遠征軍という名の愚連隊?
「ここまでが今の状況だ」
不敵な顔をしたバルジャー・クラッドは集まった面々を見渡してから続ける。
「待っていれば敵が攻めてくる。待ち構えるというのも一つの手ではあるが、ブレナークを戦場にするのは下策だと思わないか?」
それはまあ、そうよね。ブレナークには王都やエクセンブラ以外の街だってあるけど、全部を守り切れるほど潤沢な戦力はどう考えてもない。
どこかを攻め落とされれば前線基地にされてしまうし、苛烈な占領政策が行われるだろうことも容易に想像できる。荒れ放題だった各地にも、やっと秩序が戻ってきた段階だってのに、それが台無しになってしまう。
さらには国として考えた時には、奪われた領土を取り戻すことそのものに多大な労力を強いられるし場所によっては資源の面でも問題が出てくるだろう。領土の深くまで食い込まれると、通商破壊に対する備えまで強いられることになってしまう。
インフラを利用されて大きな拠点でも作られてしまえば取り返しのつかない事態にもなるんだ。まさか最初から焦土作戦をやるつもりで戦争なんて始められないだろう。
端的に言って、攻め込ませていいことなど一つもない。
反応を待つバルジャー・クラッドだけど、これは私たちキキョウ会がどう反応するか待ってるんだと思う。これまでの様子からしてクラッド一家とロスメルタの思惑は一致してるんだろうし、アナスタシア・ユニオンとも裏で合意してるに違いない。
横に座ったジョセフィンをチラ見すると、私の意を得たように答えてくれた。
「メデク・レギサーモ帝国との対決が避けられない状況になってしまったのは分かりました。王都としては対抗する軍を編成せざるを得ず、クラッド一家としては先の争いでの借りを返したい。アナスタシア・ユニオンもクラッド一家と同様だと思います。ブレナークを戦場にするのではなく、先手を打ちたいというのも分かりました。つまり、今日ここに集まった目的は、帝国に先んじて戦力を送り込む相談ということでしょうか?」
ジョセフィンの確認に対し、沈黙が正解であることを雄弁に語る。それを受けるとジョセフィンは渋い顔で続けた。
「王都が大軍を派兵できない事情は理解します。流動的なレトナークへの備えや国内に対する押さえも必要でしょう。エクセンブラの戦力に期待せざるを得ないというのも理解できます。しかしキキョウ会は少数です。直接的な因縁のあったマクダリアン一家はすでに倒していますし、その後処理でも手一杯です。厳しい現状から派兵に協力することは難しい上、帝国に対する因縁も薄く、またメリットも感じられません。皆様がご期待されていることに反するようですが、キキョウ会が手を貸す必要性は薄いのではないでしょうか?」
ビシッと言ってくれたわね。まさにそのとおりだ。
冷静に考えて、キキョウ会はレギサーモ・カルテルに対する因縁が薄い。爆弾の出所が帝国や麻薬カルテルだったとしても、実際に使った奴らへの報復が済んでるからにはもう終わった話だ。ジョセフィンが言ったようにウチに余力はないし、やりたい奴らだけでやればいい。もし火の粉が掛かったら、その時には存分にやってやるけどね。
だけど坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとばかりに、爆弾そのものの根絶とか製造元まで叩きたいとかは考えてないんだ。
「たしかにな。レギサーモ・カルテルに誘導されていたとはいえ、キキョウ会の敵はあくまでもマクダリアン一家だった。直接的には麻薬カルテルや帝国との因縁は薄いかもしれないな。だが、メリットならあるぞ」
ふーむ、メリットね。ジークルーネとジョセフィンとはちらっと目だけ合わせて先を促すと、語り部の初老のおっさんが続ける。
