起爆剤
「私、昨日家に帰って一人でボーッとしてたの。
なんか急に自分って一体何なんだろうって思っちゃって。
そしたらなんか社研部のみんなの事が頭に浮かんできてさ。
そこで私ようやく気付いたんだよね。私今まで馬鹿だから
この世界に味方はいなくて、私だけが一人で行く宛もなく
彷徨っていると思っていた。
ほんと馬鹿だよ。
私には社研部のみんなが居たのに、私はそれに
ずっと気づかなかったんだから。
でも今は違う。私は気づいた。
決して私は一人じゃない。
そしたらなんか罪悪感感じたの。
世界には本当に味方もいないで一人でずっと傷ついていた人がいるのに
一人じゃない私が私は一人なんだって嘘言って逃げてたらダメだって。
理屈ぐちゃぐちゃなんだけどさ」
青い空を見ながらそういう尾坂の顔はどこか大人びていて
少し遠い存在になってしまったように感じさせた。
それが成長という事なのだろうか。
そして 尾坂は一つ大きく間を開けてからまた話し始めた。
「そして私決めた。
三島達に抗ってやろうって。
抵抗してやるんだって。
負けたくないって思ったの」
今度は空ではなく俺達を見る尾坂。
その堂々とした姿は閃々と輝いていて、
ずっと暗い道を歩いていたおれには眩しすぎた。
「だから私はこれからも抗い続ける。
何をされても耐えて、耐えて、耐え続ける。
絶対に負けない。だから、これからも友達でいてね」
爛々と燃えつつづける煉獄の中から一瞬見えた淑やかな笑顔には
もうあの頃の尾坂は映っていなかった。