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わたしのおばあちゃん

作者: 香里瞳子

はじめてこんなに長く書きました。おばあちゃんと孫についての話です。

私はおばあちゃんが嫌いだ。加齢臭がして、入れ歯、女は家事育児、男は仕事と古く昭和な考えをもっている。もちろん悪気をもって考えるわけではないのがなおイラつかせる。それが当然だとおもっている。今はもうそんな世の中ではないのに。私は今日このおばあちゃん家に年に一度の顔合わせにいく。古くて広い家で庭があり畑もある良い家だが、山を上がらないと来れないなんとも不便な場所だ。私がこの家にくるとおばあちゃんは「よく来たねー」と待っていましたとばかりにむかえいれる。早速手作りの干し柿を私に食べさせたいらしい。正直干し柿なんて古いもの食べたいとは感じない。でも食べないなんて選択を想像してないかのようなにこにこ顔で私を見る振る。だから私は食べざるおえない。たべてみるがやっぱり干し柿は干し柿だ。嫌いだと言いたいところをグッと堪えておばあちゃんに言う。「美味しい」「そうかいそうかいいっぱいお食べ」と嬉しそうに、一人では絶対に食べきれないであろう量を私に食べさせようとする。当然悪気などない。そして私が食べている間は、最近の「若い子」の話をする。なんで最近の男の子は肌があんなにもしろいのか焼けている方が男らしくてかっこいいだの、昔は今の子ほど気弱じゃない最近の子はすぐにくじけるなど。そんなことばかりを言う正直私からすると不快でしかない。だがこのおばあちゃんは親切にアドバイスをしているつもりなのだ。私はこういう偉そうな年上が嫌いだ。年に一度家に行くのも煩わしい。


一年が過ぎた頃、母からおばあちゃんの体調が良くないことを聞いた。わたしはおばあちゃんの体調を考える心の余裕なんてない。今は友達との関係の改善や、部活で顧問に怒られたことの改善、バイト探し、進路希望調査の記入などで、忙しいのだ。他人に構っている余裕なんてない。



そう思い、過ごしていると半年がたった時母から険しい余裕のない顔で「学校休みなさい」と言われた。なぜそんなことを言われたのか全く理解できないまま車に乗せられた。どこに行くの?と聞くと母は「病院」それ以上は聞いても答えてくれなかった。なぜこんなにも不機嫌なのか全く理解できない。少し悲しささえ感じながら「あーあ、今テスト3日前なのに」そんなことを考えていた。



病院につき誰の見舞いかもわからないまま扉をあける。するとそこにはくたびれた様子のおばあちゃんがいた。あまりの変わりようにびっくりしてしまった。いつもは少し派手めのよくわからないスカーフをみにつけていたり、きちんと黒染めされた短髪の髪に、歩きやすいズボン、なんかで身なりは整っていた。だが、今日みたおばあちゃんは薄紫のパジャマに、白髪の髪、あまりにも白い肌だ、少し髪が少なくなったようにもみえる。あまりにもみすぼらしい。そう思った。近づき話しかけようとすると、おばあちゃんは私を新しい看護師さんだと思ったらしい。「は??」と言う気持ちだ。半年会わないうちに垢抜けた私がわからなくなったのか、ふふふという心待ちになり、「私だよ」と軽く挑発したように言う。おばあちゃんは、よくわからないと言う顔をしてきまずそうにしていた。普段のおばあちゃんとは雰囲気が違うように感じた。いつもは優しく、私を愛しているという目一杯な気持ちを込めて見つめるのに、今日はなぜか、他人と話すような見つめ方だ。「えと、、私と言われてもねぇ、、おばちゃん、あなたのことは存じ上げないよ」と少し小馬鹿にしているように笑った。私はそれに腹を立てるどころか嫌な予感がよぎった。今まであまりこのおばあちゃんを気にしていなかったことに気づき、母の報告を思い出し、今までの報告をフラッシュバックさせ冷や汗をかいていると、おばあちゃんは私に「今日のお薬はいつごろですか??」と尋ねる。その瞬間自分のプライドがへし折られたような気がした。苦手だと思っていた人間に忘れられましたからだ。私は腹が立って病室を飛び出した。母は「そうだよね」と言わんばかりの表情をしていた。母は私が悲しんで出て行ったと思っているようだ。悔しい。