「帝国を退けることさえできれば、ブレナークはしばらくの間は外敵の脅威から解放され内政に集中できます。王都、エクセンブラ、そのほかの町や村も同様です。特にエクセンブラは情勢が大きく変わりましたので、恩恵も大きくなります」
「アナスタシア・ユニオンは蛇頭会のシマを丸ごと吸収する予定だ。他国の支部から人員の補充を進めているから、十分な人数が揃うはずだ。着手自体もそれほど時間を置かずに可能になる」
早くも準備万端らしいアナスタシア・ユニオン。大きな組織は違うわね。
「我々クラッド一家はガンドラフト組のシマを貰う。キキョウ会はマクダリアン一家のシマを取ればいい。ここまでは既定路線だが、俺たちが勝手にやるのではなく、王都のお墨付きまで付いてくる手筈だ」
「……お墨付きってどういうことよ?」
ロスメルタをちらっと見てしまうけど、そんなもんが必要とは思ってもみなかったわね。バルジャー・クラッドは得意げに続ける。
「エクセンブラの支配体制を貴族の側から見て変更しないということだ。変に守備隊を拡充されると、街の治安維持に行政区との縄張り争いが起こるからな。エクセンブラの上層部としてみれば、守備隊を拡充する義務から解放されるし、守備隊に使う予算を懐に収めることが出来ればそれはそれでいいわけだ。王都、ひいては王宮として、その状態を黙認するということだ」
裏社会が実質的に街を支配してる今の状態を、これから先も暗黙の了解として認められるってのがメリットか。なんとなくの状態じゃなく、裏でとはいえ王国最大級の権力者が後ろ盾になる。
なるほどね、あまりにも大きいメリットだ。少なくとも王国にとって、そしてロスメルタにとって利がある限り、体制の維持は可能だろう。
メデク・レギサーモ帝国さえどうにかできれば、ブレナークはこれから先、少なくともしばらくの間は外敵がいなくなり内政は充実の一途をたどる。厳密にはいなくはないけど、脅威と呼べるほどの存在はなくなると思っていい。
普通に考えれば予算の潤沢なエクセンブラだって守備隊の拡充は既定路線になるはずだ。五大ファミリーの支配体制が崩れた今、行政区としてはそこに切り込む絶好の機会とも考えられる。それをあえてやらないってのは、私たちの立場からすればこれ以上ありがたいこともない。行政区と争うなんて無益なことはしたくないんだ。
そいつをエサにされてしまえば、私たちとて無理を通してでも動かざるを得ない。それでも現実的にキキョウ会が出せる戦力はほとんどないのが悩みどころ。本当に余裕がないからね。
享受できる利益を理解しながらも渋い顔の私たちを見かねたのか、ロスメルタが口を開いた。
「わたくしもエクセンブラの状況については把握しているわ。キキョウ会に戦力を捻出する余裕がないことも承知の上よ。それでも、ユカリノーウェには出て欲しいの。あなたが行ってくれれば、一軍を編成するよりもお得でしょう?」
信頼なのか知らないけど、不敵な顔で挑発でもするように言ってくれる。客観的な戦力評価としてはそりゃそうかもしれないけど、私ひとりでってのはねぇ。
沈黙する私たちの背中を押すように、ほかのメンツも陣容を明らかにする。
「クラッド一家は大隊規模の戦力に加えて、ベルナールを出そう。部隊は粒ぞろいの戦力だぞ」
「アナスタシア・ユニオンとしては、ベルリーザからお兄様が率いる連隊が出ることになっています」
「王都からはクリムゾン騎士団を出すわよ。もちろんフランネルにも行かせるわ」
次々と出される各陣営の戦力、そして最高戦力の名前。
《雲切り》が加わったクラッド一家の大隊に、フランネル率いるクリムゾン騎士団。まさにブレナークが抱える必勝の陣容になるだろう。
まさかクリムゾン騎士団を出すとは思わなかったけど、考えてみればとっておきを使うべき場面でもある。先の争いにおいて、喧嘩を売られたのは王都だって同じ。水面下での侵攻であったとはいえ、対外戦争を吹っ掛けられたも同然だ。エクセンブラの裏社会を牛耳ろうとしたなんてこととは次元が異なる。反撃もなにもしなかったら、国民にも他国に対しても示しがつかない。
