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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第六章 ~ アサシン ~
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[19歳] 捜索パーティ、北へ

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 ぼくたちはいましがた武具やで買ったばかりの装備品を手にギルド酒場に向かおうと部屋を出ると、他のメンバーたちはもうとっくに準備が完了してて、ギルドのドア前にスタンバってた。


 痴話喧嘩して出て行った残る二人のメンバーが来るのを今か今かと待っていたらしい。


「おおディム、遅かったじゃないか。もうみんなスタンバってんぞ!」

「時間には間に合ったじゃん」


 もともと一人メンバーを失ったことで予定を大幅に遅れているとのことで、いますぐ出発して少しでも遅れを取り戻したいらしい。


 まずパーティのリーダーはプラチナメダルのデニス・カスタルマン以前のまま引き継ぎ、捜索に関することについてはディムに一任されるという決めごとをした。要するに、捜索する地域に入ったらディムの指示で動くことになる。


 しかしディムとカスタルマンとは喧嘩どころか闘争になってしまって、仲間のうち一人を死なせてしまったという責任もある。このパーティの居心地の悪さといったら、まるで蛇の穴で眠るかのようだ。

 お友達ごっこするわけじゃないので、仕事だけしっかりしてくれたら文句はないのだが。


「遅くなってしまったが自己紹介しておく。デニス・カスタルマン。カスタルマンなんてお堅いラストネームで呼ばれるより、気軽にデニスと呼んでくれた方が嬉しい。授かったアビリティは【騎士】だ。首都サンドラのギルドでプラチナメダルの傭兵マーシナリーなどしてメシを食ってる。急造のパーティで力不足なのにリーダー面することを許してほしい」


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□デニス・カスタルマン 49歳 男性

 ヒト族 レベル048

 体力:41880/42020

 経戦:B

 魔力:-

 腕力:A

 敏捷:C

【騎士】B /片手剣B/盾術B


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 自分の所属するギルドメンバーと組むときはアビリティなんてわざわざ言わないものだが、他ギルドとの合同パーティとなると自己紹介の時に自分の力がどれだけのものかを示す目安として、アビリティを申告するのが通例なのだそうだ。双方に鑑定眼があるんだからアビリティやらスキルやらの紹介は要らないのだけど。


 デニス・カスタルマン、この人に期待するのはレベルよりなにより、生え抜きの冒険者ということで経験豊富なところだ。せっかくレアで将来有望な騎士アビリティを授かったというのに騎士にならず冒険者などという職業についている。ダグラスもそうだが、つまりどっちかというと戦士に近い騎士だ。


 装備品は盾持ち片手剣で、歩兵なのにカイトシールドという下方が細く尖っている形状の盾を装備している。

 この形状の盾はもともと騎士が馬上で使いやすいよう、馬の横腹にあたる部分を削った形状だが、これが歩兵でも剣を振るのに、足を一歩踏み込んだりする時邪魔にならない形状なのと軽量化も期待できるため盾持ちで動きの鈍い騎士が、機動力を持って戦線に参加する戦術に組み込めるようになった。




「えっと、僕はハイデル・ショーラス。【神官】アビリティを持っていて教会で『回復魔法』を学んだけど教会関係者じゃないです。よろしく」


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□ハイデル・ショーラス 28歳 男性

 ヒト族 レベル026

 体力:19442/19960

 経戦:C

 魔力:D

 腕力:E

 敏捷:E

【神官】D /回復魔法D/鈍器E/盾術F/薬草調合C


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 この言葉少なに自己紹介をしたショーラスさんてひとは、恐らくディムのことが苦手なのか、それとも嫌いなのだろう。あんまり目も合わそうとしない。思えば初対面からして最悪だった。


 『鈍器』は特に難しい技術なしに高い威力を出せるから魔法職には人気の武器だ。教会関係者だったら刃物を持つことを禁じるという戒律のせいで鈍器しか持てないという制限もあるようだが、この男はきっぱりと否定した。きっと教会関係者だと思われるのがイヤという理由があるのだろう。



 そしてエルフの魔法使い。


「わたしはプリマヴェーラ・シャデイレン。見ての通りエルフよ。こう見えて年齢はそこそこいってるの。42歳だけど、年齢なりの敬意を払っていただければタメ口でもいいわ。【魔法使い】アビリティに恵まれて炎と風の魔法を使います。あと『鑑定眼』のスキルを持っているから見ただけで敵の強さが分かるの。だから敵と戦う前の忠告などは聞いてほしいですけど、ディミトリさんにも似たようなスキルありますね」


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□プリマヴェーラ・ハーレ・シャデイレン 162歳 女性

 エルフ族 レベル062

 体力:45090/48420

 経戦:C

 魔力:A

 腕力:E

 敏捷:C

【魔法使い】B /炎術A/風術C/鑑定眼C/弓術C


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 いけしゃあしゃあと42歳って嘘ついたエルフのプリマヴェーラさんだが、エルネッタさんもさすがにこの人のトシの話をする時だけは空気を読むようで『嘘だ』とは言わない。


 エルネッタっさんのほう見たらなぜかキッと睨まれた。

 言うなってことだろうけど、もし、万が一、この二人が組んで年齢のことをあれこれ言い始めたらうざいことこの上ない。年齢なりに敬意を払おうとすると、仙人さまのような扱いになりそうだ。


 もう見た目から魔法使いっていう出で立ちも何とかしてほしいのだけど、フル装備つけたエルネッタさんもいることだし、いくら頑張ったところで、旅をする一般人には見えないのだから、魔女装束には触れないでおこう。どうせケスタールより北に行けばもう出会う奴は敵だと考えて差しさわりがない。



