ベルトリーア中央教会へご訪問!
ムーアの呼び出しに応じて訪れたのは、いつもの地下のバーだ。
ついこの前に会ったばかりだから特別に話すようなことはないし、世間話をするような仲でもない。席についてグラスに口を付け、さっそく仕事の話かと思いきや、予想外なことに謝辞を伝えられてしまった。
ベルリーザ情報部として、そして王宮からの礼ということらしい。
グルガンディ精鋭の撃滅と、ついでに王宮のピンチを助けてやった仕事ぶりは、非常に大きな評価を得ることになったようだ。そりゃまあ当然で、むしろ過小に評価されちゃたまらないってのはある。
ただ、まだ情報部としても国としても忙しいだろうに、わざわざ時間を取って礼を伝えようとは随分と律儀だ。逆に怪しいものを感じてしまう。世間知らずのガキじゃあるまいし、素直に受け取れるもんじゃない。
この呼び出しが仕事の話なら、今回ばかりは断ろうと思っていた。私は呪いの影響で体調が悪いし、ほかのみんなも学院の再開や撤収の準備を始めたことから、すぐさま新たな仕事をやる気にはちょっとならない。
そもそも仕事を振る予定はないって話だったんだ。それを大した日にちも経たないうちにひっくり返そうってんなら、私たちキキョウ会を軽く考えすぎだ。
しかし謝辞に続けてムーアが口にしたのは、仕事じゃなくなんと私にかけられた呪いについての話だった。
「――敵の排除と同時に重要な魔道具を手に入れた実績は極めて大きなものだ。王宮の危機を救ったことなど、もはや計り知れん功績でもある。お前たちの成果は我々情報部の手柄でもあり、それに対する見返りを無視するわけにはいかんだろう。約束していた報酬とは別枠で、呪いの解除を追加報酬とする。王宮の立場として表立ったことはできないが、何もしないわけにはいくまい。俺から話しているのはそういったわけだ」
情報部と王宮が、そろって私たちにお礼がしたいだって?
お国の組織ってのは基本的にケチなのが相場だ。こっちが言い出したわけでもないのに、わざわざ見返りを用意しようって魂胆が不気味でならない。そんな話を鵜呑みにするわけにはいかない。何か裏がある。
「王宮……王家とは違うって強調してんのよね?」
「王家がお前たちのことなど気にするはずないだろう。王宮とは言ったが……まあお前になら隠し立てする必要はないな。具体的にはアルバ騎士団だ。王宮内部での影響力はかなり大きい」
「アルバ騎士団? 聞いたことないわね」
「王宮の警護を専門にする騎士団のことだ。名前はスノーアルバの花から取られている、余談だがな」
また優美な名前を付けたものだ。スノーアルバは白いバラの一種で、割とゴージャスな感じの花だったと記憶してる。
たしか、ベルリーザの王宮にたくさん植えられているとかなんとか、そういった逸話があった気がする。アルバ騎士団とは、そこから名前を取ったらしい。
「今回の事件、結果的に彼らは王宮守護の役目を果たせなかった。有り体に言ってしまえば、その手柄に一枚かませろという話だ。情報部としてそれなりの見返りは取り付けているが、お前たちにも見返りは必要だろう?」
なるほどね。私たちは情報部の依頼に応えて動いたけど、情報部だけじゃなくアルバ騎士団の依頼にも応えて動いたってことにしたいらしい。その話を受け入れろ、代わりに見返りは用意するってことだ。
それにしても随分とぶっちゃけた話に聞こえるけど、ムーアにも思うところがあるんだろうね。まあこれまでに勝ち得た信頼と受け取ろう。別に話を漏らす気はないし、その程度なら私が事前に聞いていたことにすればいいだけで面倒もない。
「ウチに実利があるなら手柄の配分なんかどうでもいいわ。好きにしなさい」
