私の神様は雲隠れ
『お別れ』って言葉を聞いた神様の顔は、びっくりしたかと思ったら、直ぐに泣きそうに、くしゃっと歪んだ。
あぁ神様、ごめんね。
「私だってお別れしたい訳じゃないんだよ。でもね神・・」
言い終わる前に、背後の神様がすっと消えてしまったので、私は盛大に後ろにひっくり返ってしまった。
「痛ぁ!」
「あー、若様逃げたねぇ。」
「「・・・・。」」
当事者に逃げられ残された3人の間に微妙な空気が流れた。
私は、仕方なく神様との出会いから、今迄をかいつまんで揚羽さん達に説明した。
「若様に納得して頂くまで、しばらくこちらにご厄介になりますわ。」
「は?うちに泊まるの?」
「えぇ、庭先の枝で結構よ。」
庭先の枝って。
あー・・この2人、虫さんだったか。
「私は、ひとまず青嵐様に若様が見つかった事と、ことの次第を御報告してまいります。」
「僕は寝床張っとくー!あの辺の枝ぶり良さそう。」
揚羽さんが目の前で、黒揚羽蝶になって青い空高くヒラヒラ飛んでい行く。
うん、そうだよね、名前の通りだよね。
・・じゃぁ・・蜘蛛彦は・・。
覚悟を決め、ついと目を戻すと、目の前のテーブルには、ブルーメタリックに輝くサイケな女郎蜘蛛が鎮座していた。
・・なかなかのサイズ。
蜘蛛が駄目な子だったら、悲鳴もんだね。
「蜘蛛彦さん?かっこいい色だね。」
『そお?わぁい、なっちゃんに褒められちゃった。うれしいなぁ。』
長い脚をアクロバティックに動かし頭をかいての照れる蜘蛛。
・・蜘蛛って、そんな複雑な動きできるんだ。ていうか、虫型でも話せるのね。
蜘蛛彦はいそいそと庭に出て、木の枝に巣を張り始める。
・・後で、じーちゃんに蜘蛛の巣とっぱらわないでねって、お願いしとかなきゃな。
「神様、お社の中で、泣いてないかなぁ・・。」
私はお社を眺める事しか出来なかった。