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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第七章 ~ 勇者、ギンガ・フィクサ・ソレイユ ~
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[19歳] 恐怖のキノコ狩り

「メイ、もういっぱつ照明弾ライトバルーンの魔法を打ち上げといて、こっちは森の中、あっちは見晴らしがいい。あっちが身動きしづらくなるから」


「わかったわ」



 メイが照明弾を上げ、辺りが見やすくなるとダグラスと目が合った。

 当たり前だけど、乗り気じゃなさそうに渋い顔をしてるし、エルネッタさんは"やれやれ、ギンガが言うなら仕方ないな"といった表情。メイは"よし、今度こそ取り戻すからね"って意気込みが聞こえてきそうなほど気合を込めている。ギンガはギンガで、少し離れたところからアサシンのディムを窺ってる。

 

 あの砦の中に捕らわれている、生きているのか死んでいるのかすら分からない3人を救出するために、作戦なんてなーんもなく、ただ100%戦闘にはなるのだろうから、戦闘準備だけはしておかないといけない。

 ディムはまず自分とトールギスのステータスを確認しておくことにした。



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□ ディミトリ・ベッケンバウアー 19歳 男性

〇 ステータスアップ効果(宵闇)

〇 耐魔法障壁 効果(常時)

〇 火炎結界 効果(自動)

〇 聴覚 効果

〇 状態異常軽減 効果(自動)


 ヒト族  レベル118

 体力:3079200/4896840(39倍)(125560)

 経戦:★→★x4

 魔力:★→★x4

 腕力:★x4→★x7

 敏捷:★x6→★x9


【アサシン】★★/知覚S/知覚遮断C/宵闇SSS/短剣★★★/二刀流S

【追跡者】A /足跡追尾S

【理学療法士】SS/鍼灸C/整骨S/ツボS

【結界師】A /聴覚B/結界A

【冒険者】D /摂食B

『合気柔術』S/『温泉鑑定士』C/『視覚誤認』S/『投擲』B



☆ トールギス 11歳 女性

 幻獣種グリフォン族グリフォン亜種メタモルフォス・グリプス

〇 ステータスアップ 効果(常時)

〇 属性防御障壁 効果(常時)

〇 耐魔法障壁 効果(常時)

〇 耐物理障壁 効果(常時)

〇 聴覚 効果

〇 視覚 効果

〇 自己再生 効果(自動250)

 レベル192

 体力: 3697273/3697273

 ■■:■■■■■■■

 ■■:■■■■■■■

 ■■:■■■■■■■

 ■■:■■■■■■■

【変身魔法】/変身(猛禽)S/変身(ヒト型)C

【属性魔法】/雷術SSS/風術S

【障壁魔法】/耐雷障壁SSS/耐炎障壁SSS/物理障壁SSS/耐風障壁SSS/耐魔法障壁SS

 /対刺突防御★/対斬撃防御SSS/対打撃防御S/幻視B/気配探知B/低気圧A/聴覚SSS/視覚SSS

『自己再生』C/『人語理解』C/『テンペスト』S


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 自分とトールギスのステータスを確認してみると、自分のほうは『合気柔術』『温泉鑑定士』『視覚誤認』というスキルが現れてた。


 『投擲』というスキルにはいまいち思い当たることがなかったので、何か投げたことがあるのかを考えてみたらレッドスネークぐらいしか投げたことはない。


 隠しスキルも突然Sになることはないので、これはきっとこれまで隠しスキルだったものが見えるようになったと考えていいんだ。体力も上限が上がってたけで現体力が減ってるわけじゃない。


 トールギスはあれだけ敵を倒してもレベルが8上がっただけで、スキルは変動なし。

 かなりレベル差があって、きっといまやオークの戦士なんかザコみたいなものなんだろうことがわかる。

 そう考えるとよく8も上がったと言うべきか。


 ディムのステータス数値と比べて見てあまり大差ないと思うかもしれないけど、トールギスの場合は、これ朝から晩まで一日中このステータスだから。6年間もずっと森を守るため単身、最前線で獣人たちと戦ってきたグリフォンには洒落にならないスキルが見えた。自己再生というのは治癒能力の事なんだろうし。