キキョウ会は敵にすれば面倒だけど、どんな内容であれ取引が可能だ。実利を与えて黙らせたほういいって判断もあるんだろうね。
私にとって一番の困りごとは呪いなんだから、それを解決してくれるならまったく文句ない。むしろ恩に着るくらいにありがたい。キキョウ会としても、会長の戦力ダウンは今後に向けて問題になる。解決できるなら早いほうがいいし。
「そう言うだろうと思っていた、これで彼らも少しは安心できる。お前もすでに予測しているだろうが、王宮は今回の差し迫った危機について内部でこれから揉める。あれほどの事態が、完全に外部の勢力のみによって達成されたとは考えられない。情けない話だが、情報部でもひと悶着あるだろう」
「敵の浸透、裏切り者の炙り出しね」
人にはそれぞれの思惑がある。利益だったり信念だったり正義だったり。アホみたいに歪んだ思惑を持った奴だってそれなりにいる。組織が大きくなれば、それ相応に馬鹿な奴が紛れてくるんだ。
国の規模にもなれば、裏切りの関与だけでも恐ろしい数に上るかもしれない。そういう奴らを徹底的に排除する作業が始まるらしい。
ピンチの後に訪れる粛清の時間。これは想像しただけで嫌になるほど大変な仕事だ。
「ああ。小規模とはいえ、組織の長であるお前なら分かるだろう? むしろ外敵の一層より質が悪い」
だろうね。でもそれについては私にとって他人事だ。関わりたくないし、ムーアもただの愚痴をこぼしているにすぎない。
「んなことより、呪いの解除よ。具体的にはどうするつもり? 簡単に解けるような呪いじゃないわよ」
「現在、アンデッド関連の諸々で我が国には聖都から祓魔司祭が何人か訪れている。アンデッドだけではなく、呪いのような特殊な魔法に対する専門家だ。知っているな? 王宮からの要請があれば彼らを動かすことが可能だ。話はつけている」
なんと! それなら聖都まで行かずに済むし、交渉事をすっ飛ばして治癒の段取りまでついてるなら手っ取り早い。
ひとつ気になるのは、そもそも呪いを使ったバドゥー・ロットと教会が繋がってるんじゃないかって疑惑だ。とは言え、王宮からの依頼に応えて治癒するなら、下手なことはしないと期待できる。個人的に頼むよりはよっぽど危険度は低いだろう。
「そういうことね。でもこの左目の呪いは、ちょっとやそっとじゃどうにもならないわ。まゆつば物の祓魔司祭って奴らの実力を見るにも、ちょうどいい機会ってわけ?」
実験台として、私の身や症状が手頃って思惑もあるはずだ。
「穿った見方ではあるが、あまり悪いように取るな。お前にとって損な話ではあるまい。それに聖都から我が国に派遣された祓魔司祭は、かなり高位の実力者と聞いている。期待できるのはではないか?」
「まあね。もしそいつらで対処できないなら、聖都への紹介状くらいは書いてもらえそうだし。いいわ、正直助かる。ただ、全面的に信用はできない。分かるわね?」
「呪いの大元がバドゥー・ロットということだな。理解している」
「そう。バドゥー・ロットと少なくとも教会の一部が繋がってたことはほぼ間違いないわ。その祓魔司祭が無関係であることを祈りたいけどね、もし私に危害を加えようとしたら……どうなるか保証しないわよ」
「一人で処置を受けろとは言わんし、言わせん。万が一、おかしな考えを持っていても護衛がいれば下手なことはできんだろう。それに問題があれば王宮としてのメンツに関わる。情報部としても目を光らせているから心配する必要はない」
「ならいいわ。話を進めといて」
「俺も仲介役で何度も呼ばれるのは面倒だからな、いまから話を通す。待っていろ」
ムーアの奴は通信機を見せ、席を外した。すると数分程度で戻り口を開いた。
「お前の都合がよければだが、これから行けるか? 祓魔司祭もその呪いには興味を示していてな、可能ならすぐにでも診たいそうだ」