そこに加えて、アナスタシア・ユニオンからは総帥自身が出陣するらしい。しかもベルリーザから連隊を率いてだ。連隊規模となれば、少なくても千人単位にはなる。アナスタシア・ユニオンは出してしまった犠牲も多いみたいだし、不在だったとはいえ総帥も責任を感じてるんだろう。本気さがうかがえる。
勇猛果敢なアナスタシア・ユニオンが北から帝国に侵攻し、南からはブレナークの戦力が襲いかかるわけだ。。
なにも帝国を攻め落とそうってわけじゃなく、大陸東部に対する欲目を叩き潰してやろうってのが目的だから、これだけの戦力があればなんとかなりそうな気はする。
まだ敵の戦力が分からないけど、ロスメルタは私が加わるだけでも勝利条件に近づくと計算してるなら、それは信用してもいいと思える。
なにより提示されたメリットを享受するには、戦いへの参加は避けられないって意味もあるんだろう。どの道、やらざるを得ないように追い込まれたも同然だ。エサが大きすぎて、キキョウ会としても食いつかざるを得ない。
でもキキョウ会だけ私ひとりってのは、どう考えもおかしい戦力比よね。そうはいっても動かせるメンバーは暇な会長くらいしかいないのも実情だ。うーん、ちょっとどうにかならないか考えたいけど、この場ではとりあえず私が出るってのは表明しとかないといけないか。
それに提示されたメリット以外にも、ロスメルタへの貸しになると思う。それもデカい貸しだ。私個人に対して行けってのは彼女の要望みたいだし、なんせ国家防衛のために手を貸そうってんだからね。
「しょーがない。ロスメルタたっての希望なら行くしかないわね。ジークルーネ、私がいない間は任せるわよ」
「それはいいが、やはりユカリ殿を一人で行かせるというのはな。代わりにわたしが行くと言いたいが、期待されているのはユカリ殿の火力だろうから、わたしでは代わりにならないな」
「大部隊を率いるなら私よりジークルーネだと思うけど、個人の火力を求められるなら、私が行くしかないわね」
ジークルーネの戦闘力は並外れてるけど、多数を相手にした時の単純な火力の大きさでは私のほうが効率的だ。我が副長の真骨頂は指揮能力にあると思うし、単独もしくは少人数で戦いに向かうなら、能力を生かせる場面は少ない。
参戦の表明に対して嬉しそうにするロスメルタはよっぽど私の力を当てにしてくれてるのか何なのか。まあ友達の期待に応えて見せるのも、女の心意気って奴よね。
「助かるわ、ユカリノーウェ。これから急ぎ遠征軍を整えましょう。クリムゾン騎士団の予定としては、十日後に王都を出発するわ。先陣を切るのは騎士団の役目としているけれど、お互いの今後の予定を詰めましょう」
「レディは承知していると思うが、大陸南のルートはおそらくかなり険しい。きちんと話し合うべきだろうな」
「ええ、その心配もあるわね」
大陸中央にそびえるロマリエル山脈から見て、北側がもっとも文明の発達した地域になる。東西はそれに次ぐ感じね。北部を中心にした交易で大陸は栄えてると考えていい。それと比べると南側はちょっと特殊な環境にある。
ブレナークとレトナークの南、大陸として東南部にあたる地域には、亜人の小国家群が乱立し文明的な発展とは縁遠い。南端は切り立った崖が続く岩石海岸になってるらしく、砂浜はもちろん港だってないから、海路は使えない。
東端に向かっていけば港があるらしいけど、遠回り過ぎて時間がかかるし、まともに使える保証もないから除外する。
そもそも船をつけることが可能な大陸西南端の国家もあるけど、よその国の軍を上陸させてはくれないだろう。最悪は海上で沈められるかもしれないし、上陸できたところで帝国への道中にある大海の森を突破するのも容易じゃない。
