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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
【第二部】シリウス(15歳)サンドラ編
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【15歳】指名依頼(12)サバイバルスキル

みなぎってきた。オレはなにを賭ければいい?」


「もし私が勝ったら、後ろについてくる子を守ってあげてほしいな。シリウスでもいいし、セインさんでもいい。気配察知があるならあの子に近づく気配も分かるんだろ? 守るのが無理なら、ちょっと気にかけてやってほしい。指示をくれたら私が動くから。だって私じゃあの子の位置すら満足に把握できてないのよね」


「へー、そうなんだ、どっちもいけるひとだったんだ」


「変な誤解しないでよ。私の恋愛対象はカッコいい男オンリー。まさかセッキョーしてやった子が戦闘区域にまで付いてくるなんて思わなかったんだよ。戦闘に巻き込んで怪我でもさせてしまったら悔やまれるじゃん? これは私の保身のためよ」


「分かった! パトリシアのベロチューで賭け成立だ」


「ん! いい子だシリウス。上手なベロチューのしかたを教えてやろう、まず舌の動きは『レロレロレロ』こうだ」


「わかった『レロレロレロレロ』これでいいのか?」


「そうそう、シリウス飲み込みが早いな!」



「くーっ、アホが増えました。二人とも殴ってやりたいです」


「待ち伏せの件だが、アホはほっといて早く確定してくれんか、私はなるべく早く作戦を吟味したいのだが……」


「分かりました」


 待ってましたとばかり、パトリシアは一足先に森に足を踏み入れた。


 シリウスは見ていた。

 勝手に覗くなとあれほど言われてたパトリシアのステータスは、明らかに21歳のうら若き女性のものとは考えられないほど高い数値が並んでいるのだが、


----------


□パトリシア・セイン 21歳 女性

○状態異常耐性(強)

 ヒト族  レベル034

 体力:27998/28220

 魔力:-

 経戦:4652

 腕力:640

 敏捷:21880

【薬草士】/短剣C/調合B/緑の指A/状態異常耐性S


----------


 森に入った途端、隠しスキル『レンジャー』が発動する。

 人体を構成する37兆2000億個の細胞が歓喜に震え、全力でパトリシアの肉体を鼓舞し、ステータスの値が上昇した。


----------


□パトリシア・セイン 21歳 女性

○ステータスアップ(効果)

○聴覚(発動中)

○嗅覚(発動中)

○状態異常耐性(強)


 ヒト族  レベル034

 体力:027998/169320(6x)

 魔力:-

 経戦:18608(4x)

 腕力:1280(2x)

 敏捷:153160(7x)

【薬草士】/短剣B/錬金術S/緑の指S/状態異常耐性SS

『レンジャー』C(罠設置C/擬態B/吹き矢B/気配察知S/気配消しA/聴覚B/嗅覚B)


----------


 このように勇者顔負けのステータスを叩き出すのがパトリシアの『レンジャー』だ。

 このあと自分で調合した体力回復薬をひとくち飲んで、体力もフルになった。


 シリウスはこの『レンジャー』をいうスキルを調べてみたが、過去に例を見ないようで、教会の図書館に書物の記載がなかった。アンドロメダはユニークスキルだと思うと言ってたが、過去に例がないので、何もかもが推測の域を出ない。


 ただ、確実に言えることはリアルタイムで数値爆上げの様子を見ていると、瞬きをすることすら忘れて見とれてしまうのと、まるで蛹の殻を破って羽化する蝶のように、あるいは変身型宇宙人が絶望的に姿を変え、桁外れの戦闘力を得るよう、その姿まで変わってしまったかのような錯覚を起こし、パトリシアが豹変するということだ。


 シリウスは軽いめまいを覚え、自分のパラメータと見比べてみることにした。


----------


□シリウス・ミルザム・ソレイユ 15歳 男性 (昼間)

○鑑定無効(常時)

○状態異常耐性(強)

○耐魔法障壁(常時)

