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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第一章 ~ 探索者という生き方 ~
16/238

[16歳] サラエとセイジがいなくなった!

20180207改訂


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 ディムがエルネッタさんのアパートに戻って部屋でゴロゴロしながら至福の時を過ごしてると、深夜だというのに外からボソボソと話声が聞こえてきた。『聴覚』スキルなんて使ってないのに、アパートの壁は薄いから、けっこう外の音声も入ってくる。


 数人? いや、4~5人か。


 まったくこんな時はエルネッタさんが居てくれたら『ブッ殺すぞゴルァ!』の一言で解決してくれるはずなのに、だいたいあの人はこんな時に限って居ない。


 壁を挟んですぐ向こう側に不審者がいると思うだけでストレスを感じる。

 ストレスで禿げたら誰が責任を取ってくれるのだろう。


 ディムはは買ってもらったばかりのナイフベルトを装備して部屋を出た。まあ【夜型生活】のアビリティがあるし、いきなり襲われても斜め向かいはギルドが24時間営業のコンビニ状態だからいつでも逃げ込めるから大丈夫だ。


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□ ディミトリ・ベッケンバウアー 16歳 男性

 ヒト族  レベル049

 体力:190021/199395(7倍)

 魔力:D→A

 腕力:C→A

 敏捷:B→S

【夜型生活】B /知覚/宵闇/短剣

【羊飼い】E /羊追い

【マッサージ師】B /鍼灸/整骨

【人見知り】F /聴覚/障壁

【ホームレス】F /拾い食い


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 アビリティとスキルが発動してるのは確認した。

 いや、アビリティが発動したら身体が軽くなったような気がするのだから、わざわざ確認するまでもないのだけど、ケンカになりました! でもスキルどこ? ってことにでもなったら大変だから、何かありそうなら必ず確認することにしてる。要するにエルネッタさんがいないとビビりなのだ。


 ステータスを見ると体力が凄いことになっているが、これ実は宵闇というスキルの恩恵であることは、なんとなく分かっている。

 昼間の体力は28485だから単純に7倍されているということだ。逆に朝になると音を立ててしぼんでゆく風船みたいにステータスが爆下がりするから注意しないといけない。これは朝日を見た瞬間にどっと疲労感が襲ってくることに相違ない。


 敏捷がB→Sになってるのも宵闇の恩恵。つまりディムは夜の間だけならそこそこ戦えるということだ。

 逆に昼間はと言えば短剣のスキルが消失するので、合気柔術っぽい技を使える素手のほうがまし。


 戦いを避けるにも力が必要なのだとしたら、この力を使って全力で戦いを避ける。

 でも向こうから来た場合は別だ。積極的に排除して、ストレスのない心の平穏のために戦うと決めた。


 ディムはひとりで意気込んだ。

「よーし、不審者どもに注意してこの界隈から出て行ってもらうぞ……」


 ドキドキしながら扉を開けて、そーっと音を立てないよう、こっそり部屋から踏み出し辺りを窺ってみると……、怪しげな男が3人……いや、あっちにも2人組がいる。


 ディムはその男たちに見覚えがあった。近くに住んでる男衆おとこしゅうだ。こんな夜中に何をしているのか? ディムがここで生活し始めて3年たつが、これまでこんなことは一度もなかった。


 男たちの中に、ギルドで見た顔がいるのに気が付いた。

 あの人はギルドの探索者シーカーで、……えっと、たしかCランクの……。


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□ フェルナンド・カエサル 38歳 男性

 ヒト族 レベル031

 体力:10400/12110

 魔力:-

 腕力:E

 敏捷:D

【狩猟】E /弓術


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 思い出した。


 この人はカエサルさんといって、ラールの街では腕のいい探索者シーカーで、よく山岳地帯や遺跡探索なんかにも遠征して行ってるらしいと聞く。こんど探索者シーカーの稼ぎ方ってのを教えて欲しいと思ってた。


