88、先代国王の墓標
88の話数の中でも最も光輝く話数はやっぱり……88話!!
●【No.088】●
―ギドレファナス王国―
ヴァグドーたち一行は国内の中央部にある、かつては王城だった跡地の廃墟の中でしばらく休憩している。
ある日の夜
皆が廃墟の中で休んでおり、A地点には、カグツチとロンギルスとエクリバとニーグルン姫の四人が一緒の場所で眠っていて、B地点には、大魔女シャニルとアルベルスとアルラトスの三人が一緒の場所で眠っていて、C地点には、勇者アドーレとルドルス将軍の二人が一緒の場所で眠っている。
廃墟の外のD地点には、レイドルノとダルラルダとテミラルスの三人が一緒の場所に座って焚き火をしていて、まだ起きて見張っている。
ヴァグドーは一人で廃墟の周囲を警戒しながら見回るように歩いている。
「ふむ、なかなか良いところだな。 風も気持ちがいいし何故か懐かしささえ感じるのう。」
ヴァグドーが色んな場所を歩いているうちに、いつの間にか何処かの森の中に入ってしまった。
うーん……ここは……何処かで見た光景じゃな? はて、何処で見たかのう? ワシは森の中の周辺を見渡しておった。
ワシはそこからさらに森の奥の方に歩いていくと、まるで誰かに導かれるような感じで、そこに誰かの大きな古い墓石が置いてある場所まで来てしまっていたのじゃ。
「……ここは誰かの墓なのか……随分と古そうな墓石だのう。 これは一体誰の墓なのかのう……?」
ヴァグドーがその大きくて古い墓石に近づくと、その墓石から突如として眩い光を放っている。
ピカァッ!
「なんじゃぁ!? ……突然……光ったぞぉっ!?」
やかて光が消えると、そこには "ヴァグドーそっくり" の半透明の幽霊が、ヴァグドーの目の前に現れた。
「おぉっ!? まさかお前さんはもしかして……っ!?」
『いかにも余の名前はヴァグドゥルスだよ。 余と同じ顔と名前のヴァグドー殿よ。』
まさにそこには、ヴァグドーと同じ顔の20代ぐらいの男が、少し宙に浮いて立っている。
「するとやっぱり、ここはお前さんの墓場なのか……?」
『本来なら、余に墓などはないのだが、余を不憫に想って同情してくれた国民が余に墓を造ってくれたのだよ。』
「その割には、今は誰も来ておらんのう。」
『以前は沢山の人が来てくれていたのだが、ここ最近は戦争に参加していて誰も来ていないな。 まぁ戦争など早く終わってくれればいいのだがな。』
「ギドレアスが国民を締め付けているからじゃ。 国民は自分たちの生活の為に戦っておる。 国王が政治を改善しない限り、終わらんかもしれんのう。」
『………』
「それで……このワシに何か用でもあるのか?」
『そなたはこれから、あの暴君ギドレアスを倒すつもりなのだろう? ヴァグドー殿よ』
「ふむ、そのつもりじゃが、そいつはそんなに強いのかのう? ヴァグドゥルスよ」
『いいえ、実力や経験などでは、そなたに勝てないだろうが、奴には厄介な特殊能力を持っているのだよ。』
「……特殊能力……?」
『そなたが持っている能力でも十分に通用するだろうが、念の為に更なる新たなる力を手に入れた方がいいだろう。』
「……新たなる力……?」
『そなたには、複数の剣を所有している様なので、それらを利用した方がいいだろう。』
「なんじゃと!?」
『そなたが持っている【激熱の剣】と【氷結の剣】と……あと融合剣の【凱封の剣】の3つの剣を融合させて新たなる超強力な剣を創造するので、その3つの剣を墓の前に置いてくれ。』
「ほほう、なるほど、そうきたかのう?」
(あの【凱封の剣】には、そういう使い方があるのか?)
ヴァグドーは現在所持している先程指摘された3つの剣を墓石の前に置いた。 すると3つの剣が宙に浮いており、突如として眩い光を放っている。
ピカァッ!
「むむむっ!?」
眩い光の中で、3つの剣が1つの剣になっていき、その姿を現した。
その剣は刀身が純白で柄の部分が漆黒になった、その名も【消滅罪の剣】である。
『おお、遂にできたか、この【消滅罪の剣】には炎と氷が使用できる能力に加えて、新たなる超強力な能力も備わっているのだよ。』
「……新たなる能力……?」
『それは自分自身の目で確かめるがいいよ。 おそらくそなたの想像を大きく超える能力になっているだろう。 余はあまり見たくないが、その剣はそなた以外には装備……いや触ることさえできんだろうしな。』
「……ほう……」
ヴァグドーは【消滅罪の剣】を手に取った。
ヴァグドーは【消滅罪の剣】を手に入れた。
「これでワシはさらに世界最強に近づいたのじゃな。」
『ふふふ、ギドレアスめ! これで本当の "地獄" を見るがいい! そして、健闘を祈るぞ……世界の大王よ!』
ピカァッ!
するとそこで、先代国王の半透明の幽霊の身体が突如として、眩く光り出し、その姿が消えてしまった。
「………」
ヴァグドーは手に持っている【消滅罪の剣】をしばらく眺めていた。
先代国王から絶望老人へ遂に最高クラスの皇剣【消滅罪の剣】が受け継がれた!!




