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戦後の秩序

少しだけハードな展開です。

暴力表現などありますので、苦手な方はご注意ください。

 みんなを見送ってからしばらく経ち、私は順調に魔法の訓練を重ねてる。

 知性派のフレデリカとジョセフィンが残ってくれたこともあり、情報収集と分析はもう任せることにしちゃってる。その分、訓練に時間を当てられるってわけだ。


 ずーっと頭でイメージしてた魔法を色々試してるんだけど、今のところは良い感じに実現できてるように思う。

 ただ、できることが多すぎて取捨選択にむしろ苦労してる。あれもこれも手を出してしまうし、細かいところの実験は考えつくだけやってると、もうキリがないほどだ。無秩序にやるよりは計画的にやったほうが結果的に早いはずだから、考えるのが大変かな。


 ちょうどいま付き合ってくれてる可愛い女の子のお陰で、実験は大いにはかどってる。年下の狼獣人の女の子でなぜか私を慕ってくれてるらしい。

 それにしても塀の外は花がいっぱいで、とにかく気分がいい。

 青紫のキキョウに似た花に囲まれながらの訓練は、なんだかメルヘンチックな気分になってしまう。


「お姉さま、今度はもっと早く行きます!」

「助かるわ、ヴァレリア。色んな角度からやってみて」


 以前から構想してた、アクティブ装甲の実用に向けての実験中だ。

 これは魔力に敏感に反応して吸い寄せられる性質を持った魔導鉱物を利用したもので、展開中の盾が自動的に攻撃を防いでくれないかと目論んだものだ。

 というわけで、盾だけ出して私は何もしない。観察するだけ。


 ヴァレリアは儚げな美少女に見えて、実は身体能力がズバ抜けて高い。さすがは狼獣人といった風で、まだ少女ながら接近戦の強さは大したものだ。そこらのゴロツキなんて相手にならない戦闘能力があるんじゃないかと思う。


 観察してると、攻撃のスピードが盾の移動よりも速くて防御が間に合わない。ヴァレリアは寸止めしながら魔力を込めた攻撃を繰り返す。

 うーん、このスピードには全然対応できないわね。もう少し感度を上げるか。


 別の誰かの魔力が通ってさえいなければ、支配領域にある鉱物は私の意のままだ。

 観察しながら少しずつ盾を調整していく。スピードを上げようと思ったら、軽くなるし防御力も弱くなるしで妥協点が難しい。

 オリハルコンとの積層構造にすれば強度は問題なくなるし、スピードは維持できるかな。ただそれだと盾としては軽すぎて弾かれる可能性があるんだよね。初撃を防ぐためと割り切れば悪くはないかな。


