初陣
コンコンコン
扉を叩く音が静かな朝の部屋に響く。
「はーい今行きますよー」
朝からやってきたのは、恐らく昨日家に来たガレウスだろう。
「返事は決まったか?リマエル」
「ああ」
「なら早速聞くとしよう」
「命令に従うよ、天使王直属騎士第二部隊に入隊する」
昨日カルマと話し合って決めた。
「そうか、なら今日この十億タースで、入隊にあたり、必要なものを備えに行ってくれ」
と言われ、手渡されたのは十億タース、入隊にあたり必要なものとは、装備などだろう。
「わかった、いつから部隊に行けばいいか教えてくれ」
「あぁ、三日後に大規模な、魔王軍の大軍が来るとの予想だ、それにカルマ殿とリマエルに、参加して欲しいとの事だ」
三日後かなかなか早いな、まあなんとかなるだろう。
「分かった、ありがとう」
私は軽く会釈する。
「では、これで失礼する」
ガレウスは家の扉を閉めて、帰っていく、ガレウスと入れ違うように階段を降りてきたのは、カルマだ。
「お姉ちゃん、おはよぉー」
あくびをしながら降りてくる
「うん、おはよう、早速だけど、ご飯食べたら、買い物行こっか」
「いいよ!でも何買いに行くの?」
「昨日、天使王直属騎士第二部隊に入隊するって言ったよね?そのための装備などを買いに行くんだよ」
「そーなんだ、分かった」
朝食を食べ終えて、街に出る私とカルマ。まず、魔法を撃つための、杖を買いに行く、
「ここだね」
私の行きつけの、杖屋だ、
「ここでは、カルマ、君にあった杖を探そう」
「どうやったら見つかるの?」
「そうだねー、まずは感覚かな」
そう言って、私の杖を見せる
「この杖、私は直感で選んだよ、見つけるというより、惹かれ合う感じかな、まっ、カルマもそのうち分かるさ」
「そーなのかなー?」
と言って、目をつぶるカルマ。
「どうしたの?」
そう言った矢先。
「あった!」
カルマが何かを見つけたみたいに、ある杖の所へ歩み寄る、
「これって、まさか・・」
そこにあったのは、初代天使王のニネシスの杖だった。
「この杖が、僕を呼んだの」
簡単に言うけど、そんなの本当に才能があるものにしか出来ない。話によると、初代天使王もこの位の歳に、この杖と巡り会ったそうだ。しかも、初代天使王は、最後の左利きの魔術師としてとても讃えられたとか。もしかして、と思った時だった。
「お客さんそれは、初代天使王の杖なの、結構高いけど、大丈夫?」
店員さんが来た。
「具体的にいくらぐらい?」
「そーね、値札によると、五億タースね、」
五億タース、その言葉にびっくりする。
杖は、高くても一億タースぐらいだ。それが五億タースって、高すぎませんか?
「ちょっと高いね、でも、この杖には色々と、初代天使王が残した付与が付いてるの。この杖が本当にあなたにあってるのなら、とんでもない魔術師の誕生だわ」
「試し撃ちとか出来るの?」
そう聞いてみた。
「はい、出来ますよ。こちらえどうぞ」
そう言われ、天使の集いのような、ドームに入った。
「では、存分に試し撃ちして頂いていいですよ」
店員さんがそう言ってから、カルマは詠唱に入る。
「今宵魔術は、完成する・・青く煌めく水の精霊よ、汝の力をここに示せ」
水魔法≪サブマージョン≫、杖があっているせいか、天使の集いの時よりも、格段に威力が上がっている。カルマが、次の魔法を詠唱する。
「今宵魔術は、完成する・・赤く蠢く炎の精霊よ、汝の力をここに示せ」
炎魔法≪アブレーション≫、やはり威力は上がっている
「お客さん!ストップ!店の壁が壊れます!」
その声を聞きカルマは詠唱を止める。壁を見てみるとヒビが入っており、今にも崩れそうだ。
「ごめんなさい」
カルマが頭を下げる。
「いえいいんですよ。貴方ほどこの杖にあっている人、始めてみましたから」
店員さんの言い方から推測するに、かなりの人がこの杖を、使ってみようとしたのがわかった。
「カルマ、この杖が君にあってると思うよ」
「そうかな」
「うん。店員さん、この杖買います」
「わかりました、ありがとうございます」
その後も色々買い物をして、防具などを買った。
そして、魔王軍到来の当日。張り詰めた空気の中、私達は天使王直属騎士第二部隊に向かう。
「カルマ、今日は絶対勝とうね」
「うん」
カルマも緊張しているのか、返事する声が少し震えていた。そして天使王直属騎士第二部隊に付く。
「おはようございます、カルマとリマエル来ました」
「貴方達が新しくこのたいに入った人達ね、初めまして、私はこの隊を率いています。タセロ、と申します。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「お願いします」
優しげな人だと思った、だがその目は少し、切なそうであったことに、私達は気づかなかった。
「簡単にこの隊の説明をします。この隊は、天使王直属騎士の中でも、最前線で戦う部隊です。一度戦場に行ったら、帰ってこられる保証は出来ません。」
まぁ、戦場ならそうだろうな、しかも、最前線てことは、余計に生存率は下がる。
「そこまではほかの舞台と変わりません、最前線、というのを省けば、ですが、この隊には、一つ特殊なところがあります。それは、二人一組で戦うということです」
二人一組、だと?そんなことできるのは、よほど信頼している者同士でないとできないぞ。そう思った時、なぜ私までこの隊に呼ばれたかが分かった、カルマと私をペアにさせるためそうしたのだろう。
「後一時間で魔王軍の大軍が来ます。準備に入ってください!」
「わかりました」
タセロの声を聞き私達は、準備に入る。そこからの一時間は、私が生きている中で、一番早かったかもしれない。
「カルマとリマエル、準備完了しました」
「わかりました」
魔王軍到来まで、後十分、そろそろ魔王軍が見えてきてもおかしくない時間。張り詰めた緊張感が一人の声でかき消される
「進軍しろー!!」
天使王直属騎士第二部隊隊長のタセロの声だ。その声を聞き第二部隊隊員が、我先に、と声を出し前進する。この隊に戦略などない、自分の力の全てを尽くし、命に変えても敵を倒す。・・ただそれだけだ。
私達も、前進し、ついに、魔王軍との全面戦争が始まろうとしていた。その時の私達に、不気味な笑を浮かべる者がいるとは、知らず。