私は病院の廊下にあるソファーに腰を下ろした。あくびがでる。少しうるっとした。もう一度でる。もう少しうるっとした。一粒こぼれた。その時なんだか悲しくて泣いているみたいで恥ずかしくなると同時に、あの人のこと苦手なのになんでというむしゃくしゃした感情になった。そんな感情を無視してまたぽろり、ぽろり、そんなふうにしていると母が隣にそっと座って私の背中をさすった。「違うのに、違うのにそう言いたいのに母は私を慰めてくる」母は話し出す、「実はねあなたの名前はおばあちゃんがつけてくれたの、明るくて、いいお嫁さんになれる親切な優しい子にって、そうなってくれて嬉しいとあなたの誕生日や、進級するたび電話で喜びを伝えていたわよ。立派な子だって」それを聞いて私はそんな子じゃないし、私、人の悪口たくさんいうし、おばあちゃんのこと嫌いだし、ブスは嫌いだし、なんて考えながら、「やっぱりおばあちゃんは嫌いだ」と考えた。おばあちゃんのところに戻ると、やはり私のことは覚えていない。定期的に、クーラーのリモコンを探し出すので鬱陶しささえ感じていた。母がおばあちゃんとしばらく話しているところを聞いていた。近況や、おじいちゃんの話、保険の話、学費の話、そんな何度も聞いた話をしている。大人たちの話は退屈でしかたない。そう思いふて寝しようとすると、おばあちゃんが、「明里ちゃんはきてないのかい」そういった。その瞬間眠気が覚め、背筋が凍った。母は「部活が忙しいみたいなの」そういうと、おばあちゃんは「そうかい、よく頑張っているんだね。私も足が悪くなかったら、試合にも見に行きたいのだけど、もうこの足もすぐに痺れては痛めるからね。歳をとるというのはいかんわいね。どんな大会出てるんや」母は「この前はダブルスの大会なんて出て、4位を取ったからって症状までもらったのよ」と自慢げに話すとおばあちゃんは「流石私の孫だよ、明里ちゃんは責任感が強くって真面目さんだから練習もちゃんとこなすんだね部活もバイトも勉強も頑張ってこんなにも頑張っているのは明里ちゃんくらいじゃないか??ほんとうに自慢の孫だよ」そんなことを苦手なおばあちゃんが言っている。涙が止まらない私の知らない私まで見てくれている。私はこんなにもおばあちゃんのことが苦手なのにこの人はそんなことに気づくどころか、私を好いて私を褒める。愛を感じる他なかった。母がお医者さんに呼ばれ部屋を出た。私はおばあちゃんに話しかけたいというきもちでいっぱいになり、近くによると、おばあちゃんはまた「あなたは看護師さんじゃなくて、真由美のお友達なのかそうかだからずっといるんだねー看護師さんはお仕事大変だもんね」と言いだした。その瞬間プツンと何かが切れるような気がした。ショックだった。ものすごく。そんな私に勘づくどころか、自分の武勇伝、昭和の戦争について話し出す。「もういいそんな話、もう、、、」と言うと勘付き私を心配する。もちろん他人のお嬢さんに対してだ。そんなおばあちゃんを無視してひたする自分の言いたいことをいう「なんで私を覚えていないの??ちょっと小馬鹿にしていたから??お小遣い欲しい時だけ話積極的にきいていたから??そっけなくしたから??なんでよねぇなんで、、、」そういうとポカンとしたよくわからない表情で戸惑っていた。私はうまくいかない、思い通りにならないことに腹を立ておばあちゃんに今日渡すはずだった、誕生日プレゼントのカーキのよくわからないスカーフをゴミ箱に捨て、部屋を出て行き、その日はもう病室には顔を出さなかった。




おばあちゃんが退院したころ再び家に向かった。今回はしばらくこっちにいるそうだ。まったく乗り気ではなかったけど母が「もうお歳だからいつまでも会えるわけじゃないよ」なんて言うので会うしかなかった。おばあちゃんはいつもどおり家の前で迎え入れる準備をしていた。明里と母を迎えるためのだ。でもやっぱり思い出してはくれない。また私は他人扱いだ。今日はヘルパーさんらしい。私はなんとなくヘルパーさんになりきってみた。食事を作ってみたらきっと私の味で思い出す。そう思ったからだ。だが、そんな漫画みたいな展開はありえない。普通に食ってやがる。今日は天気がいいからコスモスがよく咲くわねーなんて言っている咲いているのは頭の花だろうに。


また違う日今日はなぜか、ハンバーグを作ろうとしていた。なぜなのかと聞くと、「きょうはまゆみちゃんの誕生日なのだからとびっきりのチーズハンバーグをつくるのよ、隠し味にうちのぷーちゃんの卵を入れるのよ。」なんて言っていた。プーちゃんは誰なのか。まゆみちゃんっていつのことを考えているのか。またこんなことだ。



 今日は少しおばあちゃんに話をきいてみた。 


 明里ちゃんに会いたい??

 「ええ最近は全然顔を出してくれないの寂しいわーでもきっと明里ちゃんも忙しいのよね、仕方ない仕方ない」



 今日は明里ちゃんが手紙をよこしたといって私が呼んであげた。とても嬉しそうなホクホク顔をしていた。


 今日はなんだか調子が悪そうだ。どこかで頭でもぶつけていたのか。母が心配し、車に乗せている時に母がどこが痛いか聞く。おばあちゃんはお尻が痛いといった。病院に電話し、症状なんかを伝え、電話をきった後、もう一度確認すると今度は腰が痛いなんていいだした。もうどこが痛いのかなんてわからない。もうだめだだめだ。母と私は同じ気持ちでいた。



検査入院を終え、帰っている途中今度は苦しそうに口をパクパクしだした。母が慌てた様子で、すぐまた病院へ向かった。しかし、おばあちゃんは病院へ着いた頃には動かなくなっていた。嫌な予感がした。


もうこの世にはいない。そう報告を受けた。私はもう少しは一緒にいられると思っていた。まだおばあちゃん家に泊まる期間もあと5日は残っていた。ボケただけで体には異常はない。「なんで、、、」その思い出いっぱいで唇がプルプルと動き出す。止められない。鼻も動き、嗚咽をし、なき叫ぶ。

私おばあちゃんのことこんなに好きだったんだ。

それを自覚するのはあまりにも遅すぎた。







また修正します

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