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冒険者ギルドで人を探すお仕事をしています  作者: さかい
第七章 ~ 勇者、ギンガ・フィクサ・ソレイユ ~
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[19歳] 勇者パーティあと半分

 メイの喜びは、ダグラスとの再会の方へスライドシフトし、やっと幸せな地獄から解放されると、いましがた"帰ろう"と言ったのをスルーされたデニスのおっさんが、こんどはディムとエルネッタのほうに提案を持ってきた。


「再会を喜ぶのはひとまず置いといてケスタール砦まで下がるのを提案したい。すぐに兵を出してもらって残りのメンバーを救出したほうがいい……」



 勇者とは無事に会えた。国宝といわれる聖剣バルムンクも腰に差してる。あとギンガを担ぎ上げてでもケスタールまで戻れば依頼達成だ。そもそも他の3人を救出したところでボーナスが出る訳もなし、ディムとダグラスはメイが無事だったことで目的は達成。エルネッタさんはギンガで達成。デニスのおっさんたちは本来の依頼達成でお金を貰える。


 捜索隊各々の目的は達成したのだからソッコーで帰りたいのは理解できる。いたずらに蜂の巣をつつくのはヤブヘビというものだろう。


 だけど……、


「デニスさん、ぼくに決定権あると思ってます? 思ってないでしょ? ……それにぼくたちあそこで喧嘩しちゃったからなあ。もう二度と戻ってくんなって言われたし、すんなり兵を出してくれるなんて思えないよ」


 デニス・カスタルマンも、そこを突っ込まれると痛い。あそこの砦に戻ったところで迅速に兵を出してもらえるのかとなると疑問だ。というより、たった3人を救出するのに近くの砦から予備役も集めたとしても、肝心の勇者パーティが砦の長を倒してない。これじゃあ救出なんてできるわけがない。


 なんだかんだと理由をつけられて、結局救出のための兵など出せないってことになるのは火を見るより明らかだ。そもそも論として、メイとギンガがパーティメンバー全員一緒じゃないと帰らないと言ってるんだから、帰ることはできない。


 ところであの要塞、あとどれぐらいの戦力が残っているのだろうか。

 狩人の小屋で50ぐらい倒した、いまこの森でたぶん100ぐらい、残存兵力は? さっき食事の準備をしている匂いが漂ってきていた。きっと非番の兵たちが引っ張り出されてるはずだし、ここの砦が前線に兵を送る役目を担っているとすれば1000居てもおかしくない規模だ。


 そんな数と戦えるのか?

 メイには悪いけどちょっと覗き見させてもらうことにした。



----------


□ メイリーン・ジャン 19歳 女性

〇 毒耐性 効果(常時)

 ヒト族  レベル069

 体力:43090/54500

 経戦:S

 魔力:S

 腕力:S

 敏捷:S

【魔法使い】S /炎術S /風術C

 /拳闘S/悪食A



□ ギンガ・フィクサ・ソレイユ 16歳 女性

○ ステータスアップ効果 (常時)

〇 属性魔法防御 効果

〇 ダメージカウント 効果(自動)

〇 状態異常軽減効果(自動)

〇 打撃耐性 効果(自動)

〇 刺突耐性 効果(自動)

〇 斬撃耐性 効果(自動)

〇 経験値ボーナス 効果(常時)


 異世界人 × ヒト族ハーフ  レベル078

 体力:216900/248500

 経戦:S→SS

 魔力:A→S

 腕力:S→SS

 敏捷:S→SS

【勇者】A /見通す眼S/全属性魔法防御B/重力操作A/光魔法B/ダメージカウンターB/片手剣SS/盾術S/毒軽減A/麻痺軽減B/混乱軽減B/時間遅延軽減B/経戦ボーナス/魔力ボーナス/腕力ボーナス/俊敏ボーナス/打撃耐性B/斬撃耐性A/刺突耐性A/経験値ボーナスE/体力増加/正しき心


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 凄い。


 メイは【魔法使い】のくせに拳で語る『拳闘』Sスキルに加えて、何でも食べる迂闊な性格からか『悪食』などというスキルが備わっていた。これはさすがとしか言いようがない。


 魔法使いになってもやっぱりメインウェポンは拳なのだろう、なんでも鉄拳ひとつで解決してしまうあたり昔っから少しも変わってない。ステータスもオールS。こんな魔法使い他に居ないだろう。


 勇者のステータスも目がチカチカしそうなほどチート満載だった。

 

 夜ならまだしも昼間だったら圧倒されてしまうステータスだ。『見通す目』とかいうスキルでステータスを覗かれてることは分かってるから、いまは警戒してくれてるだろうけど、朝になって勇者が有利になると襲われるかもしれない。戦うとすれば攻撃よりも防御系の耐性のほうが鬱陶しそうだ。万が一にもエルネッタさんを連れて帰るなんて言われて剣を抜かれたらもう戦闘は回避できないのだから、敵に回さないようできるだけ頑張るしかない。


 てかこの二人がいて仲間を奪われるなんてことがあるのだろうか。メイはともかくとしても、勇者のステータスは人外の域なのに。


 ディムは勇者パーティの主力二人、メイとギンガの戦闘力は正直言って規格外だと結論付けた。

 メイと勇者の実力ならそれほど心配する必要がないぐらいのレベルはある。だけど回復役が居ないから森に隠れてゲリラ戦を仕掛けるぐらいしかできなかったのだろう。


 でも今は回復役のショーラスさんが居るから力いっぱいアテにしてるってことか。



「ほかの三人は獣人たちに捕まったって言ってたよね? 勇者ってこんだけチート満載で強いのに、それでも三人のメンバーを生け捕りにするほどの実力者があの要塞に居るの?」


