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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第五章 ~ 悪魔憑き ~
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[19歳] 挙動不審

「では取り急ぎ、簡単に説明していくからな、わからないことがあれば質問してくれ」


 先月の5日。つまり約1か月前に行方不明になった『キャンディ・ヘイス(8)』の家は小さな服飾店を経営していて生活はそこそこ裕福。両親と2人の兄がいて、長男は15歳、首都サンドラで学生をしている。


 町に暮らす人たちの経済状況では、遠く離れた首都サンドラで15歳の成人を学生として養えるほどの経済力を持つ家の事を『そこそこ』というらしい。

 田舎育ちのディムには『むちゃくちゃ裕福』にしか思えなかった。



 先月14日、夕刻前にマーケットで遊んでた『ティンク・キンドル(6)』はそこのマーケットで露店を出してる母親についてきて、あちこちの店を回って遊んでいたのだろう。夕刻前というのは行方不明になった時刻ではなく、娘がいないことに母親が気付いた時刻だ。父親もマーケットで別の店を出していて忙しく、子どもから目を話す時間が長かった。両親揃って繁盛店を切り盛りしていたところ、娘が居なくなった。


 先月28日、午後半に自宅近辺で居なくなった『アリス・セイラー(9)』は母親は主婦で家事全般をしていて夫は役所勤めの役人。母親は若くて24歳ということだ。

 エルネッタさんに会わせたら機嫌が悪くなりそうだから、できるなら会いたくない。アリスが行方不明になった日の昼頃、この居住区では不審者が目撃されている。


 つい3日前、行方不明になったのは『ディミトリア・カンザス(4)』と、この子が最年少。

 両親は小さな雑貨屋を経営していて、母親が接客してる間に、すぐ店の前にいたはずの女の子がいなくなった。そのときの客と言うのが40歳ぐらいの男で、先月28日に行方不明となったアリス・セイラー(9)の自宅近くで目撃された不審者と似ているという。


 不審者は身長180センチぐらい。茶色のくせっ毛で肩に届くほどの長髪。眉が太くて、ぎょろっとした大きな目が特徴。大柄なのに猫背で姿勢が悪い。接客した母親の話だと、物腰は柔らかいけど、店の外まで聞こえるような大きな声で話すのが不自然だと思っていたらしい。



「ギルド長さん、ちょっと疑問なんだ。人身売買だったらギルドに依頼するお金のない貧しい人が狙われるよね? 行方不明になった子どもたちはみんな裕福な家の子らじゃん。こんなの普通に考えれば営利誘拐なのに、なんで人身売買の可能性があるの」


「身代金の要求がないんだ。知っての通り、身代金の要求があるとしたら、家族がギルドに依頼する前、つまり、子どもを攫ったその晩に接触があるんだ。しかしそれがない。誰一人としてないんだ」


「ってことは、誘拐かどうかも分からないってことだよね? この子ら同士は面識あるの?」

「行方不明になった子どもら同士については、正直分からない。だが商人の3家族は面識があって、役所勤めのセイラーさんは面識なしだ」


「まだ時間は早いから、家族に話を聞いた方がはやいよね、いちばん近いのは誰かな?」


 ディムが席を立とうと椅子を引いたとき、ギルド酒場に男が二人入ってきた。

 一人はなんだか小柄で小太り、大人しそうな人で、もう一人は目つきもガラも悪いチンピラ風の男だ。


「おおっと、こいつらはうちの探索者シーカーで、主力なんだ。紹介しよう、ターナーとセングルだ……。おいお前ら、何か分かったか? 手がかりは?」


「あーなんもねえ。もう売られちまったんじゃねえか?……ん? 女が相談に来てる? もしかしてまた子どもが居なくなったのか?」


「おいおい、この人たちはラールから来てもらったゴールドメダルの捜索者サーチャーなんだぞ、お前より格上だからな。敬語を使えとは言わないが敬意を払え」


「はあ? ラールに応援要請って今朝の話じゃなかったのか? 俺たちが無能なばっかりに遠いところご苦労さんです。早えお着きでアリガトさん。ラールってなあヒマそうで羨ましい。で、どっちがゴールドなんだ? 姉ちゃんか?」


「どっちもAランクのゴールドだ。で、キミは何色なのかな?」


「おおっと、悪かった悪かった。俺のようなブロンズメダルのCランクなんて屁みたいなもんですよねー。邪魔しちゃ悪いんでビアーでも飲んだら帰るわ」


 ターナーという男は悪態をつくだけついて名乗りもせず背を向けてカウンターに座った。注文したビアーを飲むらしい。まだ宵の口だというのに仕事は終わりだとでもいうのか。捜索の仕事ならいくらでもやることはありそうなんだけど。



----------


□ハンマ・ターナー 31歳 男性

 ヒト族 レベル028

 体力:15399/20850

 経戦:D

 魔力:-

 腕力:D

 敏捷:D

【狩猟】D /弓術D



□タクト・セングル 29歳 男性

 ヒト族 レベル029

 体力:18857/23500

 経戦:D

 魔力:-

 腕力:C

 敏捷:C

【狩猟】C /短剣C /足跡消しC


----------



「空気わるいなあ、ぼくたち歓迎されてないよねえ……」

「そりゃそうだ。地元の探索者シーカーが役に立たないからってヨソ者が呼ばれたんだからな」


 完全アウェーだった。

 探索者シーカーだけじゃなく、荒くれ者たちの視線も冷たいその理由がやっとわかった。


「おい! いま役立たずって言ったかコラ!」


「あははは、悪かった悪かった。さすが探索者シーカーさんだ、内緒話にも耳をそばだててるらしい」


「もうこれだ! なんでケンカになるのさ。やめなよエルネッタさんも……」


「わははは、やめなよーえるねったさんもー……だってよぉ、お前男みてえなナリしてっけど女だろ、ケツ貸してみろや、どっちでもいいぜ? 姉ちゃんが相手してくれんのか? じゃあ今夜、俺のベッドにこいや。ヒイヒイ言わせてやっからよ」


