私の神様は家出中
あれから一週間過ぎた。
神様は、まだお社から出てこない、こんな事初めてだ。
神様の好きな甘味をお供えしても手もつけない。呼びかけても姿も見せない。
「・・行ってきます・・。」
それでも私は学校に行かなきゃならない。神様が気になって、少々寝不足だ。
揚羽はふらつく奈津が心配だからと、蝶になって、こっそり登校に付いて行く。
揚羽は、口調はちょっときついけど優しくて面倒見がいいんだよ。
んー、人の言う『ツンデレ』?
僕らも、あれから庭先でご厄介になっている。
僕の張った蜘蛛の巣の寝床は自慢の出来で、夜は揚羽と一緒に寝る。
なのに、揚羽が捕食されそうで見てて心臓に悪いと、なっちゃんからは不評だ。
神域になっているなっちゃん宅は、清浄で居心地が良い。長居しちゃいそう。
「さてと・・僕もでかけますか。」
なっちゃんや揚羽は、お社に引きこもった若を心配しているけれど、実はそこには若はいない。
なんでわかるのかって?
あの日僕は若様に糸つけて、ずっと追尾してるから。
雲隠れしたその日は、木下さんちの三毛猫ちゃん宅。次の日は、本田さんちのぶち猫ちゃん宅に泊まってる。
若様は何故かいろんな猫さんとお知り合いの様で、渡り歩いている。
うーん、こりゃ家出のつもりかなぁ?
今日は図書館にいるので出向いてみた。
いたいた。
子供達に混じって、絵本の読み聞かせに参加してる。
楽しそうにニコニコとお話を聞いてる若様が微笑ましい。
僕は催しが終わる迄、後ろの席で待つことにした。
僕に気付いて若様はちょっと嫌そうな顔をした。僕嫌われてるなぁ。
まぁ理由はわかるけどさ。
「若様、ちょっとお話しましょうか?」