おれが取り戻した日常
俺が入院していた間、学校では花城の事で話題は持ち切りだった。
まあ、そりゃ当然の事なんだが…
同学年で超人気の売れっ子アイドル。
人気にならない訳がない。
そんな一方で、世の中も花城ことで話題は持ち切りだった。
あの日起こったストーカー事件。
この事件を連日ワイドショーや全国ニュースでは面白おかしく
編集して報道している。
こんな事を報道するだけで視聴率が取れるのだから
世も末だな。まぁ、面白いんだけど。
なんだよあの再現CG。警官が勇敢に立ち向かいましたって。
さらに新たに見つかった新事実とか言って容疑者の自宅へインタビュー
しにいく。そして極めつけには偉そうになんかの専門家が警察が
どうのとか、花城の事務所がどうのとか意見を述べる。
どんな分野にも専門家がいるんだから驚かされる。
それなら俺も専門家になれるのかもしれない。
捻くれた人の専門家、とか。
とにかく最近のマスコミはどこかおかしくなったような気がする。
ハイエナのように面白いネタを探しては大げさに報道。
こんなのバラエティー番組のやらせのほうがかわいく見えるレベルだ。
ネタを見つけてはそのネタに関した事件を面白く報道。
世の中の関心が薄れたらまた新たなネタを探して報道。また報道。
例えば体罰。例えばモンスターペアレント。例えば…
数えたらきりがない。
そんな”ネタ”を必死に、視聴率の為に必死に探し回るマスメディアの姿は
俺からしたらとても滑稽なものである。
やっぱり世の中は腐っている。腐敗して悪臭がするレベル。
まあ、俺の行動が報道されなかったことには感謝だ。
という訳で俺は無事退院することが出来た。
横野先生からもしばらくは無理して
部活に来なくてもいいといわれている。
今日もいつも通り3時半退社だ。
いつも通り。取り戻された日常。
ちなみに今日で退院してから10日連続で部活を休んだことになる。
うん、無理しちゃいかんしな。無理しちゃ。
靴箱へ直行。なるべく人に合わないようにして…
「おい、上本。いつまで部活さぼるつもりだ」
あー、見つかった。俺があと15秒早く靴箱に行ってたら見つかることはなかったのに…
「無理しちゃいけないですし…」
「そういう意味で言ったんじゃない。それにお前、今日体育してたらしいじゃないか」
「だって一人で体育見学なんて嫌じゃないですか。気まずいし」
「まあ分らんこともないが…」
「ですよね、だから無理するわけには」
すると俺は横野先生にガシッと肩を掴まれた。
握力強いなー。この人。
「今日はこい、いいか、絶対だ。絶対」
しぶしぶ頷いて俺は部室のほうへ向かった。
流石にそう言われて帰るほどの不良ではない。
あくまで俺は優等生。優等生。ぶっちゃけ横野先生が怖いからなんですけど。
こうしておれが取り戻した日常は消えていった。




