7話雨の日に
学校のチャイムの音がなり、一限目の授業が終わる。僕は席に座りながら、チラッと隣の席の雨坂さんの様子を見た。彼女は両手を机の上で組んでそれを枕がわりにするように頭を乗せて眠っていた。
今は話しかけるのは、よした方がいいだろうと思い僕は次の授業の準備をする事にした。
昼休み
やっと雨坂さんは机から顔を上げた。どうやら、眠りから覚めたらしい。手で口元を少し隠しながら、小さくあくびをしている。その姿がまるで、昼寝から起きたばかりの猫のような姿を連想させて、見ているこちらとしては少し和んでしまった。
僕はおそるおそる声をかけて見た。
「雨坂さん。おはよう。いい夢は見れた?」
すると雨坂さんはまだ眠たそうな顔でこちらを見て答えた。
「別に、どんな夢を見ようが山城君には関係ないでしょ?じゃあ私、桜と待ち合わせしてるから行くね」
と言って席を立って教室から出ていった。僕はその姿を見送ってから、鞄の中から弁当箱を出して食事をする事にした。
放課後。
上履きから、靴に変えて外に出てみるといつのまにか雨が降っていた。そんなには強くない見たいだけど、今日は傘をを持ってきてないので、少し困った。
仕方ない。服が多少、濡れてでも帰るかと思い、歩き出そうとした時に、玄関先で1人たたずんでいる雨坂さんを見かけた。僕はゆっくりと近づいて話しかける事にした。
「傘忘れたの?」
雨坂さんは少し不機嫌そうな顔で答える。
「そうね。忘れたわ。今日は雨が降るとは思わなかったから、そういう山城君はどうなの?」
「僕も持ってきてないよ。一緒だね」
雨坂さんは呆れた顔をして、言った。
「まあ、通り雨みたいだから、ここで待っていれば、止むでしょう。あなたはどうするの?」
「じゃあ僕も一緒に待とうかな。いい?」
「別にいいけど、私は喋らないからね」
そう言って雨坂さんは口を閉じた。僕は何をするでもなく、雨坂さんの隣に並んで、ただ雨が上がるのを待っていた。今はほんの少しでも一緒にいられる事が嬉しかった。