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天使の狂想曲  作者: ムイミ
3/5

カルマの力

魔力の質や量、得意な系統魔法が分かる研究所、天使の集い、今まさに空前絶後の魔術師が誕生しようとしていた。

「じゃあ、始めるよ」

おば・・お姉さんの掛け声とともに、名前を書き、髪の毛を包んだ紙を右手に持って目を瞑るカルマ。すると、すぐに変化は起こり始めた。右手に持った紙が赤く燃え上がったり、水が滴り落ちたり、氷で包まれたり、バチバチッと音を鳴らし雷がカルマの手を伝ったり、サラサラとした土が紙から出て来たりと、全ての魔法の特性が出ていた。

「こりゃ驚いた、じゃあ次は、魔力の質や量を測定するよ。この剣を握って、さっきの感覚で目を閉じな」

言われた通り剣を握り目を閉じる。すると、剣にしっかりと魔力が#付与__エンチャント__#され、しかもその魔力の幅が広い。

「あんた、凄いねー、これだったら最初っから、上級魔法撃てるんじゃない?」

「かもしれないね、カルマ、私の言ったことを繰り返してみて」

「うん」

カルマの返事を聞き、私は術式を詠唱する

「今宵魔術は、完成する・・赤く蠢く炎の精霊よ、汝の力をここに示せ」

炎魔法≪アブレーション≫だ、いくらカルマの魔力が凄くても、最初っから上級魔法は不安だ

「カルマも詠唱してみて」

「わ、分かった」

緊張した面持ちでカルマは詠唱する。

「今宵魔術は、完成する・・赤く蠢く炎の精霊よ、汝の力をここに示せ」

炎魔法≪アブレーション≫を撃った、その刹那、一本の火柱が私の横をかすめていく。

「へ?」

そんな気の抜けた声が出てしまった。下位魔法でこの威力は、大天使と同等くらい、いや、それ以上かもしれない。

「お疲れさん、坊主、あんた頑張ったらもっと上目指せるよ、んじゃ、期待してるよ」

お姉さんの言葉を聞き、帰る途中のカルマと私。

「カルマ、そのカード見せて」

カードとは、得意な魔法の系統や、魔力の質や量が書いてあるものだ。ちなみに私のカードのランクはこうだ。

総合 C+

魔力の質 B-

魔力量 C

得意な魔法 炎

だ。それに比べてカルマはと言うと。

総合 A++

魔力の質 S-

魔力量 A+

得意な魔法 全て

だ。幼いのに、その魔力の質は、大天使顔負けだ。

「カルマ、帰ったら、色んな術式覚えようか」

「うん!」

気合い充分、カルマの大きな返事が、夕焼けで赤く輝く街に響き渡る。

それから、カルマに魔法を教えた

「お姉ちゃん、質問」

突然質問をして来るカルマ。

「何?」

「なんで魔法撃つときの詠唱中の文に、魔術って入ってるの?それと、なんで魔法使う人のこと、魔術師っていうの?魔法使いじゃないの?」

「あーそれね、詠唱中の文に、魔術って出てくるのはね、昔この魔法を作った人達の時代はね、魔法を魔術って言ってたの、その名残で、魔術って出てくるの。それと同じで、魔術師も昔の名残り」

「へー、そーなんだ」

「魔法を使う時に、何千何万年も受け継がれてきたって思ったら、力が湧いてくるかもね。ん?もうこんな時間か、カルマ今日はもう寝よう」

「分かった、おやすみ」

「うん、おやすみ」

カルマは、疲れていたのか、すぐに寝息を立てる。暗い部屋の中、ふと思ってしまった。この子は、本当に何者なのだろうと、ここに居るべき者なのだろうか、そんな雑念を、頭を横に振り払い除ける。

「今日はもう寝よう」

私は、自分に言い聞かせた。

子鳥のさえずり、穏やかな朝の出迎え、今日もいい日になりそうだ。

「カルマ、おはよう」

さあ朝食でも作ってみるか。鼻歌とともに、ジュウと言う心地よい食材の音、だがその音は、急な来客によって潰される。

「カルマ殿はいるか!!」

「何の用ですか?」

そこに居たのは、天使王の直属騎士第五部隊隊長のガリウスだった。

「!!貴様は、リマエル!大天使メリラス直属騎士のお前がなんでこんなところに」

「先週クビになったよ、で?カルマに何のよう?」

「あぁ、天使王様からの命令で、カルマ殿に、天使王直属騎士第二部隊に入れとの事だ、それとリマエルも一緒にと、言っおられる」

「私とカルマが天使王直属騎士第二部隊だと?!」

天使王直属騎士第二部隊、そこは頻繁に部隊が編成されている部隊だ、噂だど、対悪魔戦で第二部隊だけ死者が多いとか、言う説もある。とにかくやばい部隊だ、

「明日の朝、返事を聞かせていただきたい」

「・・・分かった」

「なら、明日の朝、この時間にもう一度尋ねさせていただく」

・・・どうしたものか、天使王直属騎士への誘い、断ればカルマはともかく私は、確実に殺される。

「お姉ちゃん、おはよぉー」

まだ眠たげな声が聞こえて振り返る、

「カルマおはよう」

眠たげな目を擦り階段を降りてくる

「お姉ちゃん、なんか元気ないね?」

「そんなことないよ」

苦し紛れの言い訳だ、正直どうしたらいいか分からなくて、頭の中がゴチャゴチャだ。

「カルマ、ちょっと話があるんだ」

そう言って私は椅子に腰掛ける、まず、何から話したものだろう、

「カルマ、分からないかもしれないけど

私達は天使王直属騎士第二部隊っていう所に行けと天使王様から言われた。簡単に言うと、危ないところに行かなきゃならない、恐らく君の魔力の質や、量を知ってのことだろう。君一人なら何とか逃がすことができる、君はまだまだ将来がある、私の命に変えても、君だけは守り抜く・・だから・・」

言葉に詰まってしまった。

「・・だ」

「ん?なんだい?」

「やだって言ったんだ!あんまり話はわからないけど、お姉ちゃんと、離れるのはやだ!お姉ちゃん一人が嫌な思いしなきゃならないのもやだ!」

なんか泣きそう。

「カルマ・・ありがとう」

「うんん、僕はただお姉ちゃんと一緒にいたいだけだよ」

「天使王様の命令に、従うってことかい?」

「そーゆーことだと思う」

「フッ、そーかい、なんか元気になったよ、じゃ、今日も思いっきり楽しーもー!」

「おーー!」

夜が開けたばかりの街に二人の楽しい声が響いて行く。

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