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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第五章 ~ 悪魔憑き ~
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[19歳] 完全アウェー

「第48部分 [16歳] 隠し事が無くなったら付き合おう」に挿絵を入れておきました。

サンダースが走って帰ったあと、夜景を見ながら話すエルネッタさんのイメージです。

お暇でしたらちょっと読み返してみてくださいまし。



 溜息ためいきが出る。

 たしかに探索者シーカーと誘拐犯が手を組んだら考えることも技術もなにもいらなのに大金が転がり込むだろう。


「ケッ! イチャつきやがって……」


 すれ違いざまに小声で嬉しい捨て台詞を吐いて、尾行者たちはディムとエルネッタを追い抜いて素通りし、そのまま奥に向かって歩いていった。

 尾行してるとき、下手にこんな路地へ突っ込むから対処できないことが起こるんだ。


 このままべったり背後について一緒に歩いてやりたいけど、攫われた子どもたちが心配だ。せっかく意地悪してやろうかと思ったけどここはグッとこらえることにする。

 まだ屋根の上から見てる二人の狙撃手たちは動いてない。じっと固唾を飲んで監視してる。


 いきなり襲い掛かってこなかったということは、ディムたちが追跡者でないなら、わざわざ相手にするリスクを避けたということ。つまり、こっちが気付いてるってことに、相手は気付いてない。


 ここに来たのもラブホ目当てだと思ってるんだ。



 目撃された不審者、カリウス・フォンダの足跡はちょっと内股に歩いてるのが特徴……っと。

 ゲーリー・キュイラスのほうは左足を痛めてるのか? 左と右とで歩幅が違う。まあ、どっちにせよ二人の足跡は覚えた。


 さすがに背後に着かれたら気持ち悪いのだろう、追い抜かされた二人は、次の角を右に曲がって視界から外れるや否やダッシュしていく足音が聞こえる。またぐるっと回っての背後にまわり込む気なのだろう。屋根の上の狙撃手は二階建ての建物の屋根だったり、屋上だったり。心音まで聞こえたらいいのだけど、まだそこまでスキルが成長してない。足音が止まった位置から動いてないんだから、まだそこにいると考えたほうが安全だ。


「ん。エルネッタさん、今日のところは宿に泊まろう」

「へは? ダメだここは……」


「なに言ってんの? 子どもみたいに。だいたいワンルームの部屋で6年も同棲してる男と宿に泊まるのが恥ずかしいなんてどうかしてる」

「子どもみたいでわるかったな! だけどダメだ。ここは、あの、なんだ。えっと……」


「エルネッタさんどうしたの? 何が言いたいの?」

「だから! ここは、あれだ、あれ。その、ほら、ディムお前、ちょっと言えないけど、ここはあれだ、普通にわたしたちが入って、眠るようなところじゃなくてだな……」


「そうだよ、エルネッタさんよく知ってんじゃん。誰かと来たことあるの?」

「ないわっ! こんないかがわしい宿に近付いたこともない!」


「大丈夫だよ。何もしないから」

「うそだ! その顔は嘘ついてる顔だ! ダメだダメだ……」


「ほらほら、演技がリアルすぎるじゃん、大丈夫だって、ちょっと中に入ってみたいだけだから」

「お前それも嘘だっ! この……」


「汗かいたしお風呂に入りたいし、ちょっとエルネッタさんの身体メンテナンスしておきたいし、ちょっと靴が合ってないような気がするし、軽く何か飲みたいしセックスしたいし、それに屋根の上にいる奴らどうにかしないとぼくたち身動き取れないでしょ?」


