年越し
一年は四百日なのだが、毎年のことながら、冬に一年が終わるのはなぜだろう。
除夜の鐘が鳴る中、社にお参りに行くのは寒くて少しつらい。
「なぜ、毎年夜中に家族揃ってお参りに行くのか」
寒さで吐息が白く見える。家族が七人揃っていると、庭が狭く感じる。
普段生活リズムが合わず、あまり顔を合わせていない、弟妹二人の方をちらりと見る。
「早く行こうよ」
「社に着く前に新年になっちゃうー」
弟はすでに歩きはじめ、妹も私達をせかす。
両親もそれに続けて歩いて行った。
まだ成人前の二人は、寒さも気にならないのか、元気でいい事である。
「寝みぃー、梁矢と琴葉は元気だな」
「一年無事に過ごせた感謝を伝えに行くのは、大切な事だよぉ」
「そうだろうけど、俺は明日も仕事だから早く寝たい」
「そんな時間かかんないから、ファイト」
先に歩いて行ってしまった四人とは、打って変わって、二十三歳の弟と二十七歳の姉は、そんな会話をしながらゆっくり歩き出す。
普段はこんな夜中に出歩かないので、新鮮味を感じ、だんだん寒さも気にならなくなってきた。
「冬に年越しするのはなぜだろうか」
「やっぱり、始まりは草木が成長し、大地が豊かになっていく方がいいからじゃない?」
ーー春に自然が芽吹いて、夏にそれが成長し、秋に実る。最後に冬で休む。
そんな感じじゃないの?
そんなもんか。姉の話には妙な説得力がある。
「さく姉ちゃん達遅い!」
「姉ちゃん、はる兄、そう兄遅かったね」
社の前にある階段に着くと、妹と弟が文句を言ってきた。
同じ顔をしている二人だが、男女の性別の差か、多少違って見える。
ちなみに二人は双子である。赤ちゃんの頃は見分けるのも大変だった。
「まだ新年になってないからセーフだと思う」
「新年になってからじゃ、遅いから!」
「ごめんごめん」
妹が焦る気持ちも分かるので、素直に謝っておく。
社までの階段には、お参りに来た人の列があり、社の鐘を鳴らせるまで時間がかかりそうだった。
しばらく家族で並び、鐘の前に着くと、私達は鐘の横に設置してある機械を操作して、お賽銭を払い、鐘を鳴らした。
……今年はありがとうございました。
……新年もよろしくお願いします。
我が家の年越しは毎年こんな感じである。