我思わずして何思う(再)
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「そういえばさっきお前尾坂に何言ったの」
「いやぁー、ちょっと怒鳴ってしまいまして…」
たはは、と苦笑いする佐野。
「ほんとあれ怖かったから、うん、マジで。俺も若干怖気づいたから」
「それほどでしたか?」
「後で尾坂に謝っとけよ。結構傷ついてたぞ。ああ見えて結構優しい奴だから」
「はい…」
少ししょんぼりして頭を垂れる佐野の姿は俺の保護欲を掻き立てさせた。
可愛い!というか佐野可愛いよな。身長は低めで、綺麗な茶髪でポニーテール。
胸は…まあまあいいくらいだし。とても不登校児だとは思えない。
「ていうか先輩、尾坂先輩の事どう思ってるんですか!」
頬を膨らませてこちらのほうをにらんでくる佐野。
ハムスターみたいで可愛いな。
「どう思ってるかといわれてもなぁ。そもそも昨日初めて会ったから、
まだ同じ部の部員ってくらいにしか考えていないかな」
「先輩部活入ってたんですか、それ何部ですか?」
「社研部、今日は社研部の活動の一環としてみんなでお前に会いに来た」
「では私も入部しますね」
「え、なんで」
「だって先輩が…」
ごにょごにょ言ってはっきりと聞こえなかったがはっきりとした理由があって
入部するならそれでいいだろう。俺たちはご丁寧に手すりがつけられた
階段をゆっくりと降り、先生たちのところへとむかった。
「な、尚美!も、もう、大丈夫なの?」
佐野の元へと駆け寄る母親。大きく目を見開き、信じられないという表情を
して、佐野をみてしばらくの間静止していた。そして、
その表情は徐々に驚愕から喜びへと変わり、小さな粒が母親の頬を伝っていった。
「じゃ、俺たちはそろそろ帰るか」
泣きじゃくる佐野の母親を傍らに俺たちは佐野の家をあとにした。
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「上本君ー。どうやって佐野ちゃん連れだしたのー?」
「城津。その連れだした、て言い方やめろ」
「えー、いいじゃん。で、どうやったの?ほら、言ってみ、言ってみ」
いたずらっ子のような眼をして小突いてくる城津。
正直鬱陶しい。若干ウザい。
これ以上いじられるのは嫌だったので、俺は事の顛末の一部部分を城津達に伝えた。
相変わらず落ち込んでいた尾坂だったが、俺の話を聞くと、若干表情が和らいでいた。
まだ回復には時間がかかりそうだったが、そのうち自分で立ち直るだろう。
そしてなぜか横野先生は見守る親のような眼で俺たちのやり取り
を見ていた。なんか怖いわ。
しばらく歩くとみんなそれぞれ自分の家に帰る為にばらけていった。
それなのに何故か。
「なんで横野先生だけ残ってるんですか、先生帰る方向俺とは逆ですよね」
いやらしくニヤリと笑う横野先生。正直キモい。
「それで、何か収穫はあったか?」
「あっても言いませんよ」
「そうか、そうか」
ポンポンと俺の背中をたたくと俺にじゃあな、と別れの挨拶
を交わして帰っていった。てか別れも挨拶って何。
携帯の時刻はすでに6時を回っており、昨日よりも帰り
が遅くなってしまった。横野先生はこの性格を
どうにかして更生させようとしているが俺にその気
はない。社会が求める、横野先生が恐らく求めている
だろう”理想の性格”というのは一体何なのか。
みんなにやさしくふるまう紳士なのか、それとも
皆を纏めるリーダー格の人間なのか。
だが俺はそいつらをどうにも気に入ることが出来ない。そいつらは結局
見せかけだけのもので、もしも自分が死にそうなとき、それこそ
絶体絶命の状況に陥った時、真っ先に仲間を犠牲にしようとするだろう。
少なくとも俺が見てきたやつ全員そうだった。
だが実際に本当に仲間思いの奴がたまにいることもまた事実だ。
けれどもそれはほんの一握りの存在でしかない。
それでも社会は人はそのほんの一握りの、良いひとを追い求めてしまう。
そんないいひとを追い求めすぎたが為に傷つくのはもうごめんだ。
だから、俺は一人で、孤独に生きていく。
たとえ何があろうとも俺はその意思を貫き通す。初志貫徹。
俺のモットーだ。
きっとこの性格はいつになっても受け入れられることはないだろう。
だがそれでいい。一人でいるほうが効率的だ。
我思わずして何思ふ。