こうなると陸路で行くしかないわけだけど、これはこれで問題があるって話だ。
陸路の場合、ロマリエル山脈沿いに続く廃道を進むことになる。東西の行き来がほぼ断絶してる関係上、道はあっても、整備された状況では全くない。遥か昔にはよく使われたらしいけど、それは歴史の話であって今は関係ない。使われない道だからこそ、どんどん森に侵食されてるらしいんだ。
大陸中央南部には国と呼べる規模の集落はなく、山脈から南端に至るまで続く大森林が存在する。ここには強力な魔獣の巣があったり、危険な植物の群生地があったり、天然の要害に守られた古代遺跡があったりと、楽しそうだけど人が立ち入るには簡単な場所とはいかない。命知らずで物好きな冒険者が、たまに向かっては行方不明になるくらいのもんだ。
つまり、廃道を問題なく進んでいければいいんだけど、そんな順調に進める可能性は低いってことだ。特に大人数が通るとなれば、苦労はより大きくなる。
本当の大部隊であれば工兵部隊が街道を整備しながら進むって手もあると思うけど、こっちから出せる部隊にそんなものはいないらしい。となれば、通れない道は回り道したり、道そのものが途切れてるなんてことでもあれば、周辺を密に探索する必要にだって迫られる。運悪く魔獣の巣に当たるようなことでもあれば、最悪のパターンよね。
実際に行ってみないと分からないことが多いけど、想定できることは今の内から対策を立てておこうッてことだ。
基本的なことはすでにロスメルタと騎士団で考えてるだろうけど、協力関係がある以上は形だけでも必要だ。クラッド一家なら固有の情報を持ってる可能性もあるしね。
ほとんど傍観者として話を聞いてて思うのは、やっぱり活躍するのがクリムゾン騎士団だ。
元はロスメルタの私兵だったけど、現在では正規軍として扱われる集団だ。私たちのようなただのアウトローとは違って、軍人としての教育を受けてるから、索敵や斥候を担う人員も多くいて露払い役にもちょうどいい。道中での現地民との邂逅でもあれば、その折衝役だって必要になる。クラッド一家の構成員や私じゃ力押しがせいぜいで、その辺の対応はうまくできっこない。
先行して道を切り開き、協力してもらえそうな現地住民の協力を仰ぎながら大陸西部の帝国を目指すことになる。なんて面倒な話なんだ。
私個人としてみれば、ただ付いていくだけでいいみたいだけどね。その分、戦闘に際しては働けよってことだろうけど。
「いまのところ想定できるのはこんなところね。あとは現地で臨機応変に。フランネル、それでいいわね?」
「承知しております」
「ベルナールもいいな? 面倒なことは騎士団に任せられるから楽だぞ」
「慣れ合う気はない。西へ行って敵を斬る、これだけのことだ」
私だって慣れ合う気はないし、面倒なこともする気はない。クリムゾン騎士団が面倒を引き受けて、後からついていけばいいだけならそれに越したことはないんだ。ただ、悪路の森を突っ切る廃道を進むとなれば、一体どれくらいの旅程になるか想像も難しい。
「行くのはいいけど、どのくらいで帰ってこれる想定? 片道だけでも三千キロ以上よ? 普通の道で普通に行ったとしても、かなりの日程になるけど」
普通の車両は時速三十キロ程度が最高速度に設定されてる。一日に十時間進んだとしても、三百キロだ。廃道を順調に進めることなんてことはないだろうから、相当数の旅程は覚悟しておくべきだ。
「廃道をまともな速度で進む必要はない。うるさい奴らに見咎められる可能性はないからな。リミッターを解除すればかなりの時間を短縮できる。独自の情報だが、廃道に入ってからおよそ五百キロまでなら、車両での通行は問題ない」
「そうね。ブレナークの西部までは速度は押さえたほうが良いと思うけど、それ以降は遠慮しなくてもいいわ。問題は廃道の中央部でしょうね。そこは未知の領域と仮定して、進むしかないわよ」
