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吸血姫の巻き込まれ英雄譚  作者: cvおるたん塩
1章 救国の吸血姫編
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8話 魔術の練習

みじかめ

 この世界に来て、一週間が経った。

 とりあえず、私の毎日のルーティーンはこの一週間で固まった。

 朝起きたら顔を洗って朝食を取って、畑に水やりをしてから体力づくりのために軽いランニングをして、剣を振るう。


 朝の運動が終わったら散歩がてら川まで歩いて汗を流すついでに水浴びをして、お昼まで魔術の練習。

 そうしてお昼になったらご飯を食べて、午後は三時間ほど休憩を挟みつつ、歴史や魔術の座学。そして、日が落ちてきた頃に街に出かけて、食材の買い出し。

 それからはほぼ自由時間で、決まった時間に夕飯を食べる以外は割と好きに過ごしている。といっても、ほとんど歴史書や魔導書を読んで勉強しているが。

 一見娯楽のない生活だけど、外に出られないからと惰性でゲームをしていた私にとっては、どれも楽しいものだ。


 体を動かして汗をかくことなんて今まで出来なかったし、魔術なんて不思議な技術を習得するのなんて夢みたいだ。歴史も元から好きだったので、物語を読んでいるようで面白い。

 そんな生活を続けていたおかげで、私はこの世界に馴染んできていた。

 魔術も日常レベル——家事に魔石を使う程度——には使えるようになったし、街でも挨拶されるようになった。

 セレネが一人では経験できないような事を経験させてくれるので、教養も身についてきたし、なんというか、生きている実感がある。もはや生きているだけで楽しい。

 まあ今でも詩音の事を考えて少し寂しくなることはあるけど、それでもやはり充実していると言える。


「さて、今日も頑張るぞー!」


 一人でそう呟いて、私は魔導書を手に庭に出る。魔術の練習だ。

 少し時間はかかったけど、魔力を操るという感覚は覚えた。しかし、今はまだ集中してようやく操れるといったレベルであり、実用的な魔術はまだ使えない。

 魔導書に書かれた詠唱を元に魔術を使うことは出来るけど、それでは細かい制御が利かないので、少なくとも日常で使えたものではないのだ。


「水よ、わが手に集え」


 魔導書の通りに詠唱すると、突き出した右手の前に水の球が生成され、出来上がるとそのまま落下する。

 私が今練習しているのは初歩の初歩、魔力操作だ。

 生み出した水の球をその場に固定。次は自在に動かす。そして慣れてきたら形を変える。そうやって魔力操作を覚えるのがいいらしい。


 一応、魔導書の通りに詠唱すれば、私でも上位の魔術は使えた。

 しかし、実際相違魔術を使う場面——戦闘時は長い詠唱なんてしている暇はなく、無詠唱、最低限詠唱省略が必須らしい。

 それをするためには、まずは魔力操作を覚えるところから、そうセレネに教わった。

 なので、一からコツコツやっているのだ。


「水よ、わが手に集え」


 もう一度同じ呪文を詠唱する。

 魔力が手のひらに集まり、そこから外に抜けていくような感覚と同時に、水が生成されていく。そして、魔力の動きが止まると同時に、やはり水は落ちる。

 今度は詠唱をせず、今の感覚を頼りに魔力を動かす。

 私の持つ魔力を手に集中させ、それを体の外に出して、その魔力を水に変換する。

 ……何も出なかった。

 なかなか無から有を生み出す感覚が掴めないのだ。


「はぁ……」


 ため息をついて、私はもう一度詠唱をする。

 しっかりと魔力の流れを追って、それを固定するように——


「おぉ⁉」


 出来た。少しの間固定されただけだったけど、何となく感覚は分かった。

 生成された水に、魔力を含ませるイメージだ。

 もう一度詠唱して水を生成し、そこに私の魔力を流し込んで含ませるように。すると今度は水をちゃんとその場に固定出来た。

 なら、それを動かすようにすれば——


「お、出来た! あぁ……」


 ダメだ、まだ気を抜くとあっさり制御を失ってしまう。

 けど、コツは掴んだので、あとはもっと自然に使えるように、地道にやっていくだけだ。


次回は明日の7時です

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