「それはまた、ずいぶん気の早い話ね。祓魔司祭ってのは暇してんの?」
「暇だろうな。聖都からの客は要監視対象だ。自由には動けんし、彼らにもその程度の自覚はある。基本的に教会にこもる生活を送っているから、仕事の話は歓迎されるのだろう。呪いの解除が上手く行けば、彼らも王宮へ貸しを作れる。今回の話は、実は誰にとっても悪い話ではない」
たしかにね。うさん臭い善意に基づくような話とは違い、はっきりとした利益関係の分かる構図だ。こういうの信用できる。
それに返事を引き延ばしたせいで、ずっと先の日程になったら困るのは私だ。いまからやれるなら、やったほうがいい。
「分かった。案内して」
「俺はこれから予定がある。ベルトリーア中央教会には連絡を入れておくから、お前たちで行ってくれ」
急な話の展開に、少しの懸念はどうしても拭い去れないものがある。それでもレイラの護衛があれば十分だ。いまから行く。
地下のバーから外に出て、レイラには事情を話した。ベルトリーア中央教会に向かいがてらに、みんなにも通信で事のあらましを伝える。
「お姉さま、大丈夫なのですか? 念のため教会にはわたしも行きます」
「あたしも行くぜ。顔見知りならまだしも、初対面の野郎どもだろ? ベルリーザのお墨付きがあろうが、信用するかどうかはあたしらが決める。どうせ中には入れねえだろうが、外にいるだけでも意味は伝わるだろ。下手な真似しやがったら、皆殺しだ」
「動ける人はみんなで行きましょうよ。通報されないよう目立つ正面には二人か三人として、残りは教会の周辺を固める感じでどうです?」
好きにさせよう。喧嘩売るわけにはいかないけど、ある程度の圧力はかけたい。
もし祓魔司祭に悪意があった場合、私を害しようとするかもしれない。私が死んでも呪いのせいにすれば、苦しくても言い訳は立つだろう。
ベルリーザとしても日陰者より正規の賓客である祓魔司祭のほうを優先するだろうし、きっと何かあってもお咎めなしになることは簡単に想像がつく。立場の違いは容易に理不尽を許容する。
客観的に最悪を考えれば、キキョウ会のドンを謀殺するにはこれ以上ないチャンスとも言える。みんなもそれくらい分かっているからこその警戒だ。
「いいですか、お姉さま」
「任せる。でも最悪のケースにはたぶんならないわ。私だってタダでやられる気はないし、レイラが傍にいればよっぽどの事態にも対処できるからね。それじゃ、また後で。レイラ、少しでも体力温存したいからちょっと寝るわ」
「はい、休んでいてください。教会に着いたら起こします」
――若干の緊張を覚えながら、レイラが運転する車両の振動に身を委ねる。
目をつむったまま眠りを妨げる魔力の乱れに意識を割く。厳しい体調不良で眠ることができず、ムーアやレイラたちとの会話を反芻していると、思ったより早く目的地に到着した。
寝静まるにはまだ早い、夕飯時を過ぎた時間帯の教会に人けは少ない。
車両を降りつつ職業病のようにまずは周辺を魔力感知だ。特に異常なく、正面の教会とは別の建屋から近づく人物あり。案内役だろうそいつらを少し待つ。
「聖エメラルダ女学院に、どこか雰囲気が似ていますね」
「同年代に建てられたのかもね。建築様式や経年劣化の様子が似通ってるわ」
ベルトリーア中央教会というだけあって、かなりでかい敷地と建物だ。ロマネスク建築風の立派な教会の威容には圧倒される。ここが観光地になっていることにも納得だ。ライトアップのような演出のない夜の教会はどこか不気味な感じもあるから、昼間に見たほうがきっと素直に感動できるだろう。
「キキョウ会の方、ようこそいらっしゃいました。祓魔司祭様がお待ちです」
「こちらへどうぞ」
