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吸血姫の巻き込まれ英雄譚  作者: cvおるたん塩
1章 救国の吸血姫編
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19話 平穏

 盗賊との戦闘で怪我をして一週間が経った。

 メンタル面はある程度落ち着いてきたのだが、一週間の間は体がだるく家の中を歩く程度の運動しかしなかったので、体力が落ちた。問題になる程度ではないのだが、運動を兼ねて軽く剣を振っていたら動悸がしたので、リハビリが必要そうだ。

 それと、食欲があまりなかったので、そっちのリハビリもし無ければならない。まあそこは、ノエルがいい感じにやってくれるだろう。


 ——とまあ、何とも懐かしさを覚える生活を送っている。

 それと、セレネが言っていた守衛の子二人我が家にやってきた。

 名はクレアとアルカ。

 クレアは赤髪ツーサイドアップの少女で、この世界の女性らしく、日本人の平均よりも背が高い。そしてスタイルもいい。ぱっとみ胸はEくらいある。羨ましい。


 そしてアルカの方は栗毛のボブで、身長は私より少し高い程度の、女の子らしい女の子といった感じの子だ。身長こそ私と同じくらいなのに、胸は大きい。なんならクレアより大きい。ちょっとうらやましい。

 どちらも私と同い年だが、立ち居振る舞いも実力も、やはり比べ物にならない。

 二人はノエルと同じように屋敷に住み込みで二人部屋。ベッドを分けるか聞いたら食い気味に「いらないわ!」と言ったのは、多分そういう事だったのだろう。夜に部屋の前を通ると嬌声が聞こえるけど、一応抑えているようなので黙認している。


 隣の部屋まで聞こえるということもないみたいだし、仕事をこなしてくれるのならば、私から言うことは何もない。

 実際すでに侵入者を捕縛して、尋問までしていたし。

 体術だけで簡単に捕まえたエリカも凄かったが、アルカもなかなかのものである。というのも、屋敷に来て早々に屋敷周辺に魔法で結界を張り、常時監視できるようにしたのだ。

 近接戦担当のクレアと、魔術支援担当のアルカ。仲がいいだけあって連携も完璧らいし。



 それからさらに一週間、私は体もそこそこ動かせるようになったので、体力づくりを再開していた。

 別に戦う気はないけど、体力づくりの一環でノエルに剣術を教わっている。けど、実戦を想定しているわけではないので、軽く打ち合う程度だ。

 そんな感じで日常を取り戻し、なんだかんだ幸せな生活を送っている。


「——んじゃ、出かけてくるね! お昼は外で食べてくるから。夕飯までには帰る!」


 そうノエルに告げて、私は屋敷を出る。今日はセレネと一緒に王都の外に出る予定なのだ。なにか用事があるわけではないのだが、行動範囲が狭すぎるので、そろそろ外に出かけようということになった。

 王都の外は魔物がうろついているが、王都周辺の平原には友好的な魔物しかいないので安全だ。それに、人の往来も多いので、盗賊なんかの心配も少ないらしい。つまり、これはピクニックだ。セレネが弁当を作ってくれるみたいだし、楽しみ。


 私は鼻歌を歌いながらスキップ——なんて人前でしないように必死に抑えながら、待ち合わせの噴水まで歩く。

 今日は楽しみ過ぎておめかしした。ノースリーブのブラウスに黒のスカート、奮発してかった可愛いショルダーバッグに、いつもの日傘。護身用に剣でも持って行こうかと思ったけど、流石に邪魔なので置いてきた。何かあればセレネがいるし、彼女に頼れない状況になったとしても、魔術が使える。まあ、ちゃんと身を護れるかはわからないけど。

 ともあれ、今日は楽しいお出かけの日なのだ。そんな事気にせず、楽しくやろうじゃないか。


「……お、いたいた。おーい!」


 街の広場に着くと、すぐにセレネを見付けられた。小柄で人影に隠れやすいが、桃色の髪がよく目立つので探しやすい。


「こんにちは、ルナちゃん。今日は可愛い格好してるわね」

「えへへ、せっかくのデートだからね! そういうセレネも可愛いよ!」


 セレネは黒いオープンショルダーのワンピースを着ている。フリルやリボンがあしらわれたガーリーな服装だが、落ち着いた雰囲気のおかげか、不思議と大人っぽい。それに、ふとした時にちらっと見えるガーターリングが少し色っぽく、つい足に視線が行ってしまう。


「うん、ほんと可愛い」

「ちょっと視線がいやらしいなぁ」

「き、気のせいでしょ。それよりほら、行こ!」


 私はセレネの空いた手の方に移動して、彼女と手をつなぐ。もちろんちゃんと日傘に入るようにして。

 幸せだ。私はこういう生活がいい。暇だった時は刺激を求めたりもしたけど、いざその刺激を経験すると、平穏で平坦な生活のありがたみがよくわかる。


「ルナちゃん、嬉しそうね?」

「んー、そう? まあ、そうかも。変な事心配せず遊びに行けるのが如何に幸せかって、つい最近思い知ったから」


 健康だから外に出られるのは勿論、死ぬことを警戒せずいられるのは幸せな事だ。

 あの日から数日、私は常に警戒していた。また来るかも。外に出た時狙われるかもと、ずっと考えていたのだ。自分で言うのもなんだけど、私は金を持っているし、外見だって物凄く可愛い。それでいてぱっと見弱そうなので、まあいい標的だ。


 あんな経験をしたからこそ、ただ出掛けるだけでも楽しく思える。

 あれが地球での出来事だったら、多分私は完全にふさぎ込んでいた。しかし、ここが異世界で命のやり取りは日常茶飯事であると思えていたからこそ立ち直れたのだと思う。まあ、やっぱり自分が標的になって、実際怪我をして、そして相手を殺した事を考えると怖くはあるけど。


「……ほんと、あんなこともうなかったらいいな」


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