○知覚(暗視、非接触鑑定、気配察知:常時)


 ヒト族  レベル062

 体力:84600/85840

 魔力:3522

 腕力:37420

 敏捷:44940

【夜型生活】■/知覚B/知覚遮断E/■■/短剣D

【 羊飼い 】B /羊追いA

【人見知り】B /障壁(弱)/聴覚B

『鑑定無効』『毒耐性B』『麻痺耐性』『幻惑無効』『合気柔術』



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 シリウスのスピードをもってしても、昼間であれば森に入ったパトリシアには圧倒されてしまうことがよくわかる。

 最近とくに『シリウスぶん殴ってやる』と口癖のように話すようにパトリシアがマジ殴りしてくると、シリウスには避けることもできなければ逃げることもできない。だからパトリシアはシリウスが100%避けられる状況じゃなければ殴ったりしないのだ。


 ただし腕力が極端に低いので、たとえばシリウスが知覚できたにせよ避け切れないスピードでパンチを繰り出したとする。当然それは狙ったポイントに命中するが、それがクリティカルヒットしたとしても当のシリウスには満足なダメージを与えることはできない。なぜならシリウスの防御力で減衰されたダメージで莫大な体力を削るには無理がある。パトリシアの『レンジャー』スキルは、攻撃系スキルではないことが伺える。


 付属するスキルを見るに森の中で生きていくためのサバイバルスキルだ。


 しかし森の中限定という縛りプレイがあるにせよ、それでもヒカリや、アルタイルを追い込むことができるスピードにまで昇華させたのは特筆に値する。現に森に入ったパトリシアは、王国10本の指に入るほどの実力者であることは間違いない。


 パラメーター数値の爆上げが成ると、そんなに風を強く感じないのに、パトリシアの髪がフワッと吹き上がったかのように見えた。常に風を受けているようにも見える。


 唇がいやらしく歪んでいる。パトリシアも何かみなぎるパワーを感じているのだろう。


 パトリシアは首をひねってスジを伸ばすと、握った拳をボキボキと鳴らし始めた。



「シリウスの負け。ちょっと先のほうで待ち伏せされてますね、数はえーっと、多いなあ。20、30、40、っと、42人。手前の2人は左右に分かれてますけど、こちら偵察でしょうか」


「え? マジ? そんなにいんの? オレ察知範囲外だ……、追跡してくる女の子しかわかんねえ」


 ――ビキッ!


  ――ビキキキッ!


 これはパトリシアのコメカミあたりの血管が動脈硬化を起こし痙攣するときに出た軋む音だった。

 シリウスは何か不穏な雰囲気を感じたのでパトリシアを気にかけたが、当のパトリシアはというと、シリウスの心配をよそに百万ゼノの笑顔とでも言えばいいのだろうか、満面の笑みを浮かべていた。

 ただし、コメカミにはサンゴのように硬質化した血管が露わに浮き出ているのだが。


「よかったねシリウス。あんな可愛い子のお世話をすることになって」


「あははは、パトリシアどうしたさ? 目が笑ってないってば」


「あの子は危険な香りがします、いいえ危険な香りしかしません。シリウスと同い年だし、すっごく可愛いし、なんか勝手についてきてるしさ!」


「え? もしかしてオレについてきてんの?」


「へー、なにそれ。すっごくうれしそうな顔」



 ダービーは飛行船を降りてからずっとシリウスとパトリシアの掛け合いを見ていた。

 最初は初々しいカップルだと思った。だが、いまほんの少しの違和感を感じた。


 嫉妬しているふうな言動を繰り返すパトリシアの目に、どこか他人行儀な……、言うなれば『壁』のようなものを感じた。


 一歩引いた立ち位置からシリウスを見守り、シリウスの幸せだけを願うような、愛溢れる眼差しだ。

 しかしその眼差しは恋する女のものとは違う、いわば母親のそれに近いように感じることを重ねて確認したに過ぎない。


 このカップルはいびつだ。


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