89、国王軍.V.S.国民軍:2
●【No.089】●
―ギドレファナス王国―
国内の中央部にある、かつては王城だった跡地の廃墟にて。
―――朝になり、
ヴァグドーや勇者アドーレやレイドルノたち13人が、旅立つ準備をしている。
すると、そこにレイドルノがヴァグドーの「あるモノ」に気がついた。
「ヴァグドーよ、その剣は一体どうしたのだ?」
「ああ、こいつか? こいつは "射手" の皇剣【消滅罪の剣】……別名を「サジタリアスワールドソード」じゃよ」
「えぇっ!? 何ぃっ!? "射手" の皇剣なの!? それってまさか……っ!?」
「ああ、そのまさかだ! 間違いない! ヴァグドゥルス様の……真の王者だけが装備できる伝説の皇剣のひとつ……【消滅罪の剣】なのだ!」
レイドルノとダルラルダの二人は、ヴァグドーが持つ【消滅罪の剣】を見て、動揺しながらも興奮している。
ヴァグドーが持つ【消滅罪の剣】は、刀身が純白で柄の部分が漆黒で、さらに鍔の部分が黄金で "射手" のマークが彫られている。
伝説の皇剣とは、真の王者や強者だけが装備・使用することができる剣のコトで、この世界にあり現在までで判明している皇剣とは―――
ひとつ目が大魔王エリュドルスが所有する【終焉殺の剣】
ふたつ目がヴァグドーが所有する【消滅罪の剣】
みっつ目が所有者不明の【絶望神の剣】
―――のみっつだけしか、まだ確認されていない。
レイドルノたちがヴァグドーに質問する。
「その剣は、一体何処で手に入れたのだ!?」
「ふむ、この辺りの森の中に、ヴァグドゥルスの墓があるのは知っとるかのう? 夜、歩いていたら偶然見つけてのう。」
「ああ、確かに……この王城の周辺の森の中の何処かに、ヴァグドゥルス様のお墓があるとは聞いていたけど、まさか……あんたはそのお墓まで辿り着いたのか?」
「……スゴいわ……」
「そこでヴァグドゥルスの幽霊に出会ったのじゃ。 ワシは自分が持つ【激熱の剣】と【氷結の剣】と【凱封の剣】のみっつの剣を、ヴァグドゥルスに預けてひとつの剣になり、それで新たに誕生のが、この【消滅罪の剣】なのじゃよ。」
「……幽霊……っ!?」
「えぇっ!? ヴァグドゥルス様の幽霊がぁ……っ!?」
「ほーう、なるほどな、そんなことが……」
「それが…ヴァグドーさんの新たなる剣ですか?」
「これでヴァグドー殿がさらに最強になれたようですな。」
「それはこれから確かめて確認するつもりじゃよ。」
その後も、レイドルノたちはヴァグドーに質問していたけれど、ヴァグドーに促される様にして、旅立つ準備を続けている。
―-―・●・―-―
国内の北側にあり王都にして、要塞山脈都市である『ギヤンマウンテン』の麓の要所要所の場所では、ギドレアス国王が率いる国王軍と国民の反乱軍&先代国王支持者軍が再び対決・衝突している。
「今度こそ、行くぞ! いざ王都へ!」
数で勝る国民の反乱軍&先代国王支持者軍が、実力と経験で勝る国王軍を圧してはいるけれど、いまいち圧しきれていないのが現状である。
「畜生ぉーーっ!! 何でなんだぁーーっ!!」
そこに遂に、エウノミアとエイレネの二人の姉妹も、国民の反乱軍に合流した。
「さぁ姉さん、行くわよ!」
「ええ、わかってるわぁ!」
「この国王軍め! 私の剣をくらえぇーーっ!!」
「岩石たちよぉ! 巨大な龍となりて、敵を殲滅せよぉ!!」
エウノミアとエイレネの二人の姉妹も、国民の反乱軍の中で沢山の国王軍の兵士を次々に倒していき、国王軍相手にその存在と活躍を見せつける。
「よし、いいぞ! なかなかやるではないか!」
それでも、数で圧倒している筈の国民の反乱軍&先代国王支持者軍が、精鋭の正規の国王軍を圧してはいるけれど、どうにも攻めきれずにいて、いたずらに被害や死傷者が増えるばかりである。
「何故だっ!? 何故、我々が圧しているのに、攻めきれないのだっ!?」
※ ※ ※
一方の王都にして、要塞山脈都市である『ギヤンマウンテン』の頂上にある王城『ギヤンヴァレルダ』にて。
城内の一番奥の方にある『玉座の間』の中には、ギドレアス国王が玉座に座り、その周りに王家親衛騎士団隊の七人*が待機している。
*(獅子.ブルトネラス、山羊.ナバルノス、牡羊.ロゼッダン、乙女.ミレイジュ、蟹.ターナトルス、魚.アルダリガヤ、水瓶.ディケトリア)
「愚民共め! 30万人もこの俺様に反逆すると言うことなのかっ!?」
「これは驚きましたな、ここまでの戦力になるとは、正直思いませんでした。」
「しかも、今度の国民軍はなかなかしぶといようで、少し手強いですな。」
「……30万人とは、侮りがたい兵力……」
「ねぇギドレアス様! もうそろそろ私たちも出撃した方がいいのでは……!」
「ええ、私も城内で待ち構えるよりも、城外に撃って出た方がいいと思いますが……!」
「……ちっ!」
「国王様! 我々に出撃のご命令を!」
「それは駄目だ! お前たちがいなくなったら、誰がこの俺様を護衛するのだっ!?」
この国王の発言に、その場にいた王家親衛騎士団隊の七人が呆れて無言になり、沈黙してしまった。
「いいか、お前たちは城内で、この俺様を護るのだぞっ!!」
なんという愚かなヤツ……城内まで攻め込まれたら、もう勝ち目がないぞ!? それが判っているのか!? ―――コイツは……
すると突如として、玉座の間の中で謎の声が聞こえてくる。
「なんと…情けない王なのか、ギドレアスと言う男は……!」
一体誰なのだぁーーっ!? 貴様はぁーーっ!?




