。今日はレオンでいいんだって、リイラはそっちの方が呼びやすいからいいんだけどね。
「ふむ、市井というのは色々な人が居るのだな。あれは何をしているのだろう、おぉ花を売っているのか。皆、庭で花を育てていないのだろうか、むっあれは・・・」
レオンがキョロキョロして一人で喋っていたけど、歩いてたのは馬車道だったから通った車輪の後がへっこんでいるからデコボコで、すごく注意して歩かないと・・・。
バタッ!!
あぁ、レオンがつまずいてこけちゃったよ。
『大丈夫? 東通りまでもうちょっとだよ。がんばっていこ? 』
じっとしていたら、馬車にひかれちゃうからね。さっさと端っこいかないと危ないのよ。
☆ ☆
『あーこちらシオーネ、若干一人こけました~。あ、ら大変。アルファーが走っていっちゃったわ』
『だめじゃん!! 誰か止めて!! ここで助けたらおしまいじゃないの!!私いくわ 』
『僕の方が近い、もうすぐ追いつく!!』
『アルファー落ち着けって、こけたのは皇子で大きな怪我してないから!!』
『早く道から退けないと敷かれてしまう!!』
『アルファー止めたよ!!アルファーったら大丈夫だから!! ああっもう日傘邪魔!!』
☆ ☆
レオンがちょっとだけ膝小僧擦りむいた。これくらいならフーフーしとけば大丈夫よー。
二人で道の脇でフーフーしていたら、遠くで何かザワザワしてきたよ。
大人が一杯叫びながらそっちに走って行ったの。
危なそうだから近づいちゃだめなのよ。
「どこかのご令嬢と町娘が貴族の子弟を巡って痴話げんかしているらしいぞ・・・」
「女二人と男一人の取っ組み合いの喧嘩らしい」
「いや貴族が二股掛けていたらしいぞ。ご令嬢がすげぇ美人だ、お、憲兵が来て止めたぞ。さすが帝国の憲兵は仕事はえぇなぁ」
レオンが立ち上がって見に行こうとしたけど、リイラちゃんと止めたよ。
こういうのは頭突っ込んじゃだめなのよ。
おとうがトラブル回避のヒケツは何も聞かなかった事だって。
大人が一杯いるからリイラ達が行ってもお邪魔なだけなのよ。
「市井というのは、人が多くて犯罪も多いのだな。憲兵達もしっかり仕事をしているようだ、うむ」
レオンが何だか偉そうな事を言っているけど、ちょっと涙目だよ。
でも何とか元気になったから、リイラが手を繋いで歩いてレオンと一緒にまずパン屋さんに入ったの。
「おや、ラギさんのところのおじょうちゃんだね。今日はカレシと一緒なんだ、ウヒヒ・・・」
パン屋のおじさんはプックリ太っちょだけどとてもやさしいよ、いつもオマケにアメをくれるんだ。
リイラはおとうが書いてくれたメモと、銅貨を一枚渡したの。
これで多分足りるはず。おじさんは、おとうの書いたメモを読んでうなずいて、ちょうど焼きたてだからと二人用のパンを包んでくれたの。
「今日は特別サービスだよ、カレシとじょうちゃんで好きなパン一つずつ選んでいいよ」
なんと!!じゃあね、じゃあね真ん中に甘いクリームが入ったこれっこれっ。
一般の人に念話はしてはいけないから、リイラ、クリームパンを何度も指差したらおじさんが一つ用のパンの包みに入れてくれた。
レオンも同じのにしたよ。これホッペが落ちるほどおいしいの。
「ご主人殿、感謝する」
リイラの代わりにレオンがお礼言ってくれてほっとしたよ。
レオンってちょっとカッコいいね。
お店の外に出たら、買い物カゴを持ったお姉さんが五人も集まってお話してたよ。
レオンがびっくりしていたけど、こんなのでびっくりしちゃいけないの。近所のおばさんがよくやってる
<じょせいのおしゃべりはきちょうなじょうほうげん>なのよ、よくわからないけど。
「もう、過保護なんだから・・・」
『どうしたの? 次はお野菜とお肉買うから市場に行くよ。人一杯だから大変だけど色々な物が売ってて面白いよ』
「そうか、それは楽しみだ」
リイラとレオンはまた手をつないでブンブン振りながら市場に向かったのよ。
☆ ☆
はあっはあっはあっ
とある商家の屋根の上。息の荒い4人の竜がいた・・・。
『アルファーのばかばかばか!!!次やったら竜でアルファーだけ上空偵察ね!!』
『すまん・・・・つい』
「いや、気持ちは分かる。気持ちは分かるがな・・・」
『あぁぁ、日傘下に置いてきちゃったよ、あれプリシラのじゃなかったっけ?』
『おーい、シオーネ君だよー。聞こえてるー?二人とも今パン屋さん出たよー』
『ほら、みんな元の位置に戻って!!』
「俺たち本当に護衛できてんのか?・・・」