魔法少女リリカの引退
川沿いの遊歩道は、私のお気に入りの散歩道だ。
木々がところどころに生え、心地よい木陰を作っている。
川には、水鳥などもいて、のどかな風景が広がっている。
ほかにも何人か散歩をしている人がいる。
私の少し前には、買い物袋を下げた女性が歩いていた。
急に叫び声がした。
見ると、川で人がおぼれている。
前を歩いていた女性が突然服を脱ぎ、魔法でパンツスーツ姿になると、空へ飛び立った。
そしておぼれた人を救い、救命措置をした後、病院の方にその人を運んで行った。
都市伝説だと思っていた『魔法少女リリカ』だ、きっと。
私は、呆然と彼女の姿を見送り、買い物袋と服を預かって、その場で帰りを待った。
やがてリリカは帰ってきた。
周囲を見回し、服と買い物袋を探していた。
私が、
「これをお探しでしょう?」
と声をかけると、
「えっ、預かってくれていたの?
ありがとう!もうないかと思ってた。
お気に入りのワンピースだったの。
わざわざ預かって、待っていてくれてありがとう!」
リリカは、満面の笑みで私に感謝の言葉を伝えた。
そのまま二人で連れだって、遊歩道を歩いていく。
「魔法少女リリカって、都市伝説かと思っていました。
本当にいたんですね。」
「もっと小さいときに女神さまから任命されたんだけどね。
そんなに大事件を解決したわけじゃないから、あまり知られていないの。」
「さっきの人命救助だって、立派な人助けです。
あなたがいなかったら、あの人は死んでいたかもしれない。」
「そう言ってくれて、嬉しいわ。
でもそろそろ引退したいの。
もうじき結婚するの。
家庭と魔法少女の両立って難しいでしょう?
もう魔法少女って年でもないし。」
「そうだ!良かったらあなたがやってみない?
ずっと荷物の番をして待っていてくれるくらい親切なんだもの。
きっと人助けに向いているわ。
お名前はなんていうの?」
「シオンです。でも......私には無理だと思います。」
「そんなことないわ。そんなに難しく考えないで。
女神さまに推薦しておくわねー!
それじゃあ、ここで。」
リリカは元気よく手を振りながら走り去っていった。
戸惑う私を残して。
「......冗談、だよね?」
その後、女神さまからの任命はまだない。
きっと女神さまも決めかねているんだろう。
史上初の『魔法少年シオン』を誕生させるかどうか。
パンツスーツだからいいけど、さすがに女装が趣味の私でもフリルたっぷりのミニスカートは遠慮したい。
変身後の衣装は、選ばせてもらえるんだろうか?