 単に防御力が高いだけの盾なら問題なく作れる。あとはどれだけ高機能なものを生み出せるかの試行錯誤だ。


「ヴァレリア、ストップ。だいたい判ったからもういいわ。お昼食べに戻ろう」

「はい!」


 今日のトレーニングと魔法実験を終えて周りの花々を見渡す。

 キキョウは好きな花だったから、一面に広がるこの景色はたまらなく良い。素直に感動する。


 なんとなく形に残したくなって、鉱物魔法で花を作ってみる。私のイメージ力を発揮して、濃い目の紫水晶でキキョウを形作るんだ。

 初めはリアルな形にしてみたけど、繊細すぎてすぐに壊れてしまいそうだから意匠化した形にイメージし直す。

 パッと思いついたのが家紋で使われる桔梗紋。いくつか試してみるけど、うろ覚えのせいでちょっとだけ改変した八重桔梗の意匠がシンプルでしっくりきた。

 ついでだから銀のチェーンを付けて、ペンダントにして身に着けてみる。悪くない。


「なにをしてるんですか?」

「ヴァレリアにもあげようか?」

「いいんですか!?」


 なかなか良い感じのアクセサリーができたと思ったら、ヴァレリアが食い入るようにペンダントを見詰めてくるもんだから、気前よくあげることにした。

 まったく同じデザインにして渡してあげると、宝物でも受け取るように嬉しそうにするもんだから照れくさい。素直で良い子だ。



 収容所に戻ったあと、食後にのんびりと休憩してると、みんなの注目が集まってるのを感じた。


「なによ?」


 いぶしかげに訊くと同時に、隣に座るヴァレリアが誇らしげにキキョウのペンダントを掲げてるの見て瞬時に悟った。

 同じ収容所に引き篭もってるのに、新品のアクセサリーなんて着けてきたら、そりゃあ気になるわね。


「……キキョウの花のデザインで良ければ、いる?」


 無言の圧力を感じて、つい口にしてしまった。


「わたしはブローチがいいです」

「あたしは指輪がいいな」

「だったらあたしは――」


 瞬時に全員が待ってましたとばかりに要望を出すじゃないか。

 なんという図々しい奴らなんだろうか。

 遠慮なく告げられる要望に作る前から疲れを感じても、言ってしまったものはしょうがない。


「はあ、明日までに作るから待ってなさい」


 女に二言はない!



 平和な収容所で日々を送ってると実感できないけど、旧ブレナーク王国の状況は悪化の一途をたどってるらしい。

 なんせ、治安維持部隊の数が圧倒的に足りてない。悪党がのさばるには絶好の状況だ。

 国内各地では盗賊の類が多く発生してるみたいだし、大きな街でも裏社会が活気づいてるらしい。


 新聞情報から見かねた傭兵や冒険者が少しずつ国外から集まったり、義勇軍が発足したりもしてるらしいけど、まだまだ手は足りない。早くまともな統治者が現れなければ、改善は難しいだろう。庶民には気の毒な話だ。

 こんな状況じゃ気軽に街には行けないし、まだしばらくはここで様子見でもいいかな。なんて思う。


 僻地の収容所を襲うような暇な盗賊はいなくても、魔獣の襲来には気を付けないといけない。

 そんなわけで、交代で見張りに立つことになってるんだ。その見張りが慌てて食堂に駆け込んできたじゃないか。


「みんな、誰かきたよ! 一人だけど、助けを求めてる!」


 助けとは穏やかじゃないわね。とりあえず行ってみよう。

 不穏な旧ブレナーク王国からは切り離されたように平和だった収容所に、ちょっとした緊張感が漂い始める。

 なんだなんだとみんなで向かって、通用口を開けてやると見覚えのある顔が駆け込んできた。


「はぁ、はぁ、よ、良かった! まだいてくれたんすね、助けて欲しいっす!」


 個人的にはあんまり話したことはなかったけど、解散になるまでここにいた人だ。たしかシェルビーって名前だったか。

 ずいぶん慌ててるけど、まずはちゃんと話してもらわなきゃどうにもならない。


「シェルビーだっけ? 落ち着きなさい。ほら、これ飲んでからちゃんと話して」

「す、すいません」


 体力回復薬の小ビンを渡して飲ませる。

 ちなみに小ビンも私が魔法で作り出した。水晶で作った栄養ドリンクサイズのビンで、我ながら結構な自信作だ。綺麗だし。


 急いで飲み干したシェルビーは、落ち着く時間も惜しいとばかりに話し始めた。

 なんでも彼女が住んでるふもとの村に、盗賊団が襲ってきたらしい。どこかで聞いたような話だ。

 とにかく、このままじゃ不味いってことで、私たちを頼りに収容所まで戻ったそうな。


 まあ見捨てるわけにもいかないか。知らない間柄じゃないし、ここには彼女と仲の良かった人もいるみたいだしね。

 シェルビーはここまで軽トラみたいな魔道具に乗ってきてて、村まではそこそこ遠いらしい。これからすぐに向かっても、当然ながら往路と同じくらい時間はかかる。間に合うかどうか微妙だと思ってしまうけど、とにかく行ってみるしかない。


