綺麗ごとだけでは片付かない
黄色い声と段々大きくなっていく足音。
やがてそれは俺の傍で絶頂に達し、扉が勢いよく開けられる。
「尾坂は居るー」
携帯を片手にかったるそうに壁にもたれかかりそういうギャル子。
まるで俺なんかには興味を示さない。
まぁ、当たり前なんだけど。
「まだ来てない。なんか用?」
「はぁ、アンタに用なんかあるわけないし。
調子乗んな」
ですよね。まあ分かっとったけど。
「じゃあ尾坂には何の用だったんだよ」
「アンタには何の関係もないでしょ。
てかアンタ尾坂の何?」
携帯をいじるのを止め俺を睨みつけるその目は俺を
震えあがらせる。
「同じ部の仲間だ」
「それだけ?」
ギャル子はさっきよりも随分と声音を落として喋った。
「そ、そうだが」
あまりの怖さに固まってしまう。
「なら余計なこと言うな。アンタが変な事吹き込んだせいなのかもしんない
けど最近尾坂が調子乗ってんのよね。そういうのウザいから。
やめてくんない」
ギャル子はそれだけ言うと他のギャル子と駄弁りながら出ていった。
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今度は俺が古文の宿題に取り掛かっていた時に
尾坂達がやってきた。
「遅いな。なんかあったのか」
「ちょっと、ね」
沈鬱な表情で伏し目がちにそういう尾坂は俺に何かあったのだと悟らせる。
「尾坂ちゃんのね、いじめがまたひどくなったらしくて」
悔しそうに唇を噛む尾坂。
まだ精神的には以前のようには傷ついてはいないようだが
それも時間の問題だろう。
一度取りついた人間の汚い感情はそう簡単に離れない。
取っても、取っても、また戻ってくる。
纏わりついてくる。
決して解くことは出来ない呪い。
だからいたちごっこなど無意味に等しい。
耐えても耐えても、耐えてもまた攻撃される。
かといってそこで攻撃をし返しても非難される。
暴力よりもいい手段があるなどと社会は謳うが
そんなはずはない。
力こそが至高の存在。
暴力は駄目なら言葉の暴力は?
武器を使って人を殺しても、言葉で人を殺しても
同じ殺人。でも実質裁判にかけられるのは前者の方。
だからどうすることもできないのだ。
死ねといっているような物。
だから社会は理不尽で卑怯なのだ。
だから