 こっち側の3人はみんな交互に顔を見合わせ、エルネッタさんから自己紹介することに決まった。

 目配せだけで決まるのに戦場でのコンビネーションには使えないという誰得な特技だ。


「えーっと、まあ不幸な事故はあったが、わたしはエルネッタ。他に名前があってもエルネッタと呼んでくれ。アビリティは【聖騎士】を持ってて、盾はこんな大盾スクトゥムしか使ったことがないけど、時代遅れの騎士道をうんたらかんたら垂れる気はないから安心してくれ。わたしは守るほうが得意だから守りの配置をしてくれたほうが存分に働ける」


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□ディアッカ・ライラ・ソレイユ 29歳 女性

 ヒト族  レベル049

 体力:63322/62400

 経戦:S

 魔力:E→D

 腕力:S→SS

 敏捷:C→B

【聖騎士】A /片手剣A/短槍S/盾術S/両手剣D


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 いにしえの勇者の血を引くというエルネッタさんのステータス、言うまでもなくレベルの割にはムチャクチャ高い。

 ディムが13歳の頃、セイカ村を襲った獣人たちの中で、ひときわ強かったレベル62の刺青オークの腕力がSだったことを考えると、ヒト族の女性としては破格の強さだ。


 たぶん【聖騎士】というアビリティのおかげもあるのだろうけど、勇者の血縁もあるのだろう。


 破壊力ってのは、腕力にどれだけスピードを乗せるか(+敏捷)、それにどれだけ体重を乗せるかってことだから、エルネッタさんはオークと比べると体重で劣る分、スピードが勝っている。単純な破壊力としてはいい勝負なのだろうけど、エルネッタさんには正確無比な突きという武器がある。オークの戦士とタイマンでケンカしたなら、ステータスの総合力で圧倒して、たぶん殴り倒すぐらいの差はついているとおもう。大斧を力で叩きつけるような精度の低い攻撃をしてくるオーク戦士を相手にするのなら、あまり不安はない。


 では何が心配なのかというと獣人どもの数だ。奴らは大勢であるがゆえに手に負えないのだ。


 エルネッタの自己紹介を聞いて、見送りに出ていたアルスは空いた口が塞がらなくなった。

「あああああ? ちょ! マジか。エルネッタマジで【聖騎士】なの? 知らなかった。希少な騎士の更に上位の激レアアビリティじゃないか。なんでそんな上等なアビ持っててこんなトコで傭兵なんかやってんだ……」


「アルスお前も来たそうだな? どうする500万ゼノの依頼だが……」


「マジか! いくいく! 俺も行っていいの? いいなら行く。500万あれば1年は遊んで暮らせるからな」

「アルさん、獣人の支配地奥深くまで行くんだけど、興味あるの?」


「獣人? ああっ、ダメだ……急に腹痛が……」

「ディム、あの苦い薬をってやれ! 腹痛は一発で治る」

「足があああ、なぜか激しく足が痛みだした。俺もう歩けねえ!」

「あ、じゃあぼくがおぶっていくから大丈夫だよ?」


「ごめんなさい、俺が悪かった。いまの話はなかったことに……」

「おいディム、脅かすからアルスが逃げたじゃないか。せっかく捨てて来ようと思ったのにな」

「ひでえ! マジひでえ!」


 見送りにきたアルさん渾身のアドリブコントがそこそこ受けた。

 アルさんのネタで受けるなんて珍しいこともあったものだ。だいたいは激しく滑る。


 だいたいこういう時は、ちょっとでも古株のディムが、エルネッタさんの次に自己紹介するんのだけど、騎士繋がりということで、ダグラスに順番を譲った。



「ダグラス・フューリーだ。つい先月まではフェライの街でゴールドメダル背負ってたんだが、幼馴染のディムんとこに遊びに来たらいつの間にか移籍したことになっちまって……。まあ構わないけどな。これから行く獣人支配地域は俺たちの故郷だから、土地勘もある。地理的なことでも頼りにしてもらっていい。アビリティは【騎士】で申し訳ない。騎士ばかり3人いてもつまらないだろうから俺は二刀を持って攻撃を担当したい」



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□ダグラス・フューリー 19歳 男性

 ヒト族  レベル048

 体力:49940/50550

 経戦:A

 魔力:E

 腕力:A

 敏捷:C

【騎士】A/片手剣A/両手剣A/盾術B


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 ダグラスは盾を捨てた騎士。でも盾術Bという熟練度はパーティリーダーのデニスさんと同等なんだから盾を持った方がいいかもしれない。

 重くてデカい両手剣を片手で軽々振る独特の戦闘スタイルだけど、それでも片手剣を振るほどのスピードは出せない。格下相手ならそれで通用するかもしれないけど、獣人相手だと出たとこ勝負だ。




「ぼくはディム。ディミトリと呼んでくれてもいいし、ディムでもいい。ダグラスとは同郷で幼馴染だけど、ぼくは村からあんまり出なかったから土地勘あるのはセイカ周辺だけ。でも『追尾』スキルを持っているので、捜索は得意です。ぼくのアビリティはこんな人の多いところじゃ言えないので勘弁してもらっていいですか?」


「ああ、プリマヴェーラが見てるし、キミの実力は知ってる」


「よっ! 羊飼いっ!」

「アルス、おまえやっぱいっぺんオークに頭殴ってもらうか?」

「違うよアルさん、ぼくの【羊飼い】はランクアップしたんだけど?」

「ヤギになったってオチだろ?」

「ひどいよ、なんで言うかな! せっかくの自虐ネタが台無しじゃん!」



 アルさんやギルド長、チャル姉たちに笑顔で見送られ、ディムたちパーティは北を目指す。

 20日以上前、勇者パーティが立ち寄ったという王立騎士団の前線基地、ケスタールへ向かう。


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