「そ……そうか、それなら仕方ないな。……あれ? もう一度言ってくれ、なんか変なの混ざってなかったか?」


「ええーっ? なーんも混ざってないってー、エルネッタさんほんと疑り深いんだから」


「おかしい。ディムがニヤニヤしてる。わたしはもう帰りたい……」

「まだ屋根の上から見張られてるんだから、入るよ。ほら。入るところを見せないと、あの人たち動かないからね。それにキスを貰えなさそうだから穴埋めって必要でしょ?」


「穴埋めってお前……、ちょ、ちょっ、マジでわたしがここに入るのか?」


 手を引いてそのまま宿に連れ込んでやった。最初は抵抗してたけど、中に入ったあたりから観念したみたいで、すんなりと……。なんだかドキドキしてきた。


 部屋は三階の、角部屋を選んだ。


 ロビーで鍵を受け取り部屋に入ると中は落ち着いた様相など一つもなく、黒い壁紙に星のようなプリントがされていて、ピンクのいやらしいローソファーに合わせたローテーブル。上には次回使える割引券があって、ソファーの向こうにはベッド。でっかいダブルのベッド。ティッシュ完備。ゴミ箱完備。枕元からライトのコントロールや有線ミュージックの操作盤がついてたらラブホそのものだけど、この世界にそんなものは無いし、避妊具も備えつけられてはいない。


 エルネッタさんは座ったら尻と背中にピンクが色移りしそうなほどケバケバしいピンクのソファーの、いちばんベッドから遠いカドに腰を下ろして、ちいさく丸くなってる。



 さてと、またややこしいことになってるエルネッタさんのことはおいといて、さすがに連れ込み宿は窓が木でできてて外の景色は見えない。だからちょっとだけ隙間を空ける必要がある。


 まずはランタンを吹き消して部屋を真っ暗にする。どんな暗闇でもディムの目には暗闇ではないのだけど、これは窓の隙間から明かりが漏れないようにするためだ。

 中を真っ暗にすることで窓が開いても、外からは窺ってることが分かりにくくなる。


 まあ尾行の対象者が建物に入ったんだからあとは出口を押さえるのがセオリーだけど、ふむ。屋根の上にいた狙撃手ふたりは合図があって撤収準備をしている。普通ならどの部屋に入ったか調べるのに誰か残して行くはずだが、そこまで考えてないらしい。


 ってことは、無事に尾行は外れたと考えてよさそうだ。


----------


□ハンマ・ターナー 31歳 男性

 ヒト族 レベル028

 体力:15372/20850

 経戦:D

 魔力:-

 腕力:D

 敏捷:D

【狩猟】D /弓術D



□カッチ・ケイレブ 36歳 男性

 ヒト族 レベル027

 体力:16650/20300

 経戦:E

 魔力:-

 腕力:D

 敏捷:D

【狩猟】E /弓術D



----------



 屋根の上から狙撃するため狙っていたのは、ハンマ・ターナー。

 さっきギルド酒場でエルネッタさんに絡んだ(絡まれた)探索者シーカーだった。

 まさかギルドの探索者シーカーが揃ってグルだったとは、予想の斜め上をいかれた気分だ。


 あの野郎、エルネッタさんを弓で狙ったということだけでもう万死に値する。


 しかし完全アウェーだと思ったらそれ以上だったとは。

 身内というか、かギルド揃ってぜんぶ敵って可能性も考えないといけなくなった。

 さすがに指名してくれたギルド長まで絡んでるとは考えにくいけど、ギルドの支援がちっともアテにできなくなった。


 行方不明になった子どもたちは気の毒だけど、帰りたくなってきたというのが正直な感想だ。


 さてと、あいつら帰ったから監視が外れた。尾行も外れたと考えていい。


 ディムとエルネッタが連れ込み宿に入ったことで、奴らきっとお楽しみだと思っているに違いない。

 だから本当に楽しんでしまいたいところだけど、



 どうやらまたエルネッタさんの言う『病気』が発症しているらしい。


 しおらしい。可愛らしい。このままベッドに押し倒してしまいたい。それに休息地からの帰りにちゃんと宣言したはずだ。次こんなことになったら我慢しないって。


 ふたり裸になってベッドで寝技格闘の実戦でも繰り広げてやろうかと。そう思ってるところだ。


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