私たちに近づいた二人の案内役は、笑顔を浮かべて歓迎の態度を示した。
基本的には善人の集団である教会関係者然とした人柄で、こいつらを疑ってもたぶん意味はない。素直に付いて行く。
そうしてお御堂とは別の事務棟のような建屋に入る。ただここでも権威を示すためか、まるでお城かと思うくらいアホみたいに広く立派な建物だ。そんな建屋の中をしばらく進んだ。
歩き続けて、まだ着かないのかと思ったくらいのタイミングで目的地に到着。案内に従って部屋に入る。
「こちらでしばらくお待ちになってください」
入った部屋は前室ような用途の部屋なんだろう。入口とは別の立派な扉が奥にあり、そこから祓魔司祭のいる部屋に続くのだと思われる。
私とレイラは敵地の真っ只中に潜入したような気分でどうにも落ち着かない。ここでも魔力感知で密に探りを入れる。盗聴されることは前提の心構えで、雑談もしない。
いつまで待てばいいのか不明だけど、長い時間を待たされることは想定内だ。広く魔力感知の網を伸ばせば、ヴァレリアたちが到着したことも分かった。レイラと目で会話し、状況の確認をしつつさらに待つ。
駆け引きにおいて時間というのものは有効に使えるカードだ。どんなに待たされようが、その程度は想定済み。逆に相手を苛つかせるくらいに、落ち着いた態度を取り続けた。どうせ盗聴どころか監視だってされてるだろうし。
「――待たせたね。入りな」
一時間以上は待ってからようやく奥の扉が開き、厳めしい顔つきの婆さんが顔を見せ声をかけてきた。
時間を無駄にされることは好きじゃないけど、この程度で心など乱さない。呪いを解いてくれるありがたい存在と思えば、少々待つくらいのことで文句などあるはずもない。一言の文句も垂れずに立ち上がって、レイラと一緒に招かれた奥の部屋に行く。
部屋の中には婆さんとは別に、これまたおっかない顔の爺さんと強面の中年男がいた。こいつら全員が祓魔司祭か、もしかしたら一人か二人は護衛かもしれない。三人とも黒ベースに銀糸の入った立派な法服のような格好で、一般の教会関係者とは明らかに違い、それなりの位の高さを感じさせた。
漠然とだけど、三人からは凄みのようなものも感じる。高位の実力者って話はハッタリじゃなさそうだ。
「そこに座りな。さて、我々がいわゆる祓魔司祭と呼ばれる教会の使徒だ。お前の身の上話は聞いているよ、手短に行こうか」
妙に覇気のある婆さんだ。彼女は大きな机を背にした格好で椅子に座り、私とレイラにもすぐ近くの椅子を勧める。爺さんと中年男は少し離れた場所の机に向かい、こっちには観察するような視線を向けるだけで会話には参加しないらしい。
探る視線を無視して、座りつつ答える。
「自己紹介はいらないってわけね、面倒が省けるのは助かるわ。でも、始める前に私から訊いていい?」
「言ってみろ」
「今回の話、よく引き受けてくれたわね。王宮への貸しになるとしても、それだけとは思えないわ」
「他人の善意を疑うものではないと言いたいが、あえて言うならだ。こちらも聖都から派遣された身だ、タダメシばかり食っているわけにはいくまいよ」
「タダメシ? ああ、本来ならアンデッドとの戦いで忙しそうなもんよね。外されたわけか」
アンデッドに関してはベルリーザの戦力が当たるとは聞いていたけど、まさか聖都から送られた祓魔司祭を蚊帳の外に置くとは思わなかった。
しかし予想外の婆さんだ。漠然とした祓魔司祭への想像とは違い、ラフな態度には好感が持てる。どこかウチのローザベルさんに似た雰囲気があるからかもしれない。
「助言だけで結構だとさ。訊きたいことはそれだけか?」
婆さんは感情を読ませない気楽な調子で答えてくれたけど、爺さんと中年男は少し不機嫌そうな表情だ。余計な話に付き合う気はないって感じだろう。機嫌を損ねられても面倒だし、根掘り葉掘り訊ける状況じゃない。これ以上はやめておこう。
