90、狩侯聖者:5
◎先手必勝!!
どうやら先に到着したのが、奴らのようだが……?
●【No.090】●
―ギドレファナス王国―
国内の北側にある王都にして、要塞山脈都市である『ギヤンマウンテン』の頂上にある王城『ギヤンヴァレルダ』にて。
ギドレアス国王が玉座に座り、王家親衛騎士団隊の七人が待機している『玉座の間』の中から、突如として不気味で異様な謎の声が聞こえてくる。
「……愚かで情けない国王だよねぇ。 ……ギドレアスよぉ」
「誰だ!? その声は!?」
ギドレアス国王が声を荒々しく大声で、その謎の声がする方に向かって質問している。
なんとそこには、あの "狩侯聖者" が三体横に並んで、『玉座の間』の中の大きな扉の前に立って現れている。
その "狩侯聖者" たちがギドレアス国王に話しかけてきた。
「やぁギドレアス、元気?」
「何ぃっ!? 貴様らは……確かに捕縛した筈だぞぉっ!?」
「ああ、あの二人ね。 確かに……あの二人なら、今も地下の牢獄でゆっくりと静かに寛いでいるよ。」
「そんなバカな……では新手なのかぁ!? 貴様らはぁ!?」
「その通りだよ、この王国の内戦に乗じてねぇ。 国内に侵入することに成功して、しかも臆病者のマヌケな国王のお陰で、主力メンバーが城内にいるからこそ、ボクたちも簡単にこの城にも侵入できたよ。」
「そんなバカなぁ!? この俺様のせいでぇ!?」
「まったくキミはやっぱり国王失格だよねぇ。 キミのような独裁的で保身的な指導者は一国を動かすに値しない愚者だよねぇ。」
「……うぐぅ……」
するとそこで、獅子のブルトネラスが前に立ち塞がり、威嚇するようにして "狩侯聖者" たちに質問してきた。
「それで貴様らは一体何しにここに来たのだぁっ!?」
「ふふふ、なるほど、なるほど、そう来るのか? だけどキミたちに "それ" を答える義務も必要もないよねぇ。」
「な、なんだとぉ!? そ、そんなバカなコトをぉっ!?」
今度は魚のアルダリガヤが前に立ち、少し冷静になって "狩侯聖者" たちに質問してきた。
「ならばここで我々を殺害するつもりでここに来たのか?」
「ふふふ、まさかキミたちを殺したところで、このボクたちに何のメリットもないけどね。」
「なんだと? それでは尚更、一体何しにここに来たのだ?」
「ふふふ、そうだね。 このボクたちの目的のひとつぐらいは答えようかな? それはね……ギドレアス、キミの特殊能力の奪取だよ。」
「……っ!!?」
この "狩侯聖者" たちの発言に、ギドレアス国王が玉座から立ち上がり、物凄く驚愕した顔をして絶句している。
「……なに……? この俺様の特殊能力を奪うだと……? ……ふははは、何をバカな……一体どうやって奪うのだぁ!?」
すると突如として、三体の "狩侯聖者" が同時に、一斉に左手を身体の前に突き出して、右手を頭の上に挙げた独特のポーズを取り出している。
「……っ!!?」
それの不可解で不気味な行動に、危険を察知した七人の王家親衛騎士団隊がギトレアス国王を背に、"狩侯聖者" たちの目の前に立ち、それぞれが臨戦態勢をとった。
「あ……あ……あ……」
ギドレアス国王がこの "狩侯聖者" たちの不思議なポーズを見て、さらに動揺して恐怖にひきつった顔をして脅えている。
「そ、そ、そ……の……構えはまさか……っ!?」
「ふふふ、キミの持つ "王位" と "特殊能力" は表裏一体。 キミが持つ "特殊能力" を奪うには、同時に "王位" を奪えばいいだけのコト……この "盗爵" の能力でね……。」
「や……やめろぉ! た……頼む……見逃してくれぇ! 他に欲しいモノがあれば……何でもくれてやるぅ! だから……これだけはぁ……っ!!」
「ふふふ、何を寝言を言っているんだい? せっかくここまで来て、『はい、そうですか』とおめおめと引き下がる訳ないだろう? なに心配ないさ。 殺しはしない……いただくのは……その "特殊能力" だけさ。」
「……うぐぅ……」
ここに来て、今まさにギドレアス国王にとって、最大の危機が音を立てて迫ってきていた。
果たして、ヴァグドーたちは間に合うのか!?
◎先手必勝!!
なんとヴァグドーたちよりも先に "狩侯聖者" が到着していた。
このままだと、ヴァグドーたちの出番と活躍の場がない?




