mission
丁度おなかが空き始める3時間目に俺たちは作戦を実行することにした。
2時間目が終わると俺と佐野は急いでc組へ向かった。
幸い、2時間目がc組は音楽だったらしく、教室には誰にもいなかった。
俺はc組の人たちが戻ってくる前に素早く掃除ロッカーに隠れた。
掃除ロッカーは埃っぽくて薄暗く、あまりいい気はしなかったが
教室は十分に見渡せた。
佐野は…あれ?佐野君は隠れるところがないようだぞ。
何も考えてなかったのかな?ん?こっちを見てきたぞ。
ん?なんか近づいてきたぞ…あれ?ロッカーの扉が開かれたぞ?
あれれ?おっかしいなー。
「おい、なんで開けた。ここは俺の場所だ。というか早く閉じろ」
「何言ってんですか先輩。ここで一緒に隠れましょうよ。
別に2人でも十分は入れますよね?」
「おい、そんなわけないだろ。息できなくなるわ。あ、こうしよう。
俺が3時間目隠れて次の4時間目に交代してお前が隠れろ。
ほら、winnwinnだろ」
「まぁ、それでもいいですけど。じゃ私帰ります」
「あぁ、俺に構わずに先に行け!」
指で鉄砲の形を作って佐野決めポーズを送ったが、反応はない。
それどころかめっちゃ引いていた。めっちゃ。
悲しい。リアクションくらい取れよ。
わぁ!とかキャーとかさ。
「あ、そろそろ帰ってきたみたいなので逃げます!」
慌てて出ていった佐野を尻目に俺はロッカーに隠れ、
ミッション遂行の支度を整える。
佐野の言っていた通り、c組の生徒達が帰ってきているのが分かった。
楽しそうなしゃべり声。時折馬鹿笑いなども聞こえる。
これがリア充か…おぞましい。
俺はもう一度教室を見渡した。
散らかった机上、位置が乱れた机などもあったが、
やはり真っ先に尾坂の机が目に留まった。
机上は比べ物にならない程散らかっており、
いや散らかされているのかもしれない。
その机には椅子はしまわれておらず、机の近くを目で探してみても
その椅子はどこにもない。それを見ただけで俺は
何か痛んだ。
「あーあ、だる。なんなのぁの音楽の和美。無駄に授業長引かせんなよ。
ほんとだるいわー。」
「ほんとそれな」
教室に頭の悪そうな言葉を使う一つのでかいグループが入ってきた。
香水の匂いをプンプンと漂わせて偉そうにずかずかと歩いてくる奴ら。
一目でカースト上位の座に君臨していそうだと感じさせる。
やがて教室にはそれに続くようにc組の生徒達が帰ってきた。
あっという間に教室は静かな山の奥地から賑やかな
市街地へと変わった。そして最後に
みすぼらしい貧民、佐野が教室に入ってきた。
もう引き返せないな…