 こんなところに探索者シーカーが何の用だろう? 顔を出したついでだし、チラッと目が合ったので、ちょっと声をかけてみることにした。


「えっと、カエサルさんどうしたんですか? なにか?」

「ん? なんだエルネッタんとこのガキか……。確か同業だったな。ここのアパートに住んでるガキが帰らないんだってよ、緊急の依頼があったんだ」


 ディムは眉根を寄せて顔をしかめた。

 ここのアパートに住んでるガキというのは、サラエとセイジしかいないのだ。


「もしかしてサラエとセイジですか? いつから? いつからなんですか? 最後に目撃されたのは?」


 先輩探索者シーカーのカエサルは仕事中だというのに取り乱して現場を荒らし集中を乱そうとする同業のルーキーに、まずルールを教えてやることにした。


「おいおい、お前も探索者シーカーだろうが。情報はやれねえ。これは依頼のあったことだ、知りたきゃギルドで聞くのが俺たちのルールだろ? それにここは目撃現場だ、踏み荒らすな」


 確かに、こんなとこで押し問答するよりも聞いたほうが早い。


 ディムはすぐさま通りを挟んでアパートの斜め向かい、ギルドのドアを乱暴に開けて入った。

 ギルド酒場では丁度サラエのお母さんが、探索者シーカーたちの質問に答えながらありったけの情報を渡してるところだった。


「おばちゃん、どうしたの? どっちがいなくなった?」

「あああっ、ディムくん、二人ともだよぉ……。二人とも帰ってこないんだ、お願いだよ、川で遊んじゃいけないって言ってるし、森になんか行かないだろうけど、森に向かう街道で見たって人がいて……」


 森に向かう街道で見かけた目撃情報があると言う。

 だがおかしい、サラエとセイジは森に近付くなんてことないはずだ。


 ……っ!


 いや、ディムには心当たりがあった。

 今日、サラエとセイジに白トリュフが高く売れたと言った。



「受ける! ぼくもその依頼うけるから! いいよね!」

「あの、捜索の依頼はDランク以上の探索者じゃないと紹介できないんです……けど……」

「サラエとセイジがいなくなったんだろ! じゃあ依頼なんか受けないから今もってる情報をすべて教えてください」


 無意識のうちに熱くなって受付嬢に食ってかかろうとしたとき、ギルドカウンターの後ろから声がかかった。ギルド長のダウロスさんだ。


「ディムくんは依頼を受けなくても走っていくぞ。ならギルドの協力が得られるよう依頼を受けさせてやる方が安全だ。なあに、営利誘拐の線は薄い。誘拐犯と鉢合わせにならなければ危険も少ないからな、特例として認めてやろうや……」

「ギルド長がそう言うなら……」


 ディムはこんな駆け出しの探索者シーカーだけど、実はギルド長とは親しく話すぐらいには面識がある。ギルド酒場で飲んだくれて動けなくなったエルネッタさんを引き取ったり、飲んでクダ巻いてケンカ始めたら止めるため呼ばれるという不名誉な顔利きだ。


 コネの重要性を再認識しつつ依頼カードを取って依頼内容の書かれたレポートに目を通した。


・捜索対象はサラエとセイジの二人、このギルドから通りを挟んで向かいの小さな空き地、つまりエルネッタさんのアパートの前で目撃されてる。ディムが二人と会ったのは午後半(14時~15時ごろ)だからその時刻まではここにいたということだ。これは自分が会ったので間違いない。


「おばさん、森の方で見たっていつ?」

「夕刻前(16時~17時ごろ)だよぉ、本当にどこいってしまったんだろうね、まさか森に入ろうなんて馬鹿なことしないと思うけど……」


「いや、ぼくは森だと思う。ごめんおばさん、ぼくのせいかもしれない。心当たりがあるんだ」


「本当かい? でも夜の森はあぶないよ。ディムくんが怪我でもしたらエルネッタにどう言えばいいか……いまうちの人が松明たいまつとランタンを準備してるから……」


「ディムくん、夜の森に入るなら最低でも3人はいないと危険だ……キミも探索者シーカーならそれぐらい……」


「大人が3人いないと危険なとこに幼い子どもが2人で迷い込んでるとしたらどうなんですか? すっごく怖い思いをしてると思います……。大丈夫ですよ、ぼくは13歳まで森で育ちましたから危険はありません。行ってきます!」


 ディムはギルド長が待てと言うのも聞かずに早足でギルドを出て行ってしまった。


「待つんだディムくん! ああっ、もうあのバカ野郎が、マジでエルネッタの弟なんじゃないか? ……受領を許可した私の責任かよ。くっそ、松明もってこい! 私も出る」



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