其の一
「またか…」
【高杉五郎】と言う22歳の青年はニュースを見て溜め息をついた。
身長は170cmほどで、顔立ちは若く大学生、下手をすれば高校生にも見える。
その青年の視線の先にはテレビがあり、そこにはある文字が映っていた。
『連続バラバラ殺人事件』
四肢をバラバラにされた死体が連続で見つかっているので、そう呼ばれている。
「よりにもよって、こんな事件を俺に回してくるなんて……」
五郎は、また溜め息をついた。
それは今から2日前のこと…。
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「この事件を頼まれてくれないか?」
そう言ってきたのは、五郎の警察時代の上司の【高木さん】だった。
実は五郎は去年までの3年間、警察官だった。今は辞めてフリーの探偵をやっている。
「警察だけの捜査では限界があるんだ。俺たちが見落としているところに鍵があるかもしれない。頼まれてくれないか?」
警察時代の恩人の頼みを断るわけにはいかない。五郎は「分かりました。任せてください!」と依頼を引き受けた。
「ですが…」
「何だ?」
高木さんが不思議そうに五郎を見る。
「その事件について詳しく教えてもらえませんか?最近ニュースや新聞を読んでなくて…」
五郎がそう言うと、高木さんは溜め息をつき、「仕方ない…。」と言い、事件について語りだした。
「ニュースでもやっているように、この事件は殺害した後四肢をバラバラに切り落とすというものだ。四肢の切断部分からは生活反応が見られなかった。さらに、遺体のすべての眼球は未だ発見されていない」
「殺害方法は、遺体の状態から見て撲殺による失血死。あまりに遺体の痣が酷いのが特徴だ。バットなどで殴り続けた可能性が高い」
語っている間、高木さんの表情は重かった…。その話を聞いている間の五郎の表情も重かった。
「一人目の被害者は、【高橋朝美】20歳 女性、大学から帰ってる途中に行方不明になり、2日後に遺体として発見された」
「二人目の被害者は、【伊藤静香】25歳 女性、一人目の被害者と同じく仕事から帰る途中に行方不明になり、2日後に遺体として発見されている」
「三人目の被害者は、【木下淳希】27歳 男性、この被害者は、通勤中に行方不明になり、同じく2日後に遺体として発見された」
「被害者である3人に共通する人間関係は今のところは分かっていない」
ここまで言い終えた高木さんは五郎の用意したお茶を啜った。
「さらに…これはまだマスコミには口止めしているのだが……」
高木さんは言いずらそうに口を開いた。
「遺体の腹部には噛み切られたような跡があった。つまり、この犯人は…」
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「死んだ人間を喰っている……か」
五郎は呟いた…。テレビのニュースには、また新たな被害者が出たという情報が放送されている。
『被害者の名前は、【佐藤剛志】23歳。2日前、大学からの帰り道で行方不明になり、捜索がされていましたが今朝、四肢が切断された状態で遺体として発見されました』
『殺害方法などから見て警察では連続バラバラ殺人事件と同一犯と見て捜査をしています』




