05、暴虐なる者
危険分子、登場!
絶望老人は一体どうする?
●【No.005】●
ワシは森から外に出た。
すると、大勢の人間たちがワシの方に向かって走ってやって来ていたのじゃ。
いや、厳密に言うとワシを通り過ぎて、西の方角に向かって走り去っていたのじゃ。
しかも、人々が叫びながら「きゃーっ!」とか「うわーっ!」とか悲鳴をあげながら走り去っていたのじゃ。
「なんじゃ? これは?」
すると、突然に大きな唸り声をあげて、ワシの両耳を貫通した。
「グガアアアアーーッ!!」
ワシは大きな唸り声をした方向を見てみると人間たちが逃げ惑う、その上で真紅の身体をした全長が30mくらいはありそうな巨大な龍が暴れていたのじゃ。
「……ドラゴン!!?」
生まれて初めて見た、本物のドラゴン!!
ワシが前に居た世界では、既に過去の遺産でもある恐竜に少し似ているのか、いや、実際に見た事がないので比べ様がないが、そもそもドラゴンと人間が共存できるのか?
などと、考えている内にドラゴンがどんどんとワシが居る森の方向に、近づいて来ていたのじゃ。
「おっ!? こっちに来るのか!?」
ここで普通ならば、この走って逃げている人間たちに混じって、ワシも逃げてもよいのだが、ワシは逃げない!!
逃げる? 否!!!
ふざけるな!
せっかく、ワシが今までの歳月で培ってきたこの究極の肉体を、試すチャンスではないだろうか!!
そうじゃ!
今こそ、ワシの特訓の集大成ではないだろうか!!
「今こそ、我が肉体よ! ワシと呼応せよ!!」
人々が逃げる中でワシは、そのドラゴンに向かっていったのじゃ。
逃げる人間の中には、ワシに向かって「あんたも早く逃げろ!」とか言われたが、ワシはそれを無視してドラゴンの前に現れた。
《巨紅龍》
真紅の身体の巨大な龍で、炎を吐いて攻撃する。 レベル:82
巨紅龍はヴァグドーに向けて、炎の巨大球を吐いて攻撃した。
ヴァグドーは全く避けようとせずに、そのまま立っていた。
ズドォン!
炎の巨大球がヴァグドーに直撃した。
普通ならば肉も骨も残らずに、灰になっているだろう。
だが、ヴァグドーはまるで何事もなかったかの様に立っていた。
慌てた巨紅龍は左足を上げて、ヴァグドーを踏み潰そうと左足で攻撃してきた。
ズシィン!
ヴァグドーの姿が一瞬消えた。
次の瞬間、ヴァグドーは巨紅龍の左頬の所に突然現れて、右拳を叩きつけて攻撃した。
ドゴォン!
鉄拳一発!!
巨紅龍は白眼を剥いて、その場に倒れた。
さらにヴァグドーは両手で巨紅龍の尻尾を掴んで、遠心力を利用してグルグルと回転させて50回転したあたりで、手を離して投げ飛ばした。
巨紅龍はむこうの山のそのまた向こうまで吹っ飛んでいった。
巨紅龍の戦闘不能…。
ヴァグドーは巨紅龍に見事、勝利した。
「おお、スゲエェ!!」
それを見ていた人々から歓声と称賛の声が上がった。
見たか!
今まで積み重ねてきた努力と根性は、決して裏切らないのだっ!!
絶望老人の最初の敵、撃破!!