誰にも具体的な想定は無理か。行ってみなけりゃ分からないってことね。ますます余分な人員を行かせるわけにはいかないわね。
「これだけの戦力が行くなら、帝国にたどり着くこと自体は問題ないかもしれないけど、アナスタシア・ユニオンと歩調を合わせるのは無理じゃない?」
「そこはお兄様が合わせます。アナスタシア・ユニオンは帝国南部の様子を探らせつつ、北部から圧力を加えて時を待つ手筈です」
なるほど。向こうが合わせてくれるなら、こっちは特に気にすることもない。こんなことは先刻承知ってことらしいわね。
「分かったわ。クリムゾン騎士団が十日で準備を終えてすぐに出るなら、私はもう少し後で構わないわね? 露払いはしてくれるってことなんだし」
「そのとおりよ。最低限、廃道を整えながら進ませるから、後からなら追い付くのも簡単になるはずよ。ユカリノーウェは数日程度の間を置いて出発するのが良いでしょうね」
「だったらクラッド一家もそうさせてもらおう」
誰にも異論はないらしく、これでひとまず情報は出そろったかな。
今日から十日後に準備を整えたクリムゾン騎士団が王都を出発し、メデク・レギサーモ帝国を目指す。
数日程度の遅れでクラッド一家の大隊が出発し、私も同じころに出る予定。私はもうちょい遅れていってもいいかもね。
廃道を先に進むクリムゾン騎士団が露払いをし、後発の私たちは急ぎ後を追いかける。
道中は未知数だから臨機応変にやるしかない。危険は多いだろうけど、実力者が揃ってるから楽観的なのも頷ける。
長い廃道を抜けた先は帝国領だ。ここからどうするかは、騎士団の方針に任せればいいだろう。駒として使われてやれば恩も売れる。フランネル団長ならふざけた要望はしないだろうしね。
あとは北から攻め入るアナスタシア・ユニオンと同調して暴れまくって、大損害を与えてやればミッション終了だ。復路は往路ほどの苦労はないだろう。
「私は遅れて行く分、もうちょっと戦力がどうにかならないか検討してみるわ。やるからには戦果で負ける気はないわよ」
「それでこそ、わたくし自慢のお友達ね。期待しているわ」
最強の剣士が鼻を鳴らし、藍色の髪の騎士団長も不敵な笑みを浮かべる。うん、たしかにこのメンツなら戦果への期待は大きくていい。
主力たる騎士団には正規軍としてのメンツもあるし、ロスメルタの信頼を裏切れないって意味でもまさに身命を賭して任務にあたるだろう。
クラッド一家とアナスタシア・ユニオンは、やられた借りを返す千載一遇の機会だ。手を抜くなんて考えられない。
そして私も一度やると決めたからには、必要十分には仕事をこなす。そうできる実力があると自負してるからね。キキョウ会の会長として殴り込みに行くわけでもあるし、他者に劣る戦いぶりを見せることはできない。
つまりはどの陣営だって気合十分、実力十分。失敗を疑う必要はない。
「じゃあ今日のところはこんなもんでいいわね。なにかあれば互いに連絡を取るってことで。ロスメルタはどうする? もし泊まってくなら、部屋の用意をさせるけど」
満員のホテルでも、いざという時に抑えてある客室はある。王国の重鎮なら、そこを使わせるのに理由は十分だ。
「そうしたいのだけど……ダメそうね」
秘書っぽい奴が予定が詰まってると忠告し、エピック・ジューンベルへのお泊りは無しに。
解散の流れになってちょっとした雑談をしてから順次席を立つと、部屋を出ていくのを見送った。
最後の立ち話で今回の帝国の件とは無関係だけど、ロスメルタから話があった。
カロリーヌのことだ。ロスメルタによれば、彼女は王都でこっちにくるための準備をしてるってことらしい。
すでに正式にロスメルタの手元を離れてるらしいから、カロリーヌ自身の用が済めばじきにやってくるだろう。
面倒事の重なる昨今では久々の朗報だ。再会を楽しみにしておこう。私が遠征に出る前に会えるといいんだけどね。