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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第三章 ~ 抗争! 狩人組合 ~
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[16歳] 傭兵サンダース、行方が知れなくなる

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 パトリシアの報告に付き合ってギルドへに立ち寄った。エルネッタさんまだ飲んでるかな? と思って酒場を覗いたけれどもうとっくに帰ったのだとか。まだ日の高いうちから強めの酒を煽るように飲むというのはダメ人間の第一歩だけど、ダメ人間を志すディムとしては飲まずにおく理由もない。軽くスピリッツでも飲もうかと思って酒場カウンターに腰かけたところで、受付のカーリさんに呼ばれた。ギルド長が呼んでいるらしい。


 パトリシアにその旨伝え、先に帰っとくように言ってディムはギルド長の部屋に招かれた。

 また何かストレスのたまるようなことかと訝りながら。


「ディムくん、ちょうど良かった。実は指名で依頼を引き受けて欲しいのだが……って、おいおい、そんな嫌そうな顔をするもんじゃない」


 指名依頼というのは実績と実力を認められてギルド長が指名するからよほどのことがない限り断ることができない。内心ではどこか遠くの街に出張だったら嫌だなあ……とか思う。


「すみません、この顔は警戒心です。ぼくにできることならなんでも」


 するとギルド長は困ったという表情を隠そうともせず溜息交じりで用件を伝えた。


「実はサンダースがいなくなった」


 サンダースさんはうちのギルドじゃあエルネッタさんと同じシルバーランクの傭兵マーシナリーで、ディムが捜索者サーチャーに昇格したときに祝ってくれれたひとだ。

『帰ってこなかったら遺品を家族に届けてくれ』とか言われたんだけど、まさかあれが死亡フラグだったとか勘弁してほしい。他にディムとの接点と言えば、アンデス・ゲッコーの隠れ家を包囲するのにも来てくれた12人のランカーに入ってた、その程度だ。エルネッタさんとはあまり組まないので、これまであまり興味のないひとだったが……。


「サンダースなんだが、15日前つまり、組合の野郎にカチ込まれた日、酒場で大暴れしてたのはおぼえてるだろ? 私が衛兵から釈放されて牢屋から出てきたのは5日前なんだが、カーリに聞くと一週間前からギルドに顔を出してないらしい。傭兵仲間のダレンが心配して私に相談してきたんで今日ちょっと様子を見に行ってきたんだ。まあ抗争もあったし、何か厄介ごとに巻き込まれたんじゃないかと思ってな。そしたら奥さんには護衛に行ってくると言って出かけてたらしい。だが依頼を受けたという記録もない。いつ出たのかと聞くとちょうど一週間前。つまり私が牢屋に入れられてる間に行方不明になったということだ。サンダースになにかあったら牢屋に入ってたせいで対応が遅れた私の責任でもある。反省してるよ」


「いつも一緒に組んでる人は何て言ってるんですか?」


「ダレンの話だとまったく連絡も何もないそうだ。ある日忽然と消えた。探索者シーカーのカエサルと親しいからカエサルに話を聞こうにも、あいついま山にこもってエメラルド掘ってやがるから連絡もつかねえ。いつも組んでるダレンは心配して心当たり全部回ってくれたが、なんの手がかりも得られてないらしい。組合との抗争がなかったら放っておきゃいいって事なんだろうが、やっぱ心配だ。経費込み50万を先に渡すから引き受けてくれないか? 成功報酬じゃないから経費が無くなって見つからなかったら詳細報告だけ出してくれりゃそれでいい」


「傭兵仲間や家族に聞き込みは大丈夫ですか? あと、カエサルさんに声かける前にぼくが引き受けてもいいのかな? カエサルさん怒ると思うんだけど」


 もしエルネッタさんが居なくなったとする。

 ディムとしては自分を蚊帳の外に置かれ、例えば同業のカエサルさんに捜索を依頼されるとあまりいい気はしない。ギルド長にはサンダースさんはカエサルさんと一緒にいることが多い仲良しだから、まずはカエサルさんに話を持って行くべきだと話した。


「ああ、さきにカエサルに相談するのがスジだが仲間が困ってるとき居なかった者に文句は言わせねえ」


 カエサルさんの帰りを待つ余裕がない? ってことは急いでサンダースさんを捜索する必要があるということだ。


「わかりました。そういうことなら」


 とはいえもう一週間も前から行方不明となると、出来ることは限られてる。

 レポートを読むと住所と氏名年齢などの個人データが書かれてあった。

 よく覚えてないけどサンダースさんはレベル35、36ぐらいあってアルさんよりも腕っぷしが強かった。

 ディムも抗争に参加したけれど、サンダースさんだけ特別なにか恨まれるようなことはなかったはず。むしろエルネッタさんの方が闇討ちされる危険性が高いぐらいの暴れようだったし……。


