リイラ初めてのお買い物の巻 2
「なぁリンシェルン、別に俺と二人だけでも良かったんじゃないのか・・・護衛」
『何を言っているのか、リイラは竜の期待の星、希望の姫君だぞ。護衛が多いに越したことは無い』
「だからと言って何で、竜が総出なんだい。それも何でこんな変装しなくちゃならないのか」
眼下にウチが見える、とある三階建ての商家の屋根の上。
五体の竜が集結している。
リンシェルンは町の一般的な娘。アルファーも中級貴族っぽいいでたち。
まぁこの二人はいい・・・。
『ねぇ!、私男の子に見える?見える? こういう格好してみたかったのよね。美少年ってやつよね』
シオーネは男の子の服を着て、後ろに一つ髪をくくって肌の色も少し浅黒くしている。男の子に見えなくも無い。
俺はと言うと、リンシェルンが憲兵の制服を借りてきてそれを着せられている。
隊長とかに遭遇したら、そのまま憲兵隊に入れられそうで怖いんだが今日だけと話が付いているそうで、俺は憲兵隊の巡回に紛れたりする事になった・・・。別に屋根の上から様子伺うのでいいのに・・・。そしてリオンは・・・。
『・・・君達、どうしてさっきから僕と目を合わせてくれないんだい?それより何故僕だけ、じょ・・』
『さぁ、手元の紙を見て! 自分の受け持つポイントの確認。あと助っ人も準備したからね、それとラギ頼んでいた物できてる?』
「あ・・・あぁ・・・これ」
俺はリオンが背中の方で不穏なオーラを出しているのを、ヒシヒシと背中で感じながら五つの小さな紫水晶を出した。
「一日の使いきりの上、以前リンシェルンと試して見たら竜だけしか使えなかったしあまり実用的とは言えないんだが。これを持っているとかなり遠くまで念話の広域範囲が広がるそれも竜の間のみ、色々他の石で試してみたけれど、これが出来るのが紫水晶だけだったんだよ」
俺は一つずつ、皆に石を渡していった。リオンの顔だけはまともに見れない・・・。
『ラギは凄いな、最近はこういう事まで出来るようになって。姿の見えない遠くの竜までこれを持っていたら話ができるのだな』
アルファーが石を太陽に翳して、感心したように言った。
「余り遠くには無理だ、しつこい様だけど一日使い切りだからね、夕方にはヒビが入ったり砕けたりして使えなくなるよ」
『分かった』
アルファーは大事そうに紫水晶を懐に入れた。
『それとねぇ、ちょっと予定が狂っちゃって、皇子殿下が参加する事になっちゃったんだ。一回は断わったんだけどさぁ(´・ω・`)、竜園で打ち合わせしている時に話聞かれちゃって僕も行くって聞かなくて、ヘレナも息子には基本甘いからリイラの買い物に付き合うことになっちゃったよ。市井で買い物させた事が無いとか何とかで、竜が総出で護衛しているのならこれ以上安全な事は無いし、いい機会だからよろしく頼む。だって』
「親衛隊の人たちはどうしたんだ、陛下と皇子の身辺警護が仕事だろうが」
『何やら、彼女達も一般市民に紛れているらしいよ。もう何人か家の前に居るっぽい』
確かに家の前を見ると、見た事の無い女性が二人買い物かごを下げて談笑していたが、親衛隊だったのか・・・。
『あぁ、パスティオの彼女がいるな・・・』
アルファーの知っている人だったようだ。
『さあ、それじゃ既定の位置について!! リイラから目を離さない事!!』
『はぁーーい!!(o´・∀・`o)面白そう!!』
『分かった』
『なんで僕、じょ・・・』
リオンが何か言い掛けたところで、ウチの玄関がパタリと開いた。