「時間がないわね、すぐに出るわよ」

「ど、どうもっす、みんなを助けてやって欲しいっす」

「ここを空にするわけにもいかないわ。ヴァレリア、アンジェリーナ、私たちだけで行くわよ。ほかのみんなは残ってて、どうせ車両には人数乗れないし」


 ヴァレリアの戦闘能力は十分頼りになる。それにアンジェリーナも最初の頃に比べて格段に強くなってるし、武器を使った戦闘なら経験豊富らしい。

 過信になるのかもしれないけど、私を含めたこの三人なら盗賊如きに遅れは取らない。魔法の腕だってかなり上達してるしね。


「気を付けて行ってこいよ!」

「本当、無事に戻ってくださいね」


 装備だけ持ち出し、心配そうな見送りを残して出発した。



 軽トラの荷台に乗ってガタガタ揺られる。なだらかな山すそを下る道のりだ。

 思ったよりもスピードは出てない。というよりも、はっきり言って遅い。

 もう身体強化魔法を使った状態なら走ったほうが速そうだ。ついでに乗り心地は最悪。


 道中で話したいこともあったけど、そんな余裕もなく無言で揺れに耐える。

 移動中に回復薬を作ろうとか思ってた私がバカだった。とてもじゃないけど、ここで何かの作業なんて無理。

 仕方のないことだと分かってはいるんだけど、全員のいらだちが無言でも伝わるようだ。場所さえ分かってるなら降りて走ったほうが遥にマシと思ってしまう。このいらだちは盗賊にぶつけるとしよう。


「――そろそろ着くっすよ! ああーっ、ひ、火の手が上がってる!」


 気の遠くなるような苦行の時間を経て、やっと到着したみたいだ。ヴァレリアなんて半分魂が抜けかけてるわね。

 シェルビーが悲鳴を上げたように、村の様子は結構ヤバそうだ。立ち上った煙は炊事じゃなくて火災らしい。

 なんでいちいち火なんてつけるのか意味不明だけど、悪意に満ちた連中だってのは分かる。現にここからでも、薄汚い格好の男どもが乱暴を働いてるのが見えてる。


 そんな状況で孤軍奮闘してる青い鎧の騎士がいた。

 たった一人で数人の賊に囲まれながら何とか頑張ってるみたいだ。でも疲れてるのか怪我でもしてるのか、動きは鈍く防御するだけで精一杯らしい。

 ほかの村人たちは大きな建物に立てこもってるのか、その周りに盗賊どもが群がってるのも見て取れる。


「ちょっと、一人だけ戦ってるのがいるわよ! あれは何!?」

「あの人は騎士団の生き残りで里帰り中の人っす! まだ無事だったみたいっすね、急ぎましょう!」


 でも見た感じもう限界っぽい。このままじゃ間に合わないわね。


「先に行って! このままじゃあの騎士が持たないわ。私は降りて投擲で援護する!」

「分かったっす! 頼みましたよ!」

「お姉さま、村に入って先に片付けておきます」

「こっちは任せておけ」


 荷台から飛び降りながら適当な石ころを生成した。

 地に足が着いてさえいれば、走りながらだって問題なく投げられる。

 とにかく、こっちに盗賊の気を少しでも引け付けられればよし!