「許可なく私を鑑定しないでもらえますか!」

「お互い様ってことにしてくんないかな!」


「……っ! ディムも鑑定眼もってるの? 非接触で? 女の子のステータスを勝手に覗き見して丸裸にしたの? それをこっそり眺めてるだなんて最低の覗き野郎だわ。私のステータス勝手に覗いたら殴るわよ」


 メイの機嫌を損ねた……。これはあまりよくない。

「ちょ、セクハラ野郎みたいに言わないで欲しいな、見てないよ。うん、ぼくはメイのステータス見てないからね」


「わはは、ディムそれは嘘だ」


 エルネッタの暴露によりディムがメイのステータスを覗き見したことがバレた。

 殴られることはなかったけど、メイもギンガもコソコソと胸を隠してトールギスを盾に隠れようとするものだから、男連中が色めき立った。


 どうやら服が透けて見えてるとでも思っているらしい。

 そんな夢のようなファンタジー能力があるならぜひとも欲しいぐらいだ。



 何を警戒してるのかはなんとなく分かる。ぼくがアサシンで、ギンガは勇者だ。

 つまりアサシンは勇者を殺すためにこんなとこまで来たと思ってる。そこんトコはっきりさせておこう。


「えっとギンガ……」

「呼び捨てにしないで」


 ソレイユさんって呼ぶのはちょっと抵抗がある。照れくさくもあるから、これはきっとエルネッタさんのせいだ。


「もしかしてぼくがキミを殺すためにこんなトコまでやってきたとでも思ってる?」

「はい」


 ギンガの即答にディムは少し傷ついた。


「ぼくがそんな人間かどうか聞いてみればいいよ。ほら、みんなに。ぼくがギンガを殺すと思う人、手を上げてみて」


 ……。


 次々と手が上がる。


 デニスのおっさん、神官のショーラスさん、プリマヴェーラさんと、あとギンガ……。


 大ショックだ。


「えーっと……、じゃあ殺さないと思う人は?……」


 エルネッタさん、メイ、ダグラス、大きく手を上げるディムがバカみたいに見えただろう。きっと。


「そ、そうだ。トールギス! お前はどう思う?」

「多数決で決まるようなことではありませんが、要するにあなたがわたしを殺すかもしれないと思う人が半数もいるという事です。こんなの異常です」


 デニスのおっさんトコのパーティと喧嘩になって一人死なせてしまったことがあだになった。

 この結果は、ディムのよく知ってる人ばかりのなかでの結果だった。これがもし街角アンケートとか、不特定多数を対象にすると勝ち目は無くなる。桃太郎が鬼を退治するように、マングースはいつもハブと戦ってると思われてるように、この国じゃアサシンは勇者を殺す者だと決まってるんだ。


「殺さないって約束する……というのはどう?」

「あなたが嘘つきなのは分かっています」


 自分の目を誇らしげに指さして自慢気に言う事か。

 この女、何を見て嘘つきだと言ってるんだろう? ディムは少し興味を持った。


「じゃあ、エルネッタさんとメイとダグラスの前で宣言する。この3人はぼくがキミを殺さないと信じてくれてる人たちだ。約束するよ、今夜はキミを殺さない」

「明日はどうなんです?」


「どうって言われても、約束しても嘘だと思うんだろ? また明日になったら殺さないって言うさ。それでいいんじゃないの」


 ぐっと顎を引いて上目遣いで睨みつけられると、なんだか本当に悪いことしたように思えてくる。

 ここは話を本筋に戻すべきだ。じゃないと際限なく責め立てられて、朝になるという最悪のシナリオになりそうだ。


「な、なあ、話を戻そう」


 メイもギンガもオークとタイマンどころか複数相手にしても勝てるぐらいの実力があるのに、どうやれば三人を攫われるのかということだ。


 ギンガに直接聞くとまた微妙な雰囲気になるので、より話しやすいメイに聞いてみた。


「オーガって知ってる? なんかツノ生えてるクワガタの獣人なんだけどさ、そいつが強くてギンガとタメはるのよ。ここに私たちが来るという情報は予め漏れてたみたいなのよね、それで罠にハメられて回復役を奪われたってわけ」


「ちなみにどんな罠に?」


「まず私たちが進行した先に敵の主力がいて、ギンガが一騎打ちを申し込まれたの。さっき言った実力ほぼ互角と評価されたオーガの……名前なんだっけ?」


「ファルコア・ギーヴン。あいつは要注意です」

「そそ、ファルコンね。ギンガは一騎打ちを受けて前に出ると背後にゴブリンの弓隊が現れたの。なんという卑劣さ。さすが獣人ね、悪魔と大差ないわ。同時にファイアウォールの魔法で数秒の間パーティが分断されて、炎が弱まったところで合流しようとしたけれど、もう攫われた後だった……その後は退路を断たれて乱戦になって、ほんとわたしたちよく逃げられたと思ってるわ……」


「素人か! 勇者と敵の主力が一騎打ちするからといって、他の者は見物モードだったわけ? 何それ、トーナメント方式で戦争やってるつもりなの? 攫われて当然だよ、卑劣でも何でもないよそれ」


「…… 」


「じゃあ生死不明? 生きてるという確証は?」


「確証はあるよ。絶対死んだと思ってたディムが生きてたんだから、あの三人は絶対に生きてる。あの時のディムと比べたらどうってことないわ」


「それ確証って言わないからね、念のため」


 それでもまあ、メイがそこまで言うなら生きてるんだろう。

 メイの仲間を見捨てて帰るなんてどうせできないんだ。せっかくメイに合流できたのにまだ帰れないことになった。

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