 これがスキルだというなら、これまで数えきれないほどの傷を受けたことから必然的に身に付けたのだろう。対打撃防御も嫌と言うほど殴られた結果だし、斬撃も刺突も、これほどまで防御系スキルが上がるほど戦って傷を受けてきたのだ。苦手だったメイまで守ってくれてるんだから、ほんとトールギスには頭が下がる。メイなんて腹が減ったら焼き鳥にして食べようとか、非常食だとか言ってたのに。


「デニスさん、上の状態どうです? 怪我人の様子は?」

「ああ、ケガのほうは治癒させたらしいが、どうも様子がおかしいらしい。ショーラスの話では毒を受けているというが、本人の意識がはっきりしないのでどんな毒を受けたのか分からないらしいんだ……」


「毒? ちょっとまって、毒を受けてる?」

「ああ、ショーラスが言うには間違いなく毒の症状らしい」


「メイ! 何を食べさせたのさ!」

「失礼ね、ここの森のことなら知ってるわ。私もギンガも同じもの食べてるし、毒だというなら食べ物じゃないと思うわよ」


 って言われても、メイは子どものころから何でも食べてて、今みたら『悪食A』のスキルあったから多少の毒が入っても気づかないだろうし、ギンガは『毒軽減A』スキルを持ってるから知らずに毒キノコ食っててもおかしくない。


「食材は? メイが?」

「私とギンガが二人で採りに行ってる。グラナーダはケガしてたし、こっちは回復役のネヴィルが捕まってしまってからロクに戦えてないのよ。私の魔力がフルまで回復することもないし、こそこそ隠れてゲリラ活動しながら捕まった三人を取り戻すために頑張ってたんだからね、ディムもそんだけ強いんだったら私とツートップ張れるでしょ? いい作戦を思いついたからダグラスも強制参加ね」


「助けるってどうするんだよ? もしかしてヤバいこと考えてないだろうな、お前の企てた作戦なんて嫌だぞ、絶対に嫌だ」


「なにバカなこと言ってんのよ、いまもうセイカの村は獣人たちの砦になっていて石造りの壁に囲まれてるのよ? そんなとこから三人を助け出すにはどうするか考えてみたら方法はそんなにあるわけじゃないわ」


 メイは確かにいま"ツートップ"といった。メイとディムが二人で前に出て、勇者を後ろに下げる作戦だ。もう二度と後衛を攫われたくないのは分かるけど、魔法使いってふつうは後衛で勇者が前衛じゃないだろうか。


「ダグラス、諦めよう。メイは正面突破しか考えない」

「あははは、気に入ったよメイリーン嬢、もしかすると気が合うかもしれないな」


「私はまだあなたをディムの彼女と認めてませんけどね!」

「じゃあ俺は身体やすめとくよ。ディムはエルネッタさんのマッサージしないのか?」


「先に上のひと見てくる。きっとメイが毒を食べさせたと思うし。エルネッタさんは戦闘食レーションたべてエネルギー補給を。あとでメンテナンスするよ」


「ほんと失礼よねーギンガ、私たち普通においしく食べたし」


 大樹の蔦を登って樹上のツリーハウスを久しぶりに訪れてみると、中では蝋燭ロウソクの灯りを頼りにショーラスさんが懸命の治療を行ってる。捕まった三人の中に解毒薬を調合できる狩人ハンター職の者がいたのだろう、無造作に調合鉢が置かれていて、何か傷薬に似た感じの怪しげなものを調合した形跡がある。

 メイにもギンガにも薬草系のスキルはなかったはずだが、見よう見まねでやっちゃったのだろう。


 しかもメイのスーパーアバウトな選別眼で採ってきたモノなんて絶対に食べちゃいけないのに……食べ物が入ってるバスケットの中にはキノコが入ってる。これを食べっちゃったのか……。


