明けない夜はない。
ちょっと設定甘すぎ!
花城の話の聞いた途端、自分が臆病な人間だと気づいた途端、
この場から、花城から、自分から逃げ出したくなってしまった。
そして、逃げ出した。
深夜、花城が寝た事を確認し、一人で、こっそりと逃げ出した。
布団を畳み、置手紙を一つ残して逃げ出した。
闇の中、行く宛もなくさまよった。
住宅街には俺以外人一人いる気配がしない。
まるで気分は地球の侵略者。
俺以外の人間がこの世から消ええてしまったようで、
俺は案外この気分を楽しんだ。
いっそ本当にこの世から俺以外が消えてしまえばいいのに。
気づけば俺は知らないところにまで来ていた。
長い疲れもあってか、俺は
近くにあった公園のベンチに座り込んでしまった。
長い、長い夜には朝日が差し込もうとしている。
そして消えていく夜につられ、俺も深い眠りについた。
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最初に聞こえてきたのは自動車の走る音。
そして次に聞こえてきたのは俺の姉の声だった。
「光輝、あんた今までどこほっつき歩いていたのよ!」
「ご、ごめん…」
「どんだけ私を心配させれば気が済むの!」
心に突き刺さるような姉の声。
しかしそれを怒鳴り声、と呼ぶには程遠く、励ましているともいえない
そんな声。しかし、俺を助け出すにはすにはそれだけで十分だった。
車を運転しながら俺には叱りつけてくる姉の声は俺を温めさせてくれる。
俺が姉に助け出されたのはこれで何回目だろうか。
いつも、いつも姉だけが俺のすべてを知ってくれて、理解してくれる。
俺のヒーロー。俺のあこがれの人。
そしていつからか俺は姉のような人間になりたいと思い始めていた。
心の芯から優しい人間。
本物の優しさを持った人間。
少しでも近づこうと必死だった。
でも今その考えは変わった。
姉の叱りつける声を聞いて考えを変えた。
俺は気づいたのだ。
俺がこんな人間になれるはずがないのだと。
俺みたいな汚い人間が美しくなろうとしてもそれは
焼け石に水。以前の俺と何ら大差はない。
結局何も変わらないんだから。
だから俺はこう思った。
何も変わらないんだったらせめて
無駄に綺麗になろうとするのではなく、
もっと汚くなって、周りの人間をより綺麗に、美しくなってやろうと。
それが俺なりの美しさにしてやろうと。
引き立て役?ただのモブ?
構わない。もっと思ってもらっていい。
この瞬間、それは俺への誉め言葉、俺を美しいと認めているという事になる。
窓を見るといつの間にか太陽はてっぺんに上っていた。
俺も、空も、とっくに夜明けを迎えていた。