捉え方の違い
ブックマークが6に増えました。狙うは王台の10ですね。
アクセス数も1000超えました。ほんとにありがとうございます。
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「カエル、ですか…」
「あ、例えだからな、別に他意は無いからな」
「分かってますよ、流石に、ね」
「そもそも井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知るというのは後からつけられた
もので、その理由はカエルがかわいそうだと思ったからだといわれているんだ」
「それで?」
佐野はそれがどうした、といった顔でこちらを見据えてくる。
どうやらまだ気づいていないようだ。その答えを今俺だけが知っているという
事実に対して、ちょっとした優越感に浸る。
「人は他人が小さな殻にとじこまっていることを否定する。
カエルが空の青さを知っているように一人で、孤独に生きていても見つかるもの
はたくさんあるのに、人は協調性が欠けているという理由だけで
一人でいることをなぜか否定しまう」
一般的にリア充と呼ばれる彼らはすぐに群れて行動する。
そして群れて、集まってひと時の楽しみのためになんだって行動する。
その楽しみを邪魔するもの、気に入らないものがいれば、排他的になり、
群がって、心不乱に排除しようとする。
リア充どもはみんなといて楽しいなどというが、そんなことはただの自己満足にすぎない。
自らが傷つきながらも続ける関係など必要ないのだ。
本当の信頼関係など3、4年一緒にいるだけで築き上げることは出来るわけはない。
では、解はなんなのか、簡単だ。カエルになればいい。
カエルになって、一人で、孤独に生きていく。
一人でいることを馬鹿にすることこそ本当の信頼関係を気づき上げることが出来なかった奴の
負け惜しみのような気がしてならない。
「…」
「だけど…佐野みたくその協調性を求めるが為に傷付いてしまう人
が大勢いるのもまた事実だ。ならどうするか、答えは明確だ」
佐野はまだ理解したとは言い難い表情をしていた。
あともう1押し。
そういえば俺は何故今こんなに力説しているのだろう。
俺は目の前の人がかわいそうだからといって
助けの手を差し伸べてやるほどの慈悲の心を持ったイケメンでもなければ
ハーレムラノベ主人公でもない。こんなの俺のキャラじゃない。ではなぜか、その答えは
今もわからない。わからないが、なぜかこいつを助けたくなってしまった。
いつもなら到底有り得ないことなのに。
「ならば、お前がそのカエルになればいい。なに、そのカエルだって空の青さを知ってるんだ。
お前だって、無理に一人になれとは言えないが、一人に近い状態でいれば見つけられるもの
があるはずだ」
思っていることがあまり素直に口に出して伝えることが出来ない。
言っていることが矛盾していることも分かっている。
それでも、どうにかしてこいつに社会復帰してほしかった。
それでもやはりその思いの発生源は見つからない。
「だ、だから」
「あ、ありがとうございます。先輩の思いはしっかりとここに響きました」
軽く自分の胸をたたく佐野。そしてその声はこれからの学校生活に
少しばかりかきたいに声を弾ませている、そう感じさせた。
「もう、その、大丈夫なのか?」
イケメンならここでもっと違う声のかけ方が出来るのだろうが、残念ながら
俺は出来ない。
「はい、おかげさまで」
佐野の笑顔は不登校児だったとは思わせない程綺麗で輝かしかった。
「じゃあ、おれは下にいるみんなにこの事報告してくるが、お前も来るか?」
はい、とうなずく佐野。とりあえずは心配なさそうだ。
明日からも無事に登校することが出来るだろう。
これでひとまず一件落着だ。
俺たちは下にいる先生たちの元へと階段を下って行った。