ボッチは俺だけでいい
俺は誰もロッカーのほうを見ていない事を確認してから
こっそりと戸を開けてc組をあとにした。
都会の空気は汚いというらしいが、掃除ロッカーの埃まみれの空気に比べれば
十分綺麗だ。贅沢言ってんじゃねえぞ!
廊下にはすでに佐野がスタンバイしていた。
既に決意は決まったのか、闘いに行く戦士のような
オーラを感じた。
俺はその佐野には何も声をかけずに
というより無視して自分の教室に帰った。
今回ばかりは佐野も追ってこなかった。
時折さっきの疑問が浮かんでは消えていく。
そしてその疑問は見つからない物だから
余計俺はイライラしてしまう。
さっき見て分かったc組の現状。
尾坂に味方はいない。
尾坂に居場所はない。
尾坂には…
今の尾坂には 何もないのだ。
全てあのギャル軍団に奪われた。
なぜいつも正しい事をしている人間ばかりが損をするのだろう。
何も悪いことはしていないのに。
何故あのギャル軍団は無傷なんだろう。
今俺にはなにが出来る。
カースト最底辺の俺に。社会のゴミくずに。
でもそんな事を考えても結局何も俺には
出来ない事は分かっている。
俺には力はない。
力を得るための努力を怠ったから。
逃げたから。
でもそんな俺でも何とかしてみんなと一緒に作り上げたものがある。
たった1つの。
それは社研部という何がしたいのか良くわからない部活。
あの日突然尾坂に一方的に告げられて強制的に
入部させられた部活。
でもそれは今俺と尾坂が唯一コミュニケーションをとれる場所なのだ。
だからこれだけは絶対に守らなければならない。この場所だけは。
だから守るのだ。居場所をつくってやるんだ。
ボッチはこの世で俺だけでいい。
佐野は傷ついていい人間なんかじゃないんだ。
授業をさぼったクソガキは一人でそんな事を考えていた。