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僕の彼女

作者: 秋野 そら
掲載日:2026/11/06

窓から夕焼けの赤い光が部屋を照らす。

枕元のスマホが騒々しい音楽を奏で始める。

布団からのびた手が音楽を止め、再び布団の中に潜っていく。


数分後、再びスマホが音楽を奏でる。

再び、布団から手が伸びてきて音楽を止める。

しかし、こんどはスマホまでをも布団の中に引き込んでしまう。


布団からくぐもったうめき声が漏れる。

散らかった机の上にはエナジードリンクの缶が数本。


昨晩も、その前も、その前の晩も…

夜更かしが続く彼女を包む暖かい布団がもぞもぞとうごく。

5分。10分。20分。


このままでは遅刻してしまう。

まったく、彼女は何をしているんだ。

昨日だって外が明るくなるころまで起きて、ゲームをしているから起きるのがつらくなるんだ。

僕は何回ももう寝ようといったのに。


僕は彼女の寝ているベッドに乗り、声をかける

もう起きる時間だよ。

遅刻しちゃうよ。

早く起きて。


その声でやっと、布団の中の彼女は起き上がる。

緩慢な動作で起き上がった彼女の髪は四方八方に飛び跳ねていた。


おはよう、そら。


彼女が言う。

…やっぱり、彼女はすごくかわいい。

寝ぐせで飛び跳ねた髪でも、彼女が微笑むとまるで天使のようだ。


僕が彼女の膝の上に乗り甘えると、彼女はやさしく僕の頭をなでる。


そらは昔から甘えん坊さんだね

…って、こんなことしている時間はないんだった

仕事仕事!


膝の上に載っていた僕を布団の上において彼女は慌てたようにベッドから降りて鏡の前に行く。


まったく、毎日大変なことだ。

彼女は毎朝鏡の前でよくわからない道具をたくさん使っている。

不思議なことにそれが終わると彼女の四方八方に跳びはねた髪はまっすぐに伸びている。

それに、彼女から少しだけ甘い香りがするようになる。


僕なんて、起きたら顔を洗って終わりなのに…

やっぱり、人間というのは大変なものだ…


僕がそんなことを考えている間に今日も甘い香りをまとった彼女は、鼻歌を歌いながらクローゼットを開ける。

彼女のクローゼット中はカラフルだ。

濃いピンクに薄い黄色、水色、黒、白…

でも、僕はこの服があまり好きじゃない。

僕は彼女が返ってくるといつも着ているふわふわした服の方が好きだ。


僕がそんなことを思っていると彼女はクローゼットから黒いワンピースを取り出す。

ワンピースをだしたときふわりとお酒の匂いがした。


それじゃ、いってくるね。


ワンピースを着た彼女は上から暖かそうなコートを羽織り僕に言う。

彼女はコートを着るよりもズボンをはくべきだと僕は思う。

彼女も僕みたいにもこもこになれる服を持っているのになぜかいつも出掛ける時は着ない。


今日は、帰りが遅いけどいい子に待っているんだよ。


そういいながら、黒い靴を履く。

随分と走りずらそうな靴だ。

そんなんじゃジャンプもできないし、走ることさえできないんじゃないかと思う。


ご飯もお水も大丈夫だよね…


大丈夫。

さっき準備してたよ。

自分はご飯も食べてないのに。

いっつも僕の分だけ。


それじゃ、行ってきます。

大好きだよ、そら。


僕はさみしいから返事なんてしてあげない。

だって、本当は彼女とずっと一緒にいたいから。

でも、彼女はいつもいつも甘い香りを漂わせながらどこかへ出かけてしまう。


彼女は少しだけさみしそうな顔をすると玄関のドアから出ていく。


彼女がいなくなって静かになった家の中、彼女のベットに飛び乗り少しだけ考える。

今日はどこに行こうか。

どこにもいかずにもう一眠りしてしまおうか…

そんなことを考えながら僕は大きく伸びをして少し迷った後で少しだけ開いた窓から外に飛び出した。

そして、少し先を歩く彼女に向かっていってらっしゃいというために「にゃー」と大きく鳴いた。

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