エピローグ 未来
「お花ちゃんはどこにもやらん!」
ヴァレリーの嘆きの声が屋敷中を駆け巡る。
「私はもうお花ちゃんじゃないって言ってるのに」
イリスが頬を膨らませる横で、リュドウィックがふふっと笑う。
八月の日差しの中、二人はコスト家の庭で噴水の縁に座っていた。いつか星座を探した夜と同じように。
オベロンが噴水の中に入って遊んでいる。背後から聞こえる水の音が心地良い。
「なんだかんだ新学期ぎりぎりになってしまったな」
今日はリュドウィックがイリスの両親に挨拶に来たのだ。一周目の人生で実現できなかった約束は、ようやく果たされた。
屋敷からまたヴァレリーの泣き声が聞こえて来た。イリスは苦笑して、リュドウィックとの話に戻る。
「しょうがないよ。王宝の儀式の準備があったんだから」
聖騎士の解散が決まった。十二王宝が再び王の物になるということで、イリスが儀式の提案をした。国民の前で、初代国王と十二公爵が交わした友好の証を再現するというものだ。
女王は異種族の力に頼らない。これからも女王はより強く、より良い王になることだろう。人のまま、全ての民を民と認め、等しく愛する立派な王に。
「私ね、進学しようと思うの。大学の事はこれから調べないといけないけど。もっともっと勉強して、官僚とか、侍女とか、女王様を支える仕事がしたいの」
イリスには未来がある。生き方を想像できる幸せがある。
前を向くイリスの左手に、リュドウィックが手を重ねた。
「公爵夫人になるのも忘れるなよ」
「うん!」
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
またどこかでお会いできる日まで。