 ガタタッ……


 無言で席を立つエルネッタさんを強引に引き留める。


「ディムは黙ってろ。売られたケンカだ」

「ちがうよね、エルネッタさんがケンカ売ったよね」


「悪かったって言ったじゃん」


 こんな荒くれ者の溜まり場でそんな形式的な謝罪が受け入れられるわけがない。

 『あははは、悪い悪い』なんて笑ってたんじゃバーカバーカって言ってんのと同じだ。

 だけどここがエルネッタさんの強情なところで……。なかなか引かない。いざとなったら無理やり担ぎ上げてギルドを飛び出したほうが面倒がない



「ねえギルド長さん、止めてもらえませんかね? 素手でも死人が出ますよ。ぼくたちとケンカするには、あの人たちじゃ力不足です」


「んだとこのガキァァ!!」

「あははは、よく言った! こいつぁいい……最高だディム」


「ターナー! やめないか。この人たちはギルドの客人だ。敬意を払えと言ったはずだぞ。おたくらも控えちゃくれないかね? 仲良くしてくれとは言わないが、ケンカになっちゃ仕事しにくくなるだろう?」


「ケッ……ギルド長がそういうなら仕方ねえ……」


 さすがにギルド長の鶴の一声。酒場の中がシンとなった。


 それはいいとして、ディムは一つ気になったことがあった。


「ギルド長さん、あっちの人は?」


「セングルか? セングルはうちのホープだな。けっこういい腕の探索者シーカーなんだ。この夏には攫われてしまった子どもを発見してるからな。まだCランクのブロンズだが、Bランク昇格は近い」


 セングルという男、小柄で小太り、気弱そうなおかっぱ頭で、女の子にはモテなさそうな顔立ち。身長は155センチぐらいか。でも探索者シーカーとしては腕がいいらしい。


 探索者シーカーのセングルはディムと目が合うと、ささっとよそ見をするようで居ながら、横目でキッと睨みつけ、「今日は疲れたから俺は帰るよ」と言ってギルド酒場を出て行った。


 ターナー氏とセングル氏。この二人も探索者シーカーで、今回の連続行方不明事件を追っている。 ディムとエルネッタは、この二人からすると商売敵しょうばいがたき、つまりライバルだ。

 生活が懸かってる以上、仲良く情報共有なんて虫のいいことしてもらえないのだろう。子どもの安全を第一に考えてやって欲しい所なんだけど。


「さてと、じゃあぼくたちも手がかりを探しに行きますか」

「あはははは、わたしにはどうしたらいいかサッパリだ。ディムのあとをついていくよ」


 椅子から立ち上がり、酒場エリアからギルドエリアに移動したところで、エルネッタさんの知り合いなのだろう、男性から声を掛けられた。


「ああっ、あなたは……。ギルドの方だったんですか」


 エルネッタさんに挨拶する男性が見えると、エルネッタさんもペコっと挨拶した。


 なぜだろう、エルネッタさんがしおらしい。さっきまでのケンカ腰は音を立ててしぼんでいったようで、静かに無言で頭を下げてる。いったいどうすればそうなるんだ? この男、年齢は30歳ぐらいに見える。トシはエルネッタさんと同じぐらい。すっごく優しそうで、うーん、誠実そうな。ひとことで表現すると雰囲気イケメン? って感じの、いけすかない男だ。


 訝る目で見ていたディムと目が合った瞬間、ハッとして表情が曇ったのを見逃さなかった。


 エルネッタさんが男連れだからショックを受けたようだ。

 ディムの知らない男で、もしかしなくてもエルネッタさんの知り合いがランドールのギルドにいる。


 ディムはうまく言い表せない苛立ちを感じた。


----------


□ オットー・カンザス 29歳 男性

 ヒト族 レベル022

 体力:10226/13400

 経戦:E

 魔力:-

 腕力:E

 敏捷:D

【栽培】E /接客C


----------



 そしてこの男の方も、ディムの顔から一切目をそらさず、じーっと見つめてガンつけてる。

 ディムにしてみるとムカつくよりも気持ちが悪い。ステータスを見た限りじゃ傭兵仲間じゃなさそうだが、カンザスという名に心当たりがあった。


 どっかで見た名だと思ったら、今回の行方不明事件の依頼者のひとりにカンザスという名があった。


「このひとエルネッタさんの知り合い? もしかして依頼者なの?」

「あ、ああ。そうだ」


 エルネッタさんはテーブルの何もないところに視線を落として肯定した。


 知り合いなんだ。


 エルネッタさんの様子がおかしい。なんで視線を逸らすのかが理解できない。


「どうしたの? なんでぼくから視線を逸らすのさ?」


 エルネッタさんは露骨になにか取り繕おうとした表情で何か言いたげにしたあと、ようやく絞り出したことばも飲み込んでしまった。


「いや、あのな……」


 明らかに挙動が不審だ。



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