 さっそく、私基準で軽く投げつける。

 強く投げて避けられた場合、後ろにたまたまいた村人に直撃なんて事態はゴメンだ。ぱっと見、村人の姿は見えないけど誤射は許されない。

 速球じゃないから盗賊が動いた分、狙いが逸れる。ヘッドショットを狙ったけど、的が動いて当たらなかった。ちっ。

 外したとはいえ、こっちに気が付いて警戒を始めたから掴みはオッケーだ。


 走りながら賊の様子をうかがってると、意外と錬度が高いように思えた。動きが統制されてる。

 すると指揮官ぽい男は手下どもに盾を構えさせて、こっちに向けて並べ始めた。めちゃくちゃ意識されてるらしい。

 上等だ。走りながら、さっきよりも少し強めに盾めがけて投げる。

 余計なことはせず、頑張ってる騎士のために時間を稼ぐ。向こうは遠距離攻撃ができないみたいだ。


 そうしてる内に軽トラが村に突入して、荷台から二人が飛び出す。

 アンジェリーナは騎士の救援に、ヴァレリアは村で暴れてる連中に向かって。私も急ごう。



 少し遅れてやっと村に到着。盗賊どもは意外と手堅く立ち回ってるらしい。

 個人の能力では、アンジェリーナとヴァレリアが圧倒してるけど、賊のほうが連携して上手く戦ってる。

 薄汚れてて遠くからじゃ分からなかったけど、元兵士の集団みたいだ。同じ部隊の仲間だったのかもね。

 さらによく見れば、盗賊は魔法でブーストされてるように思えた。指揮官が補助強化系の魔法使いなのかもしれない。

 だったら、まずは指揮官を潰す。


 新たな戦法を試す意味でも、私は指揮官と思われる男に向かって身体強化魔法全開で突進する。

 何か魔法を使ってきたけど、大した攻撃じゃない。紫紺の髪をなびかせながら超速で一切構わずに突進。

 実は前方に無色透明の大盾を展開してるんだよね。あの程度の攻撃ならビクともしない。やっぱりこの指揮官は補助系に特化してるタイプと見た。


 急接近し、驚きに歪んだ表情がはっきりと見えた瞬間、私の盾が体当たりをぶちかます。

 相手の鎧と当たった衝撃音を残しながら弾き飛ばした。

 攻撃は終わらない。そのまま追いかけて、無様に倒れた指揮官の膝をグリーブ装備の足で踏み潰す。


「グギャアアアアアアアアアッ!」


 醜い悲鳴だ。反応に構わず、流れるように続けて肩を踏みつけ、鎧をぶち破る勢いでガントレット装備の拳を腹にぶちこむ。

 微妙に手加減してあるから、まだ死んではいないはずだけど、補助魔法は解けただろう。こいつはもう放っておいて別の盗賊に向かう。体当たり戦法はなかなか使えそうだ。


 今度はアクティブ装甲を複数展開して、あちこちから飛んでくる程度の低い魔法攻撃をあっさりと防ぐ。

 手近な盗賊に走り寄っては捕まえて、肘や手首をへし折りながら投げ飛ばし、ついでに足を踏み潰すことも忘れない。動き回れられると面倒だ。

 外道どもに容赦はない。村を走り回ってれば、こいつらが何をしたかよく分かる。


 子供まで含めて転がってる死体。

 拷問されたような無残な男の亡骸。

 うずくまって泣く女。

 意味もなく破壊され火を放たれた家。

 荒らされた畑。


 焼けた臭いと血の臭いがやけに鼻を突く。


 正義を気取るつもりは毛頭ない。私自身どちらかと言えば悪党のほうだと思うけど、欠片ほどの良心はあるつもりだ。こんなのを見せられたら単純に怒りが湧く。


 補助強化魔法と指揮官を失った盗賊どもは、これまでの連携が嘘のように乱れて、最早ただの雑兵と成り下がってる。

 アンジェリーナとヴァレリアがここぞとばかりに逆襲を始め、そこからは一方的な展開になった。



「終わったようね。二人とも、怪我はない?」

「はい、大丈夫です。盗賊に遅れは取りません」

「あたしも大丈夫だ。少し疲れたがな」


 うん、たしかに怪我をしてる様子はなさそうね。良かった。


「……ありがとうっす、助けてくれて。それとかたきを取ってくれて」


 村人の大半は頑丈な建物に逃げ込めたお陰で無事だったらしい。だけど、全員がそうだったわけじゃない。