 捜索対象:ケイオン・サンダース 38歳 男性

   住所:ラール市西街区フィロソマ通り△△※※※

    妻:ゲイラー・サンダース 30歳

   長女:カノッサ・サンダース  6歳

   長男:グレイロ・サンダース  5歳


 30過ぎてからできた子が二人。晩婚だったらしい。

 妻は長女が下の子を見てくれるようになったことで、半年前から市場の果実屋でパート働きを始めた。暮らしぶりにもよるけど、傭兵マーシナリーの稼ぎだけじゃ心もとなかったのかもしれない。


 とりあえず依頼を持ち帰って、まずはエルネッタさんにいろいろ聞き込むつもりだ。


「じゃあ頼んだぞ。下にいるカーリから50万受け取ってくれ。幸運を」



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 ギルド長から幸運をなんて言われたけど、それサンダースさんに必要な言葉だ。

 ディムは依頼を受け、ギルドを出ると、まずは部屋に戻った。


「ただいま」

「おおっ、ディムおかえり。今日の収穫はどうだったんだ? パトリシアは?」


 エルネッタさん、今日はお酒も飲んでない? かな。酒場でビアーをジョッキ一杯でやめたのか。

 もしかして本気で深酒やめる気なのかな。なんかパトリシアが若いとかそういうひがみを言わなくなったし。不審としか言いようがない。


「なにもないよ。開口一番パトリシアのことが聞きたいの?」

「んっ、ディムが若い女と二人で森に行くなんて初めてだからな。これでも気を遣ってるんだ」


「いったいどうしたのさ、牢屋で何かあったの? 出てきてからのエルネッタさん余所余所よそよそしいよ。ぼくに何か問題があるの?」


「いや、ディムには問題ないよ。なんで突っ立ってんだ? はやくこっちにきて肩を揉んでほしい」


「いやごめん、あとでいいかな。実はサンダースさんが居なくなったとかでぼくが指名依頼受けたんだけど? エルネッタさん何か知らない?」


「サンダースが? 居なくなっただと?」



 ギルド長にこっそり聞いてきたサンダースさんの収入はエルネッタさんより高かった。

 ということはエルネッタさんよりも真面目に依頼をこなしてたってことだ。そして受ける依頼の傾向は、安くともより安全なルートを通る護衛を好んで受けていたということ。それでエルネッタさんよりも収入が上ってことは、月の半分以上は家を空けるぐらいの頻度で依頼を受けてる。


 また、エルネッタさんからの情報では、サンダースさんが家出するなんてことは絶対にないという。

 性格は温厚で自らもめ事に顔突っ込んだりしない。この前の狩人ハンター組合との抗争でもギルドに殴り込んできた奴らを迎撃するだけで、組合ビルに攻め込んだときにはついてこなかった。

 "気は優しくて力持ち" を地で行く。なによりも家族を大事にする男で、特に子どもを可愛がっていたらしい。酒場で深夜まで騒ぐこともなく、ギルド酒場では一杯飲んで喉を潤したら家に帰って飯を食うという、家族持ち傭兵のお手本みたいな人物だった。


 子どもを可愛がるなら家に居てやる時間を増やしてやればいいのになんて考えると、少し矛盾する気がするけど、金が必要だったと思えば矛盾もないか。


「カエサルとダレンは? 奴らなら何か知らないか?」


 カエサルさんは街に居ない。ダレンさんは酒場に居たからちょっと聞いてみたけど立ち寄りそうなところは全部行ったそうだ。借金があったらまずギルドに押しかけてくるからサンダースさんに限って借金で飛ぶこともない。そしてカエサルさんと一緒に山にいったという事はないという。


 エルネッタさんは玄関に出てきてブーツの紐を調節し終え、槍を簡易砥石でタッチアップいでるところだった。


「エルネッタさん何してんのさ?」

「槍の準備だ、ディムはトラブルを呼び込むからな」


「エルネッタさんにだけは言われたくない言葉だよ!」


 でもエルネッタさんが居てくれると百人力だ。


 助かる。


 エルネッタさんも手伝ってくれるということで、同行を申し出てくれた。


「どこから行くんだ?」

「まず市場、次が自宅かな。近くから順番に回るけど奥さんに話聞くのが目的だからね」


「市場のサノリ果実ね、所在は? ふむ、屋台の通りで東街区のほうか、了解。わかった」


 サンダースさんの奥さんがパートで働いてるサノリ果実店という屋台に向かうことになった。

 市場には所狭しと屋台が出店していて、肉や魚、主食の麦はもちろん新鮮な野菜やミントなどの香料、唐辛子のような香辛料だけじゃなく、古着や古書、中古の靴や革製品、鍋やヤカンといった金物まで売られてる。マーケットは東西にむかって一直線になっていて、市場の通りと交差する三本の通りが南北に、繁華街として栄えている。土地勘のないディムが一人で手がかりを探していると屋台を探すのにも苦労しただろうけど、さすがにエルネッタさんの案内があると探すこともなく一発でサノリの屋台に来られた。


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