家出
ほのぼの回もたまにはいいでしょう!
どう間違えたら花城の家に泊まることになってしまうんだ。
正直あまり覚えていない。
かすかに覚えていたのは花城の可愛い上目遣い。
そして気づいたら花城の家の中。
眠気も吹き飛んでしまったよ。
隊長!上本二等兵。撃沈であります!
あれほど毛嫌いしていた女子にこうも簡単にやられてしまうとは…
アイドルの力は恐ろしいな。
「上本君、ご飯できましたよ」
「わざわざすまんな」
「気にしないでください。私が好きでやってるんですから」
「ご苦労なことで」
ニコニコと顔をほころばせて花城は手作りの、手作りのカレーを
運んできた。
おいしそうな香りが鼻腔をくすぐり、食欲を掻き立てる。
「食べていいか?」
「ま、待ってください。一緒に頂きますしましょ」
そういわれるがままに俺は花城と合掌し、カレーを食べ始めた。
「うま、てか辛!」
「そうでしょう。そうでしょう。このカレーは花城家代々伝わる
辛いけどおいしい激辛カレーなのです!」
よほど辛いといわれたことが嬉しかったのか、
嬉々とした表情で声を弾ませる花城はやっぱり可愛い。
こんな俺がこの笑顔を独り占めにしてていいんだろうか。
「確かに辛い。辛いが何故か食べるのをやめられんな」
「隠し味を教えてあげたいところですがこれは
花城家しか知らない秘伝の味ですから教えてあげるわけにはいきませんよ」
「はいはい、でもほんとありがとな、おかげで助かった。
てか花城の親は?男女2人屋根の下、ていうのは流石にまずくない?」
「今日は仕事で二人とも帰ってきませんから」
「それでもなぁ。というか自分でいうのもあれだけど
前俺結構ひどいこと言った気がするんだけど」
「あれはもういいんです。上本君があの時
ああいうしかなかったのは分かってます。
まぁ、流石に少し傷つきましたけど」
「そうか、ありがとな」
「いえいえ。それでは私は先にお風呂に入りますけど
上本君はどうします?あ、先に私の部屋に行って布団敷いておいてください。
布団は私の部屋の押し入れに入ってますから」
そういうと花城は風呂場のほうへと歩いて行った。
て、やばいよ!なんでそうなるの!
花城と同じ部屋で寝るとか、ほんとにやばいよ。
てか花城は男をなんだと思っているの?
男はけだものなんだよ!
とにかく落ち着こう。
俺は布団を敷いて寝るだけ。
そう、何も悪いことはしていない。
俺は悪くない。悪くない。
とにかくまずは布団を敷こう。
話はそこからだ。
そして俺が花城の部屋の扉を開けた時、事件は起きる。
この女の子特有の甘ぁい香り。
この香りが俺に襲い掛かってきた。
もう俺にはどうすることもできない。
このにおいを嗅ぎ続けるだけ。
くんかくんか。く、なんていい香りなあんだ!
そんな甘い世界から俺を引きずりおろしてきたのは
ふざけた音を立てて振動する携帯電話だった。
携帯を起動させると、そこには50件は軽く超えているだろう
メールが大量のメールが同時に送られていた。
送り主は…
佐野 尚美