罪
久しぶりですね
俺が姉から両親が帰ってくる事を聞いた途端、
俺の中で眠っていた黒い何かが動き始めた
ような気がした。
まず沸いたのは怒りだった。
それこそはらわたが煮えくり返るような、
黒い、黒い怒りだった。
しかし人間不思議なものでその怒りも十数分経てば消えた。
消滅した、とは言えないが、その怒りは今にもなくなりそうな
小さなろうそくのような怒りにはなっていた。
それからはよくわからなかった。
怒りではない別の何か。
今まで経験したことのない別の何か。
結局俺の感情なんて怒りを取ったら何も残らないのだろうか。
両親がこの家にやってくるまで、それだけが俺の心に残っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「君が…えっと、誰だっけ?」
「森本 杏香です」
「あ、そうそう。杏香ちゃんね。
やだねぇ。まだボケるような年齢にはなってないのに」
「はっはっは」
なんでこいつらは笑っていられるんだろう。
もう、昔の事はどうでもいいのか。
過去の事は切り捨てるっていうんだろうか。
ふざけんな。
しかしそうして訪れた怒りもやはり少し時間が経てば消えていった。
しかしそして残ったのは怒りでもましてはさっきの
よくわからないような気持ちでもなかった。
「光輝はどう思う」
「え、何が」
「まさか人の話を聞いてなかったのか」
刹那、本能的に危険だという信号
が告げられたような気がした。
「ご、ごめん」
「まぁいい。お前が俺達の家に戻ってくるかどうか、っていう話だ」
「そんな気はないよ。もう帰って」
「だ、だが」
「もう家に戻る気はないよ」
「6歳の妹だっているんだぞ、もう一度よく」
「だからないってんだよ、今日はもう帰って」
俺は残念がるあいつらをしり目に
一人家を出た。