不思議な出来事
雲ひとつない青空
まあ、雲の上を走行してるんだから、雲が無いのは当然なのだが。
「あっぶな、鳥とぶつかるとこだった」
年間 交通空路事故原因の1位は―鳥にぶつかったため―である。
「なんか最近、事故りそうになる事多いんだよな…」
太陽光を遮るための眼鏡をいじりながらつぶやく。それでも、会社に行くためには、運転しないといけない訳で。
この日は、これ以外特に危ない事も無く一日を終えた。
「それで、とうとう昨日、雲工事の作業現場に気付かず突っ込んじゃって、めっちゃ怒られたんだよ」
辛かった……。
夕飯を食べながら、弟はしょんぼりしている。
「雲工事って、突然交通空路に発生した雲を、霧散させる作業だよな?目立つ看板浮いてるはずだけど、気付かないもんなんだな」
道にでかでかと浮いてる看板を思い出しながら、あれに気付かない事もあるのかと、私は不思議に思う。
「あれかな、俺、お祓いとかしてもらった方がいいんかな」
「そこまで思い詰めてんの、そうくん」
「だって、短期間に事故りそうになったり、事故ったりしてんだよ、怖いじゃん」
「お守りでも買ったら?」
「春にい、なんか適当じゃねー?」
テレビを見ながら答えていたら、恨めしそうな顔をされた。
「うーん、それなら…」原因に心当たりはないのかーと
ーーガラガラーー
「ただいまぁー」
言おうとした時、姉が帰って来た。
「さくちゃんおかえりなさい、お疲れ様」
母が玄関に向かう。
「お母さん、ただいま。ありがとうー」
お疲れモードな姉の声が聞こえる。
「お夕飯出来てるからね」
「いつもありがとう!助かるー。準備したら降りる」
二階に行きながら話してるのか、声はどんどん遠ざかっていった。
母、姉、私、弟の4人で夕飯を食べる。……と言っても、姉以外は食べ終わっているが。
父は朝早いので、既に就寝中。
他の兄弟も同様である。
「原因に心当たりないの?」
唐揚げを嬉しそうに食べながら姉が弟に聞く。
ちなみに唐揚げは姉の好物である。
「うーん、わからん、強いて言えば、社の階段に空車をぶつけた事、とか?」
「それじゃん」
弟が考え込んで出した結論に、姉が即答する。
社とは、この国(大飛国)の至る所にある、不思議な存在の家の事である。
「自分の家の階段にぶつかられたら、そりゃ怒るよー」
無理ないよー
姉はあちゃー、やっちゃったねぇ、という感じで弟を見る。
「ほんの少しかすっただけだったんだよ、あれ?今ぶつかった?的なかんじで」
「かすっただけでも、ぶつかったのは間違いないんでしょ」
二人の会話を聞いて、まあそうだよなぁと私は思う。
「どこにも傷がなかったとしても、謝ってきた方がいいんじゃないか?」
居るかどうか分からない存在だとしても、そこに社があるという事は、社を建てた時には、その存在がそこに居た。という事だろうから。
「謝って、お祈りして、少し掃除もして来た」
ついでに、交通空路安全祈願のお守りも買ったよ!
と弟は私たち家族に報告した。
あの会話から二日後の、早い対応だった。
それからの日々、弟は空車で危険な目にはあっていないそうである。
不思議な出来事もあるものだ。