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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第三章 ~ 抗争! 狩人組合 ~
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[16歳] エルネッタさん逮捕されてしまう

 エルネッタさんやギルド長たちは危なげなく狩人ハンター組合のカチ込み部隊12人全員のしてしまったらしい。ディムがグラス一杯のスピリッツを飲み干したころにはブッ倒れた狩人ハンター強面こわもては全員ギルドから投げ出されたあとだった。


 コトリ……とカウンターにグラスを置き、乱闘の終わったエルネッタさんと一緒に帰ろうと席を立つ。


「ざまあみやがれ、ディムほら行くぞ、次はこっちの番だ。組合にカチ込んでめちゃくちゃにしてやる!」

「ええっ? もう勝ったじゃん」


「なに言ってんだ! カチ込まれて黙ってられるか。ドアも壊されたしアルスなんかノビてるじゃないか」

「それはアルさんが弱いからだよ」


 でもドアを蹴破られてギルド内をめちゃくちゃに荒らされた分の仕返しはしてないか……。

 気乗りしないけど、エルネッタさんだけ行かせるわけにもいかず。あくまでエルネッタさんを助けるためだと心に言い聞かせて、というか半ば無理やりディムも狩人ハンター組合襲撃に加担することとなった。



「へへー、疲れたから乗せてくれ」

「疲れたなら帰って寝ようよ! 明日朝早いんだしさ」


「ケチケチすんなよ、10倍なんだろ?」


 エルネッタはディムに抱っこされて移動するのがクセになったようだ。

 人力車よりも乗り心地は悪いだろうにモノグサ極まれりだ。


「抱っこするなんて恥ずかしいでしょ? 自分の足でほらー」


「おまえパトリシアには何も言わずに先輩らしいとこ見せたくせに、ほんっと年増のわたしには冷たいのな。わたしなんか蛇投げられるところだったし、あーあ、パトリシアいいなあ、若いって得だよな……」


「分かりましたよ! どうぞ乗ってください。どこへなりとご一緒しますから」


 とほほ……。


 狩人組合のある中央までは小走りで10分程度。距離にしたら1000メートルちょっとってトコ。新鮮な肉を卸す組合なので、商店や繁華街の区画にある。だからこの時間帯でもまだ人通りは多い。

 酒場や定食屋が多く集まってる地区だ。


 冒険者ギルドに殴り込んだ殴り込み部隊が全員のされたという情報はもう流れているらしく、狩人ハンター組合の入った建物は腕っぷしの強そうな男たちが襲い来る敵を受ける陣形で指をボキボキ鳴らしながら守っていた。


 一番前の厳つい男、レベル38か。太ももぐらい腕が太い。だけど……。

 そのレベルじゃあエルネッタさんを止めることはできないな。



 ディムの走ってる速度そのままに、ひょいっと飛び降りたエルネッタさんは転びそうになりながらも急加速で態勢を立て直すと、その勢いのまま立ち塞がる男をぶん殴った。歩幅をあわせて後ろを見るほど大きく振りかぶった左ストレートだった。


 そんな超大振りのパンチに当たるバカがいるとは信じられない。



―― ドウオォンン


 立ち塞がるオッサンを一撃でフッ飛ばし、まずは組合のドアを破壊した。

 蹴破るよりも極悪だった。


 そのあとはもう全員をケチョンケチョンにボコって、組合建物内部になだれ込むと調理場から火の手があがり、ボヤ騒ぎが起こるほど破壊の限りを尽くした。


 火災がボヤで済んだこと、建物が倒れなかっただけよかったというべきだろう。

 死屍累々と打ち捨てられてる狩人たちはギルド長を始め、エルネッタさんたちに後ろ足で砂をかけられ敗北が確定。


 ここに来た時、エルネッタさんのファーストブロウ、左ストレートを食らって吹き飛ばされたレベル38のオッサンがガイラス・ドーリアン狩人ハンター組合長だったらしい。顔の威圧感だけ取るとうちのギルド長と同等か、もしくはちょっと上になるが、ケンカはそこまで強くない。



―― ウオオオォォッ!!


