表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

うみのこ

作者: 十夢

うみにうまれたぼくは・・・。

 ゆんわ〜り

 ゆらゆら

 つめたいなあ


 「おや、ぼうや。おめざめかい?」



挿絵(By みてみん)




 「あなたはだあれ?ここはどこ?」

 「ここかい?ここは、うみだよ」

 「う〜み〜?」

 「うみってなあに?」

 「ぼうやがうまれたところだよ。」

 「ぼくがうまれたところ?このつめたいところ?」

 「ああ、そうさ。つめたくて、あたたかくて。ゆらゆら、ゆらゆら〜」

 「ゆらゆら、するね〜」

 「このゆらゆらは、なあに?」

 「これはね、なみだよ」

 「な〜み〜?なみってなあに?」

 「なみはね、みずがうごいているんだよ」

 「み〜ず〜?みずってなあに?」

 「みずはね、ぼうやをみたす、それだよ」

 「ぼくをみたす?これ?ゆらゆら〜。どぶん。どぶん」

 「そう、ぼうやをのせてどこまでも。みずがぼうやをおよがせてくれるよ」

 「わあ〜。ぼく、みずにのってスイスイ〜。スイスイ〜。きもちいいなあ〜」

 「そうそう。ぼうや、そのちょうし。」

 「わあ〜い。おみず。スイスイ〜」




 

 ぼうやは、うみになれると、もっともっとおよいでいきたくなった。


 「あかいおさかなさん、こんにちは」


挿絵(By みてみん) 



 「やあ、ぼうや。どこへいくの?」

 「もっと、とおいところ」

 「もっと、とおいところかい?それは、どこかな?もっと、あさいところ?もっと、ふかいところ?」

 「う〜ん。どこだろう?」





 ぼうやは、ぐんぐんおよいでいく。

 「やあ、ぼうず。おまえさん、どこからきたんだい?」

 「ぼくは、もっとあさいところからきたんだよ」

 「あさいところか。それじゃあ、ここはくらいだろう?」

 「うん。ぼくがしってたうみよりもずっとふかくてくらいね」

 「ぼうず、こわくはないのかい?」

 「こわくなんかないよ」

 「へえ、そうかい。ぼうずは、なかなかゆうきがあるな」

 「ゆうき?なあに、それ?」

 「こわくてもこわがらないことさ」

 「ぼくこわくなんかないよ」

 「へえ、たいしたものだ」

 「くろいおさかなさんは、くらいところがこわいのかい?」



挿絵(By みてみん)



 「ああ、こわいさ。だって、なにがいるのかみえないもんなあ」

 「くらいところには、なにかがいるの?」

 「ああ、うみのそこにはひかりがとどかないまっくらなところがあって、くらいなかをウヨウヨとさまざまなさかなたちがいるんだよ」

 「ぼく、そこであそびたいなあ〜」

 「ハハハ。そこにはぼうずよりもはるかにおおきなさかなたちがいて、おまえさんなんかくわれちまうぞ」

 「ぼく、たべられちゃうの?」

 「ああ、そうさ。おまえだってこれまでに、おまえさんのそのくちよりもちいさなさかなたちをたべてきたんだろう?」

 「そうだね。くちのなかにはいるものはたべちゃったよ」

 「ほうらみろ。だから、おまえさんは、くらいうみのそこへはいってはいけないよ」

 「くろいさかなさんは、ぼくよりおおきいのにどうしてぼくをたべなかったんだい?」

 「それはね、ぼうずはわたしの好物ではなかったからだよ」

 「ぼく、おいしくないの?」

 「さかなにはね、いろんな味があるんだよ」

 「ねえ、くろいさかなさん。ぼくは、もっとおおきくなるにはどうしたらいいの?」

 「たくさん、うみをおよぐことさ」

 「たくさん、うみをおよぐの?」

 「そうさ、うみは、どこまでもつづくんだ。どこまでも、どこまでも」

 「じゃあ、ぼくもどこまでもおよいでみるよ。ありがとうくろいさかなさん」

 「ああ、きをつけていくんだよ。あまりふかくはいかないで。あさすぎず、ふかすぎずだよ」

 「うん、わかった。ありがとう」

 ぼうやは、なみにのってグングンおよいだ。グングン、グングン。





 ぼくのめのまえにひかりがさしこんだ。あおいさかなたちのむれがみえる。




挿絵(By みてみん)




 「あおいおさかなさんたち、どこへいくの?」

 「ぼうやは、しおってしってるかい?」

 「し〜お〜?なあにそれ?」

 「それはね、うみのみちなんだよ」

 「うみのみち?」

 「そう。みずのなかにもね、みちがとおるんだよ」

 「へえ〜。ぼくものってみたいなあ〜」

 「ほら、こっちにきてごらん?」

 ぼくは、あおいおさかなさんたちのむれにはいりこんだ。

 「うわあ〜。すごいなあ〜。ぼくのからだ、かってにながれていくよ〜」

 「そうだろう?ながれていくだろう」

 「うん、こんなにおもしろいみち、はじめてだよ〜」

 「このみちにそっていけば、どんなにとおいところまでもいっきにおよいでいけるぞ〜」

 「どんなにとおいところでも?」

 「ああ、そうさ」

 「じゃあ、ぼくもいってみたいなあ〜。まだまだいったことのないうみまで」

 「このしおのながれはうみのなかにいくつかあるから、ぼうやがいきたいながれにのっていくといいよ」

 「へえ〜。ぼくでもみつけられるかな?」

 「まわりをよくみていってごらん。きっと、みつけられるさ」

 「うん。あおいおさかなさんたち、ありがとう。ぼくもひとりでいってみるよ」

 ぼうやはあおいおさかなさんたちとわかれた。





 「ねえ?ぼくはどこまできたんだろう?」

 ぼくは、まわりをみわたす。

 「う〜ん。ぼくもう、うまれたうみにかえりたくなったよ・・・」

 ぼくはこころぼそくなった。

 「ぼくのからだもこんなにおおきくなったし、もうじゅうぶんだ。ぼくはもう、おうちにかえろう」

 ぼくは、しおのながれをうまくみつけて、おうちにかえった。

 




 「ただいま〜」

 ぼくがうまれたうみにぼくはかえってきた。

 「いや〜ん、こないで〜」

 「うわあ〜、くわれちまう」

 ぼくのすがたをみたさかなたちは、みんなぼくをみてこわがった。

 「ぼ、ぼくはみんなをたべたりしないよ〜」

 「そ、そんなおおきいからだでいわれたって、だれがしんじるんだよ」

 ちいさなさかなたちはいう。

 「そのは、そのあご、そのえら。わたしたちには、おそろしいわ」

 「そのあごでくだかれたら。ひいい〜。」

 「そのおくち。ガバあ〜って、わたしたちをまるのみね」

 ちいさいさかなたちはいう。

 「ぼく、そんなにおおきくなっちゃったんだ・・・」

 ぼくは、なんだかつかれて、すいめんをプカプカとうかんだ。ぼくがすいめんをうかんでいると、なにかがぼくをすくいあげた。

 「ああ、なにするのさあ〜」

 ぼくはうみからでていた。

 「ああ、なんてくるしいんだろう?」

 ぼくはバタバタとあばれる。

 「く、くるしい・・・。た、たすけて・・・」

 ぼくはめからなみだをこぼした。

 「くるしいぼくは、ここでおわかれ・・・」

 ぼくはキューっとちいさくないた。ぼくをつかまえたのは、にんげんといういきものだった。



挿絵(By みてみん)

ぼくのさいごはにんげんのうでのなか・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