私は本の山から生まれた何者でもない
私は幸せというものを教えてもらえない環境に育った。
親元はおらず、私に知識を教えてくれたのは山のように積み上げられた本だけだった
太陽などは何処にもないのに、
ただ隙間から入ってくる光は一体何なのかという疑問に答えてくれる人などはおらず私はただただそこにある本の山から一冊、また一冊と本を抜き取っていった。
それらは山のような本の数であったが、時が進むにつれていくとその本たちは既読のただの紙切れたちへと変わっていった。
古臭い本から真新しい本まで何処から運ばれてきたのか判らない本を私は全て読み終えて、
ただ漠然と漏れてくる光の下に座っているのは退屈極まりないものではあったが、
私には時間が無限にあると確信がついていたため、この漏れてくる光がなんであるのかを考えていくことにした。
最初に考えたのは、照明の光なのではないかという予想だった
だがそれは違うことをすぐに証明することができた。
何故ならばここには天井などはないからで、照明とは天井についているものだからだ
次に考えたのは本当は太陽の光なのではないかというものだったが、それもすぐに違うことが証明できた。
この光には、熱がなく感じるものはむしろどんなものも凍らせてしまうような痛みを伴う寒冷であったからだ。
しかしこの答えには私が生きていることを疑問に思わせる要素が複数含まれていることに気がつき、私は光の詳細を考えるのをやめて自分の可能性を模索していく、
山のような本の中からそれらが書かれている本を少しずつ丁寧に赤子を抱きかかえるように静かに手に取り
その中から可能性のあるような本を一つずつ一枚一枚厳重に脳内に読み込んでいった。
一つ、生きているには心臓が動いていることが第一である。
私は自身の脈というものを手触りで探しだし、ゆっくりとその流れを感じ取っていった。
そこには確かに流れゆく血の流れを感じられる脈があった。
これは私が生きているということを証明させる一つの要素に間違いはない
二つ、人間ならば体の特定の部位が温かくなくてはならない
この要素は私には当てはまることはなく、体の全てが温かさを失っていた。
万に温かさを感じたとしても、それは雀の涙程度のものでそこに人間というものを感じさせることはなかった。
しかし、どの本を読んでみても私は人間という生物に分類されている。
私には手があり、五本の指がある
私には足があり、そこにも五本の指がある
私には胴があり、そこには沢山の臓器が詰まっている
そして私には頭があり、その中には脳みそが詰まっている。
自分の体を触って判ったことは、私には翼が生えているということと
女性であるということだけであった。
私は私自身に興味があった
そして私は本を手にして自身を追及していくこととした。
こういう展開はしばらく続きます。