 勝鬨かちどきを上げるギルドの荒くれ者たち。まるで戦争に勝ったかのような騒ぎだ。


「よっしゃ! またギルド酒場に戻って飲み直そうぜ!」


 って話になったとき、衛兵のホイッスルが辺りに鳴り響いた。


 やっぱこうなるのがオチだった。


 結局、この抗争事件に加担したものはその場で全員が現行犯逮捕。


 もちろんディムも現行犯で逮捕された。

 ガチャリと重い音が響くと、両腕に鉄製の手枷てかせが掛けられ、何もしてないって言ってるのに逮捕された。まあここまでエルネッタさんを運んできたのは事実だし……。


 その夜は非番の衛兵たちにも動員がかかり、狩人ハンター組合のある区画は立ち入り禁止となり、ディムたち冒険者ギルドのメンバーは牢屋へと入れられてしまった。


「わはは、愉快だなディムくん!」

「なに言ってんですか! まさかブタ箱に入れられてるなんて想像もしませんでしたよ!」


 牢屋は男と女が別だとかで、エルネッタさんとは別々になったけど、エルネッタさんが抵抗して怒鳴り散らす声が裏から聞こえたので、きっと女性用の牢屋はこの裏にあるのだろう。


 ディムは何もしてないというのにギルド長含めたギルドメンバーなんていう鬼厳つい連中と同部屋で一晩を過ごすことになった。


「もうダメだ。冷たい石のベッドになんか寝れない。ぼくもうストレスで禿げそう」


 満足に寝れなかったというのに翌朝早くから取り調べでヘロヘロになったが、ディムは本当に何もしてなかったので翌日の夕方には釈放された。だけど特攻隊長として一番槍を担当したエルネッタさんは衛兵に逮捕されたあとも暴れて衛兵に怪我人が出たことで本来なら一か月ほど出てこられないはずが、森で実際に襲われた被害者ということで、その怒りの理由が理解され、わずか三日という、暴れた割にはスピード釈放された。

 ギルドの長ダウロスさんが帰ってきたのは10日後だった。


 その後はというと、狩人ハンター組合がぶっ壊されたことと、あと狩人ハンターランカーたちはだいたいボコられて大怪我を負ってしまったので1か月はまともに動くこともできず、ラールの街ではしばらく肉の値段が2倍以上にまで高騰し、ディムやエルネッタのような庶民では肉なんて高価なもの、口に入らないような高級品となった。


 もともと狩人ハンター組合は冒険者ギルドのひとつの部課で、狩人ハンターライセンスを発行していたけれど、独立組織になった時ちょっとモメたらしい。それ以来ずっといがみ合いが続いていて、狩場と採取の現場がかぶると今回のような闘争に発展することもしばしばあるのだそう。


 まあ、狩人組合のほうは衛兵からの連絡で、仲間が狩場で傭兵とイザコザがあって殺されたと聞いたらしい。そんな説明じゃ頭から汽笛を鳴らしながらカチ込んでくるのも仕方ない。むしろ衛兵がきて身動き取れなくなる前にカチ込んで、当事者をぶっ殺すぐらいのことは考えて当然じゃないか。こうなるともう、状況説明で手を抜いた衛兵の方に悪意を感じてしまう。


 しかし、街は賑やかなところだなあと思った。セイカの村じゃあ考えられない出来事がいっぱい起こる。



「ほんとエルネッタさん、ケンカもほどほどにしないと、街の外で闇討ちにされたりしたら困るからさ」

「んー、ちょっとイライラしてたし、スカッとしたのは良かったと思うわ」


 パトリシアの件と、あと、レッドスネークの件で怒ってたエルネッタさんの機嫌も思う存分大暴れしたことでストレス解消となり、だいぶ気が晴れたようだ。


 おかげさまでエルネッタさんが戻ってから丹精込めて身体のメンテナンスに努めたことから、レッドスネークのことを咎められることはなかった。

 個人的には結果オーライということで、悪くない結末だ。


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