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□ ターミナル・グラナーダ 35歳 男性

●状態異常 毒物中毒

 ヒト族  レベル055

 体力:8050/62665

 経戦:A→E

 魔力:E

 腕力:A

 敏捷:C

【聖騎士】A/片手剣S/盾術S/パーティ戦闘A


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 体力が12歳児ぐらいにまで低下してる。このまま放っておくと命に係わる症状だ。


 『知覚』スキルがSに上がったおかげか隠しスキルばかりではなく、効果発動中のスキルや状態異常まで知ることができるようになった。

 やっぱり毒物中毒なんだ。何の毒かも何となくわかる。

 なにしろ目の前にあるキノコや木の実が入ったバスケットの中が薄ぼんやり光ってるのだから。


 念のため手に取ってまじまじと見た。茎を割ってみると黒くシミがある。間違いない、これはゲッコウタケだ。たしかダグラスが食わされて倒れた時はコウゲンドクダミの葉を擂ったものを飲ませたら回復したはずなんだけど……。


 ディムは更に念を入れてバスケットの中を調べてみるとコロリタケも入ってた。

 メイもギンガもほんと何考えてるのか理解できない。この人はきっと『ここは私の育った森だから何でも知ってるの、これは子どもの頃からよく食べたわ』なんて口車にうまく乗せられちゃったのだろう。


 そしてこの人は解毒系のスキルを持ってない。でもまだ生きてるってことはコロリタケは食べてない。もし食べてたらもう苦しみから解放されてあの世に旅立っている。


 以上の事から導き出された結論。


 この聖騎士のひとが苦しんでる原因はゲッコウダケを食べさせられたからに違いない。


「ショーラスさん、この人、ゲッコウダケを食べてる。コウゲンドクダミの葉もってます?」

「コウゲンドクダミ? それは火傷の時に湿布する薬草なんだけど? えっと、プリマヴェーラさんと組むときは必須なんだよねこれ、あの人手加減ヘタだから。えーっと、ちょっとまって……あった。これをどうすれば?」


「鉢で擂って飲ませてやってください。くっそマズいですけど症状は快方に向かいます」


「本当ですか! 分かりました。いますぐに……」


 ディムはこの聖騎士のひとをショーラスさんに任せ、ゲッコウダケのたくさん入ったバスケットを手に持ってツリーハウスを降りた。


「メイ、これが上にあったんだけど……」

「それがどうかしたの?」


「ゲッコウダケだよ! 毒キノコだってば、子どもの頃ダグラスが死にかけたの覚えてないの?」

「それは覚えてるけど、あの時のキノコってこれだった? 普通においしいよそれ」

「メイと勇者には毒が効かないスキルがあるから美味しく食べられるの。ちなみにぼくも美味しく食べられるけどね。これをダグラスに食べさせてみると分かるから」


「ひでえ! 絶対に食わねえ! とくにメイが採ってきたキノコ食うなんて自殺行為だ。酷い目にあったことしかねえし」


「ちょっと待って、わたしのせいだっていうの? ダグラス、食べなさい。美味しいから。あなたが食べて、無事にピンピンしてなければ私のせいにされちゃう。苦しんだりしたらブン殴るからね」


「ディム……助けてくれ、メイがムチャクチャだぁ」


「コロリタケもあるし。こんなの食べたらマジで死ぬってば」

「ああ、それはダメだった、私それのせいで一日寝込んだし。ダグラスだったら下痢しちゃうかも」


 メイはバスケットの中にある、新鮮な純白のキノコ、コロリタケで寝込んだという。

 コロリタケは無味無臭の猛毒キノコだ、近頃パトリシアがこれを殺鼠剤に使っていて、相当な利益を上げている。これ1本あったら30人はゆうに殺せるというのに。


「一日? こいつを食べてたった一日寝込むだけで助かったの? ぼく、これをメイに食べさせられて三日寝込んだんだけど!」


「普通死ぬわっ! お前らの会話聞いてたら大したことなさそうだけどこれ猛毒だからな!」


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