 残念ながら逃げ遅れた一部の村人は甚大な被害にあってしまった。でも生きてさえいれば回復できる。倒れてる人も望みはまだ捨てるべきじゃない。


「みんな、悪いけどまだ息のある村人がいないか探してくれない? 回復薬で治癒するから。私はあの騎士を見てくるわ」


 話しながらも手早く小ビン入り傷回復薬を作っていく。

 怪我の程度をいちいち見るのも面倒なんで、大盤振る舞いで全部第三級だ。魔力には十分な余裕がある。

 第二級は秘密にする方針なんで、体のどこかを失うような重傷を負ってる人がいても使うつもりはない。

 悪いとは思わない。第三級を使ってるやるだけでも、十分以上にありがたいことのはずだ。


「そ、そうっすね! まだ助かる人がいるかも!」


 俯いた顔を上げてシェルビーが駆けだした。


 騎士は限界だったのか、アンジェリーナが救援に入った時点でへたり込んでしまってた。命に別状はないはずだけど、戦闘が終わってもまったく動かない。

 ほかに治癒が必要な人がまだいるかもしれないから、無駄な時間はかけてられない。


「ちょっとあんた、しっかりしなさい!」


 ダメだ。見えない部分の怪我が心配だから、回復薬を飲ませようと思ったんだけど。

 動かないのを良いことに、兜を強引に剥ぎ取ってしまう。

 おっと、なんとまあ。まさかの女騎士だ。呆然とした顔で私を見上げる。


「これ、飲みなさい」


 回復薬を押し付けて有無を言わせず命令する。

 なんとなく勢いに押されたのか、女騎士は呆然としながらも小ビンに口を付けて飲み始めた。

 それだけ見届けると、みんなの様子を伺う。

 お、手を振ってる。生存者がいたかな。順番に向かうとしよう。



 私は薬魔法のお陰で体の異常は大抵の場合で治せるっぽい。でも心のケアまでは無理だ。

 精神安定剤的な薬は作れるかもしれないけど、用法が良く分からないから人にやるのは気が進まない。それにずっと面倒を見るつもりはないから、体の治癒しかやらない。それでも命さえあれば、色んな可能性は生まれる。


 心にひどい傷を負った人は、回復薬を渡しても素直には飲まない。茫然自失の状態で、ただ飲むって行為すらおぼつかないんだろうけどね。

 回復薬ってのは実は飲ませる必要もなくて、ぶっかければそれで効果は出るんだけど、いくらなんでも無体ってもんだろう。意識がない人には、普通にぶっかけるけどね。


 この際、怪我人の治癒だけは徹底的にやってやる。

 荒らされた村の再建まで手を出すつもりはないから、以降は自分たちでなんとかしてもらうしかない。


 とりあえずの脅威は去ったんだ。まだ呆けたままの村人についても、見ず知らずの私たちよりもシェルビーやほかの村人に介抱を任せて、しばらく待機だ。

 助けを求めたシェルビーがもういいというまでは、ここにいてやろう。今日だけの用心棒だ。



 幸いギリギリ助けられた人も多くて死者の数はあまり多くなかった。

 ほかの被害だと家屋の焼失と荒らされた畑、心に傷を負った女や子供。死者は少なくても、悲惨な状況が消えてなくなるわけじゃない。


 今、私の目の前には母娘と妙齢の女がいる。

 娘はまだ小さい子供だ。この子は納屋の奥に隠れてたらしく怪我もなかった。それでも変わり果てた村やそこらに見える死体に呆然としてる。ショックを受けてるらしい。

 母のほうは実害を受けてしまって、ひどい状態だったんだけど、さすが母は強しだ。自分のことよりも、娘を抱きしめてなだめてる。


 妙齢の女は盗賊に乱暴されてたところをヴァレリアが助け出した。気の毒に思うけど、私たちがやれることはもうない。立ち直るのには時間が必要だろうね。


 青い鎧の女騎士は回復薬を飲んだ後も呆然としてたんだけど、なぜか急に号泣し始めた。近しい人を失ったらしい。私たちは黙ってそれを見てるしかない。


 なんともやるせない結果だ、ホント。

 久々に大暴れできたってのに、爽快感はゼロ。胸糞の悪い結果にため息が出る。


 ちなみに盗賊どもだけど、私が倒した奴らはまだ生きてたりする。

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