「……とりあえずはね。呪いの件、よろしく頼むわ」
「なら始めるよ。呪いを受けた顛末は聞いているが、まずは状態を確認したい。眼帯を取りな」
事情を知ってるなら話が早い。真面目な顔つきになった婆さんに合わせ、こっちも患者として素直に応じる。
タリスマンを仕込んだ眼帯を外せば、途端に魔力の乱れが強くなって倒れそうになる。左目はきつく閉じたまま、深く息を吸って吐いてどうにか姿勢を維持した。
婆さんが睨むように目をすがめ、離れた場所に座る爺さんと中年男は息を呑んで顔を歪めたのが分かった。
「こいつはまた、とんでもないね……教会の中は邪気を祓う力に満ちている。しばらく待たせておけば、呪いの力を抑えられるかと思ったが」
邪気か。観念的な話というより、呪いに類する魔法の種別をそう捉えているんだろう。長々と待たされたことには相応の理由があったらしい。とにかくこいつらの反応を見ただけで、専門家でも簡単にはいかない呪いだってのは理解した。
そもそも呪いを祓うって具体的には何をするんだろうね。特別に何かするわけじゃなく、単純に回復魔法をかける感じだろうか。もしそうなら楽でいいんだけど。
「なんとかできそう? 噂の祓魔司祭ならって期待してるわよ」
「……魔力の状態を視たい。目に触れるぞ」
軽口に取り合わず、婆さんは厳しい顔のまま私の左目の上に手を被せて状態を探りはじめた。
不調による吐き気でえずきそうになるのをこらえ、務めて平静を保ち続ける。どんなに苦しかろうが、他者にみっともない姿はさらさない。これも私の覚悟の一つだ。
「体にも触るが我慢しな」
婆さんは魔力を帯びた両眼で私の奥底まで見通すようにじっくりと観察し、これまた魔力を帯びた両手を使って左目だけじゃなく遠慮なしに外套のボタンを外し、服の中にも手を突っ込み体を触ってきた。
眼帯を外したせいで体調が最悪の状態になり、色んなことがどうでもよくなる。無心で受け入れ身を任せた。
そうやって数分程度も時間をかけ、婆さんはようやく手を離すと深く息をついた。
「やはり厳しいな。あれを使うしかないか……言っておくが荒療治になるぞ。それでもいいか?」
「当然。呪いがなくなるなら、なんだって構わないわ」
「よく言った。だが、この呪いは誰がやっても祓うことは無理だ」
はあ?
「そんな顔をするな。祓うことはできんが、封じることはできる」
「解呪は無理ってこと?」
「複数人の、それも高位の魔法使いが命を懸けて成立させた呪いだ。事前に聞いてはいたが、こいつは想定した中でも最悪の部類だ。もはやこれほど強い呪いであれば、完全な解呪にも同じだけの命がいる。お前のために命までは差し出せん」
「……そりゃまあ、そうよね」
簡単にはいかないとは思ってたけど、そこまでか。
「むしろこの状態でよく正気を保っていられるものだ。女神様の守護石があっても、これほどの魔力の乱れは抑えきれまいよ」
「効き目はあるけどね、それでも……日に日に厳しくなってるわ……ちっ」
普通に受け答えするのもだいぶ苦しくなってきた。なんでもいいから早くやってもらいたい。
「ふむ。この呪いは強力ではあるが勝手に強くはならんだろう。状態が悪くなるのは、お前自身が疲弊していることの表れだ」
「……そろそろいい? それともまだ話す?」
「いや、十分だ。眼帯は着けて構わないから、そこの寝台に横になっていろ。準備がある」
婆さんは爺さんと中年男に身振りで合図すると、横手にある扉の向こうに消えていった。また別の部屋に繋がっているらしい。
とにかくこれでどうにかなると期待したい。レイラが差し出した手を借り、言われた寝台に横になった。