8話散歩をしながら
いつのまにか日が昇っていた。私はまだ少し重いまぶたをこすりながら、目を開ける。確か昨日ファミレスから帰ったあと部屋で考え事をしていたら、そのまま眠ってしまったらしい。
私は急いで部屋着から、黒のジャージの上下に着替えて二階の自分の部屋を後にした。一階に降りるとそこには母親が店の開店準備をしている最中だった。しまった。寝過ごしたな。
「あら、おはよう。髪ボサボサだから、直して来なさい」
どうやら、寝癖がひどい事になっているらしい、私は少し失敗したなと思いながら、母親に向かって答えた。
「うん。ちょと直してくるから」
ドタドタと早足で歩き洗面所までたどり着き、さっと髪を直し、顔を洗って、母親のいるところに戻って、一緒に開店準備を手伝った。
今日は美容院の手伝いはしなくていいと言われたので、私はすることもなく、なんとなしに外に出ることにした。
しばらく適当に歩いていると路地裏についてしまった。懐かしいな。よく高校生のころ陽介と一緒に歩いていたな。確かそこで捨て猫を見つけて、親になってくれる人はいないか、一生懸命探したっけ。結局親は見つからず、陽介がその猫を飼う事になったけど
たいしたやつだよ。お前はと感傷にひたりながら、私は無性にその猫に会いたくなった。まあ、今日は、陽介は仕事中だから、無理だろうなと考え、路地裏を離れて家に帰る事にした。